全世界の妹の80%はブラコンです。
目が覚めると、俺は病院の病室にいた。どうやら個室らしい。
しかし、個人的にはそれよりも生きていることに驚いた。腹部だったから致命傷ではなかったのか…?
かなり疑問だがまぁ、生きているに越したことはないし細かい事はいいさ。
一一それから数時間後、両親が見舞いにやってきた。どうやら妹の柚咲は来ていないらしい。
いくら俺が嫌いだからって見舞いぐらい来てくれてもいいだろうに。まぁ、今は思春期だし仕方ないのかもな。
両親の話によると俺は1週間眠り続けていたらしい。俺を刺したヤンキーグループもお縄に頂戴されたようだ。
あと、最初の2日間は胡桃沢が様子を見てくれていたらしい。だが、俺が目を覚ます気配がなかったのでそれに耐えきれず、学校を休んで引きこもっているらしい。
トラウマを与えてしまってとても申し訳ない。
胡桃沢が見ていてくれたのもビックリだがそれ以上にビックリしたのは柚咲が見舞いに来てくれていたことだ。どうやら3日目から昨日まで一睡もせずに俺を見てくれていたらしい。無理しやがって、兄ちゃんは嬉しいぞ。
両親は仕事に戻ったので、俺は感謝を伝えるためにまずは柚咲に電話することにした。胡桃沢には直接会おうと思ったからだ。
しかし一応は俺を嫌っている素振りを見せているし、電話に出てくれるだろうか。
プルルルプルルルプルルル、ガチャ
どうやら出てくれたようだ。
「もしもし柚咲か? 兄ちゃん目覚まし…」
「お兄ちゃん!? 目が覚めたんだね。柚咲ね、お兄ちゃんが死んじゃったらって思ったらね、色々後悔したの」
柚咲は俺の言葉を遮って、話しだした。
「それはすまなかったな。それと、後悔って?」
「柚咲はお兄ちゃんの事が大好きでね、いつも恥ずかしいから大好きなお兄ちゃんにキツく当たっちゃって……。でもね、今回の事件でもうそれはやめようって決めたの!」
「そうか、それはよかったよ。兄ちゃんは柚咲に嫌われてるのかと思ってたからさ」
「柚咲がお兄ちゃんの事嫌うわけないよ。大好きなんだから」
さっきからやたら大好きという単語を聞くがこれは兄弟、家族としてだよな? 間違えても異性としてじゃないよな? お兄ちゃんでも愛さえあっても、関係なくないからね!?
ま、まぁ憶測で語るのは良くないな。
「妹から好きって言われるのも恥ずかしいもんだな。あ、そろそろ退院できるかの検査があるから切るわ。またな」
「うん! 早く帰って来てね!」
な、なにはともあれキツい性格じゃなくなってよかった。キツいのは先輩1人で十分だ。
一一この電話から4日後、俺は退院の許可をもらい家に帰ってきた。
ふぅ、やっとあまり美味しくないご飯ともお別れだぜ。軟飯は結構食べるのキツいんだよな、あれ。
しかし今日からは母さんの美味い料理がたらふく食べられるぜ!
テンションの上がった俺は、そのテンションのまま家に入った。
「ただいまー」
シーン……
あれ? 今日は母さんも父さんも休みって言ってたはずなんだが……
戸惑っていると上から凄い物音と声が聞こえてきた。
これはまさか……
「お兄ちゃーん! おかえりー!」
やっぱり柚咲か。電話では平然と受け入れられたが会うとなると小っ恥ずかしいもんだ。でも、受け入れなきゃいけないよな。
電話ではああだったが柚咲も本当の事を俺に打ち明けるのに相当な勇気が必要だったはずだ。
その勇気を受け入れてやるのが兄ちゃんの仕事ってもんだ。だからそこの兄ちゃんも妹には優しくしろよ。
「おぉ、ただいま。元気なようで安心したぞ」
「うん! その台詞は私の台詞だと思うけどね」
「あぁ、そうだな。心配かけてすまなかった。あと、父さんと母さんは?」
「お父さんとお母さんならお兄ちゃんが帰ってきた記念パーティーの材料買いに行ったよ」
なんだそのパーティーは……
父さんも母さんも喜んでるようだし別にいいけどさ。ちょっと恥ずかしいな。
「そうなのか。ならちょっと寝たいから父さんたちが帰ってきたら起こしてくれないか?」
俺がそう言うと柚咲はいきなりテンションが上がった。
なんかよく分からんがいきなり鼻歌を歌ったり踊ったりしている。
一体何を考えているのやら……
「分かった! 柚咲がお兄ちゃんを……起・こ・し・て・あ・げ・る・ね!」
はっはーん。
さてはこの妹、俺を襲う気じゃなかろうな? なら、俺の打つ手は一つだ。
「あ、そういえば行きたい所があるの忘れてたわ。ちょっと行ってくるから留守番よろしくな」
俺がそう言うと柚咲は分かりやすく地団駄を踏み、アッカンベーをしてきた。
アッカンベーって……なんだかんだ可愛い行動の一つだよな。
俺はそのまま家を出て目的地へと向かった。
そう、その目的地とは胡桃沢の家だ。
「俺は帰ってきたぞ。次はお前の番だ、胡桃沢」
ブックマークが少しずつですが増えてきて嬉しいです。これからもよろしくお願いします!