教会にて
さあさあさあ、黄金ロボットのターンが来ましたよっと!
これからヘタレずに頑張るんでよろしく!
とりあえず、まだ日も高かったので、宿は先に取らずに教会に向かった。
祭りなどの催しもなさそうだったし、スキルが気になったからだ。
教会に着いた俺とサクラは、迷うことなく教会に入った。
サクラは魔物だから何か言われると思ったが、特に神官の人たちの反応はなかったので、俺はまっすぐスキルを確認するために受付に向かった。
『ねースタン。きょーかいってキレイなところだねー』
「ああ、俺もこの町の教会には始めてくるんだが、結構綺麗な場所だな」
ステンドグラスが張ってある、正面の礼拝堂の隣に位置する外来受付に行く際、ぐるっと教会の中を見渡した。
俺の村の教会と比べて特段広く、なんだか神秘的な教会だった。
村の教会は本当に最低限の設備しかなく、スキルの確認やお祓い、祈祷、毎朝の礼拝などは一手に司祭様が引き受けていた。少人数の地方の教会だからできることだが、この位の規模の町になると、多くの冒険者などが出入りするらしく、それらの設備はひとつひとつ分けられていた。
並んでいるスキル鑑定の受付もまだ真昼間なのに何人か並んでいた。
『なんだかワクワクするね!』
「ああ、俺もスキルがどんな感じになっているのか楽しみだぜ」
そんなことを話しながら並んでいると、俺たちの番が来た。
「その肩のスライムは貴方がテイムしたモンスターですか?一応、ルーンを見せてもらえますか?」
「はい。種族は、ブロッサムスライムで、名前はサクラです」
受付である法衣に身を包まれた初老の男性が、確認するように言ってきたので、特に嘘偽りなく答える。
モンスターをテイムするとそのモンスターのどこかにルーンとなって印が現れる。
サクラは左頬のあたりにルーンが刻まれていた。
サクラも最初は戸惑っていたが、今では結構気に入ってるらしい。
「ありがとうございます。最近、テイムされていない魔物が町中に現れている事件が頻発しているんですよ。教会でも警戒を強化してるんです」
「分かりました。気をつけます」
「お願いします。それで、本日はどのようなご用件で?」
「今日はスキルの確認に来ました」
「はい。承りました。では、こちらへどうぞ」
俺たちは個室へと促される。
村ではこんなことなかったけど、なんで別の場所へ案内されるんだろう。
「どうして、個室へ行くんですか?俺の村ではそんなことなかったんですけど」
「ああ、それはですね。この位の町になると多くの人が集中して来ることがあるんですよ。それで、受付に鑑定能力を持つ人は配置しないで、別の場所に簡易的に鑑定できる魔具を置いて効率化してるんです。この魔具は誰にも扱うことができるので、二回目から素早く鑑定を終わるんです」
「へー、大きな町だと魔具も置いてあるんですね」
「ええ。魔法の道具は本当に便利ですよ。もっとも教会やギルドといった施設でないと量は置けませんけどね」
確かにそうだ。鑑定系の魔具は、かなり高価だと聞く。俺の村ではとても買えそうに無い。
「と言っても人間が作成できる魔具に限る話ですけどね。ダンジョンや遺跡で魔具を見つけたギルドの冒険者様方は、見つけたものは大体ご自分で使われてしまうので、流通量も少ないのです。そもそも、発見するのも割と困難なんですけどね。見つけても罠があったりするって話ですよ」
なるほど。こういう情報は、ゲームではあまり記述されなかった設定だったので、聞いていて面白い。
「ですので、初心者冒険者様方は、お金に目が行きがちですけど、注意してくださいね」
「そうなんですか。気を付けます」
やっぱり、高いものなのか。確かにそうだろうなと考えていた。
ゲームではそう言った細かいところまでは介入不可能だったが、人間が何人も居て成り立つ仕事も魔具一つ置くだけで解決することもあると聞く。
特にダンジョンや古代の遺跡から発掘される魔具は、古代遺産とされ、今の人間の力じゃ再現できないものもあるらしい。
そう言えば、村にも一つだけ共同で使っていた農耕用の魔具があったが、あれも結構高価な物だったはずだ。
中には値段が付けらない伝説級の物もある。ゲームの中では最初のダンジョンでも根気よく探せば一つくらい手に入ったが、それも中盤のダンジョンではかなりの確率で出るものだったし、性能も低かった。
この世界ではどうなっているかわからないが、職員の人の話を聞く限りではゲームのように沢山手に入るものではないのだろう。
そうこうしてる内に部屋に着いた。
職員の人から軽く手ほどきを受けて、早速鑑定に取り掛かった。
職員の人は説明を終わらせて何かわからないことがあったら、呼んでくれといって帰っていった。
すごく親切な人だったな。
よし、鑑定を始めるか。
「サクラ。鑑定するぞ......って寝てんのかよ」
さっきからあまりにも静かすぎるので肩に乗っているサクラに話しかけてみたが、寝ていたようだ。
すやすやと寝るこの桜色の物体を起こすのも忍びないので、さっさと鑑定をすませることにした。
「えーと。この水晶に手をかざして......こっちのレバーを引くと、ステータスが書いた紙が出てくるだったかな?」
若干手間取りつつも、鑑定を終わらせた俺は、サクラを起こさないようにしながら部屋を出た。
出たところに先程の職員の人は待っていた。
「魔道具による鑑定はどうでしたか?。犯罪を犯して認定されると犯罪歴も乗りますので、くれぐれも注意してください」
へー。そんなのもあるのか。
「まだ見てないんですよ。こいつも寝ちゃったし。宿も取ってないんで、どこか休める場所でも借りてそれから落ち着いて見ようかなって」
そう言うと、職員の人が何やら思いついた表情をして、
「おお、まだ宿をとってないんですか。でしたら、この町のリッツという宿がおすすめです。教会のクロムウェルが勧めたと言えば、サービスしてくれるでしょう。ああ、申し訳ありません。名乗り遅れましたな。私はこの教会所属のクロムウェルと申します。以後、お見知りおきを」
と宿の場所と丁寧に名前まで教えてくれた。
そう言えば俺も名乗ってなかったな。名乗られたら、こっちも名乗らなきゃな。
「これはご丁寧にありがとうございます。俺はスタンといいます。よろしくお願いします」
せっかくだから前世で培ったスキルをバリバリに発揮して挨拶をした。クロムウェルさんも笑顔を浮かべていて、満足してくれたようだ。それが単純に、最後だけ丁寧な挨拶をした俺に彼の優しさで返してくれただけなのかは、知る由もない。
そして、俺は教会をあとにした。
また、クロムウェルさんの担当になりたいな。




