第1章 1節「始まり」
運命とは・・・人間の意志をこえて、人間に幸福や不幸を与える力のこと。あるいは、そうした力によってやってくる幸福や不幸、それの巡り合わせのこと。そう言われている。
だけど私はそうは思わない。どんな事も、強い信念や意思を持っていれば
成し遂げられる、捻じ曲げられる・・・・・
いいえ。ただ、そう思いたいだけなのかも知れない。
真っ暗な空間で、一人の女は呟いた。
「次は絶対に間違ったりなんかしない・・・・・これが最後なんだから」
「また回線切られたよ・・・・切りも良いし昼飯でも買ってくるか。」
液晶に映るWINの文字を背に、俺は着替えて外に出た。
俺の名前は高原愛人。17歳童貞、ニートやってます。母親は小さい頃に事故死、父親は俺が物心つく頃には傍に居なくなっていた。今では両親の顔も思い出せない。
だから俺は両親の実家に住んでいる。爺ちゃんと婆ちゃんの3人暮らし。
"一人っ子"である俺には頑張って欲しいだろうけど二人は何も言わないし、それどころか普通に接してくれてる。逆にそれが申し訳なくて辛いが・・・・かと言って俺の長所なんてちょっとゲームが得意なだけで、ずば抜けていいなんて所はない。
なんやかんやでコンビニの帰り道。
大きめの袋を手に、見慣れた道を歩き続ける。
「やっぱりポテチだよなぁ~。ポテチ作った人絶対新世界の神になれるわ」
ポテチを食べながらラブ○イブを見る時間は生きている中でオ○ニーの次くらいに幸せな時間だ。
そんなウキウキ気分の時、目の前にばっちりスーツを着込んだ体格のいい人が現れる。
ボタンがはちきらんばかりに膨れた胸筋。スーツがぴったり張り付いた上腕二頭筋。
顔は某人気アニメ、どら○もんを老けさせたような顔だ。
「君が高原愛人君だね?」
「え?・・・まぁーそうだけど。でも何で俺の名前を知ってるんだ?
もしかしてお知り合い?・・・いやでもボブ○ップといい勝負しそうな人俺は知らないしな・・・」
マッチョえもんが低い声で俺に問いかけて来たので返答すると、マ(以下略)は懐からある物を
取り出した。
「あ・・・・それってさ・・・あれだよな。触るとビリビリして気持ちいいやt・・・・」
バチバチと言う音と共に突き出されたスタンガンを押しあてられた俺は全身に走る鋭い痛みと
共に目の前が真っ暗になった。
この時は思いもしなかった。地獄の様な、運命を捻じ曲げる戦いが始まる事を・・。
「・・・・きて・・・・きてってば!・・・・・起きろゴラぁあああ!!」
「うぉおおおお!!ピザポテトが最強!!」
腹パンによって朦朧としていた意識を無理やり覚醒させられ、飛び起きるように
目を覚ます。
目の前に広がったのはボロボロのコンクリートの壁に割れた窓、地面にはちょこちょこ
雑草が生えている。
一言で言い表せば廃墟。天井は全面ガラス張りのドーム状になっているが、所々割れている。
そこから日光が室内を照らしているものの、窓の外は完全なジャングル状態で日が入りにくく、所々薄暗い。
「やっと起きたわね・・・・・ていうか何がピザポテトが最強よ。今は販売中止になっちゃってるじゃない。」
「フッ・・・これだからパンピーは・・・ピザポテトは再販されるのだよ。堅あげポテトもな」
「いや・・・そんなどや顔で言う事でもないと思うけど」
声の主は俺を叩き起こした張本人であり、幼馴染である少女。
博麗霊夢であった。
近くの神社で巫女として働いてる霊夢は、幼稚園から中学までずっと同じクラスだったので、それなりに長い付き合いだ。高校生になってからは違う高校に進学してから会う事は無かったので、かれこれ半年ぶりの再会になる。
仕事中だったのか、霊夢の服装は紅白の巫女服にも似た謎の服を着用しており、俺の隣で女の子座りをして俺に話しかけていた。
「にしても久しぶりだな霊夢!色々と大きくなったな!色々と!」
「色々を強調するな!色々を!・・・・でもまぁ。久しぶりね!かれこれ半年ぶりかしら?
あんたもニートみたいな顔になったわね」
「いや、現在進行形でニートやってるんだけど・・・・」
「またまた~冗談を~」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
謎の沈黙が俺達の間で数秒続き、霊夢が苦々しく口を開けた。
「マジで?」
「マジです。ラブライブのランク200越えです」
「私ランク47なんだけど・・・因みにニコちゃん推しよ?」
「俺はマキちゃん推し・・・・って、そんな話よりここ何処だよ!」
本来ならば一番最初にするべき話を始める。霊夢はニコニコとしていた顔から真剣な表情になって口を開く。
「それは私も分からない。目が覚めたらここに居たから・・・・ただ、私達だけじゃないみたいよ?
他に6人いる。」
霊夢の言う通り、この廃墟には俺達以外にも6人いる。THEヤンキー。40代後半のおばさん。
何処か大人びたオーラの40代位のおじさん。俺達と同じくらいの歳の男女。
俺と同類の匂いのする小太りした20代の男。
俺達を含めて系8人がこの廃墟にいる。当然霊夢以外知らない人だ。
だが、分かるのはそれだけで、今以上の情報を得られそうにはない。急に現実を理解させることを聞いたからか、霊夢の表情は何処か暗い・・・それも当然だ。目が覚めたら全く知らない場所で全く知らない奴らといるんだから、不安や恐怖を抱くのは当たり前のことだ。俺だってあまりにも急な事に混乱して何が何だかわからなくて怖い。それでも出来るだけポジティブに考えて恐怖を紛らわしているだけだ。一人だったらこうも行かなかっただろうが、幸いにも霊夢がいる。話し相手がいるだけでいくらでも紛らわせる。
{ここは霊夢の為にも何か話題を振ってやらないとな・・・・}
かと言ってこんな場所で急に話題など思いつく事もな・・・なくもないな。
「それよりさぁ・・・霊夢・・・俺のポテチ知らない?確かコンソメ買ったはずなんだけど・・・おっかしいなぁ~」
「・・・・・は?」
霊夢はコイツ何言ってんの?バカなの?と言いたげの表情だ。
{あ///・・・なんかちょっとその見下す感じの目いいです。}
「あ!もしかして霊夢勝手に俺のポテチ取ったな?怒らないから早く出しなさい!」
「いらないわよ!そんなもん」
俺がジト目で犬にお手を要求する素振りを見せると、霊夢は立ち上がってガミガミと怒鳴りだした。
そんな茶番をしていると、奥の方に居たTHEヤンキーの男が俺達に向かって怒声を上げた。
「さっきからうっせーんだよお前ら!」
「あ?こっちはポテチが無くなって大惨事なんだよ!」
「んな事知るかボケ!」
そんな口論をくり広げていると、ヤンキーの後ろにあるステージらしき場所に
一人の男が現れる。
「にーしーろーやー・・・・よし!全員いるね」
モミジのような明るい赤色の髪をオールバックにした釣り目の男は、人数を一人一人指をさして確認する。
「急で悪いけど、君達には殺し合いをしてもらうよ」
男はただの遊びを提案する無邪気な子供の様な笑顔を向け、そんな恐ろしい事を言う。
「何ふざけた事ほざいてんだ!ゴラぁ!」
「そうよ!さっさと家に帰しなさいよ!」
こうなるのも当然だ。拉致された挙句、いきなり殺し合いをしろだなんて言われれば
誰でも同じ事をするだろう。
霊夢は一気に血の気が引け、顔が真っ青に、同じ年の二人だって霊夢に似たような感じだ。
だが、40代の大人びたオーラをしたアイツは違う。こんな誰もが混乱するような状況だというのに、
腕を組んで黙って男の言葉を待っている。
「1度しか言わないから良く聞いてね。今からやってもらうのは8人による殺し合いだ。
生き残る事の出来る人数は2人。一匹狼で戦うも良し、二人でチームを組んで戦うも自由だ。
そしてここからが大事だ。」
そう言うと男は、奥の方に行ったと思うと、8つのリュックサックを手に持ってそれを全員に放り投げる。
リュックは全て違う色で、俺は黒、霊夢は赤だ。
全員が飛んできたリュックを受け取り、早速中を確認する。
「そのリュックには2日分の食料、日常用品が入ってる。そして、みんな違う殺傷武器が入ってるよ」
男の言う通り、リュックの中には多くの食料、タオルや携帯トイレと言った日常用品が入っている。
横目で霊夢のリュックの中を確認したが、俺と同じような感じだ。
違うと言えば生理ナプキンが入っている事位だろうか。
「(⌒∇⌒)」
「???」
視線を感じたのでその方を見ると、ステージに立っている男が二ヤリと笑っているのが分かった。
その時、自分の違和感に気付いた。
「・・・・あれ?」
いくら探しても殺傷武器が見当たらない。
奴は言った、食料と日常用品以外に殺傷武器・・・つまり、人を殺す武器が入っていると。
だが、いくら探してもそれらしき物は無い。
「おい!俺の武k・・・・・」
「ん?どうしたんだい?」
武器が入ってない事を伝えようと声を上げたが、これがどれだけリスクのあることか直前で理解した。
俺が武器を持っていない事を伝えれば、貰えるかもしれないが、もし貰えなかったら・・・。
自分で僕は武器を持ってませぇ~んっと公開する事になる。そうなればこの殺し合いで真っ先に狙われる
のは俺だ。食料は持ってるけど武器はないただのカモなのだから。
「いや・・・・何でもない」
「そっか!それじゃー続けてもいいかな?」
あの顔を見て確信した。奴はワザと俺のリュックに何も入れなかったんだ。
通りで俺の事を見てた訳だ、趣味の悪い奴だぜ。
「殺し合いと言っても、二日で決着が付くとも思ってない。だから、定期的に救援物資
を投下する予定だよ!食料はもちろん、治療具だったり武器だったりね。と言った所かな?
それじゃー頑張ってねー」
次の瞬間、ボンッ!と煙がステージを包んで数秒、男の姿は無くなっていた。
{マジでふざけんなよ!あの野郎!!}
俺は全員が武器を持っている中、一人だけ武器を持っていない状態でこの殺し合いをさせられる事になったのだ。
でも、何もかもが終わりと言う訳でもない。定員は2人と言う点から協力が出来き、なおかつ顔見知りもいる。まだ終わりじゃない、チェスで例えればまだチェック。
{チェックメイトじゃなければまだどうにでもなる。やるだけやってるさ!}
決心が付いたの同時に、カチッっという金属音がこの廃墟に響き渡る。
「全員荷物を置いて手を上げなッ!」
ヤンキーはある物を俺に向けて大きな声を上げる。
「嘘だろ・・・」
ヤンキーの手に持っているのは紛れもない回転式拳銃、コルトSAAそのものであった。
そして今、その銃口が俺に向けられた。
to be continued