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ゲームと現実の差

 さて、ブロッサムを助けるのは良いとして、この状況どうしようか。


 2匹のスライムイーターを前に俺は、転生前なら考えられない程冷静に状況を把握していた。これも父さんとの訓練のおかげである。

 父さん曰く、戦いにおいて最も大切な事は、常に冷静である事だそうだ。

 その言葉を胸に、日頃から冷静でいるように努めてきた。だからこそ今、初めての実戦だと言うのに俺は落ち着いて剣を構えていられた。


 そんな俺に向かって、スライムイーターAが顔の針を突き出すように突進してくる。

 針は鋭くスライムイーター最大の武器だが、この世界がMGOと同じなら最大の弱点でもあるはずだ。

 俺はその可能性に掛けて、スライムイーターAの針の根元に合わせるように剣を思い切り振り上げた。


「はぁぁぁぁ!!」


 気合を込めた一撃を叩き込み、針を根元からへし折った。

 途端にスライムイーターAは落下し、地面をのたうち回る。

 スライムイーターの針は、平衡感覚を保つ役割をしている為、折られると全く動けなくなるとゲームの設定にはあったがどうやら同じようだ。


とどめを刺し淡い光となって消えたスライムイーターA。

続けてスライムイーターBに目を向ける。

 魔心伝心で伝わってくるのは、スライムイーターBの驚嘆と怒り、いや殺意と呼ぶべき感情。

 魔物とは言え、初めて真っ直ぐな殺意を突きつけられた俺はゾッとし、一瞬怯む。

 しかし、冒険者になる以上、これから先も似たような事はあるだろう。

 モン娘ハーレムを作る為に、もっと危ない橋を渡らなきゃいけない場面にも出くわすだろう。


「だから......こんな事で逃げ出すわけには行かないよな」


 ダッ! と地面を蹴り剣を振るうが、素早い動きのスライムイーターBにかわされる。


 さっきのやつより速い!?


「うっ!」


 俺の顔を狙って突撃してきたスライムイーターBを咄嗟にかわすが、針が頬を掠め血が垂れる。


「痛てぇ......は、はは、マジで怖ぇな。王都に着いたら盾でも買った方がいいか?」


 頬の血を拭い、剣を握り締め、真っ直ぐにスライムイーターBに突進し、2回3回と連続で斬りつけるが回避され逆に攻撃を貰い俺の腕から血が吹き出す。


「ちょ、え? 強すぎじゃね?」


 俺が知っているスライムイーターよりも圧倒的に強い。

 そこで今更のように気がついたが、ゲームじゃないんだから強さが一定な訳が無い。もちろんMGOのモンスターにも個体値はあったが、野生のモンスターでここまでの違いは、なかなか出ないはずだ。

 つまりこのスライムイーターは、文字通りスライムを食いまくって強くなった個体、という事なのだろう。


「ちっ、ヤバイな......」


 剣を振るって牽制しながら、少し焦り出す。

 早さで負けている以上、俺の攻撃は当たらない。魔法で一発逆転といきたいが、生憎俺が使える初級魔法は生活用レベルの魔法なので、殺傷能力は無いに等しい。つまり完全に手詰まりだ。


 いや待て......もしかしたらやれるかもしれない。


 一つ策を思いつき、ニヤリッと笑う。


 スライムイーターBに向かって走り、また剣を振るう。

 当然の様にかわされ、針が顔に迫る。


 今、このタイミングだ!


 剣を握っていない方の手をスライムイーターBに向け、魔法に方向性を持たせる。そして、魔法を発動させる為の呪文を唱える。


『我は、打ち出す、水を、前方に』


直後、掌に小さな幾何学模様の魔法陣が出現し、勢い良く水が飛び出す。


 もちろんこれはただの飲料水を出す初級魔法透水(クリアウォーター)で殺傷能力なんて欠片もない。

 だが突然、水を顔面にかけられた昆虫はどうなるだろうか?

 答えは空中で悶えているスライムイーターBが表している。


スライムイーターと大層な名前を持っていても、所詮昆虫なのだ。どうやらこっちの世界でも元いた世界の常識が通ずるところがあるようだ。


「これで終わりじゃぁぁぁ!!」


 スライムイーターBの頭に剣を叩きつけ、その一撃でスライムイーターは絶命し動きを止めた。

 それを見届けた俺はフラフラと仰向けに倒れ、はぁぁぁぁ、と深いため息を洩らした。


「し、死ぬかと思った......」


 俺の初めての戦闘は、苦戦しながらもなんとか勝利を収めることが出来た。

 その実感を噛み締めていると、腹のあたりに重みが増えた。

 見るとピンク色の塊が俺に乗っかっていた。


「ブロッサム?」


 俺の声に反応してフルフルと震える。

 ブロッサムからは感謝の気持ちが伝わってきている。


 おぉ、これは掴みはいい感じなんじゃないか?


 そんな馬鹿な事を考えているとブロッサムの体がピンク色の光を放つ。

 驚く間もなく光は俺を包み、その光が止むと頬や腕の傷が消えていた。


 ブロッサムは回復魔法が使えるのか、やっぱりゲームでも欲しかったなぁ......


 しみじみと思いながら起き上がり、ブロッサムにお礼を言うと、感謝の気持ちが再び伝えられる。


 これホントにいけるんじゃないか?


 俺はニッコリ笑ってブロッサムに尋ねる。


「俺今からテイマーの冒険者に成ろうと思ってるんだけど......良かったら仲間になってくれないか?」


 俺のオファーにブロッサムから喜びの気持ちが伝わってくる。

 どうやらテイムが成功したみたいだ。

 戦闘の疲れも忘れてすぐさま立ち上がると、ブロッサムは俺の肩に乗ってきた。


 どうやら思っていた以上に俺のことを信頼してくれているらしい。


「なら、さっそく行こうか! ブロッ……いや名無しは嫌だな。サクラってのはどう?」


 俺はブロッサムスライムに、前世で見た美しい花の名前をとり、サクラと名付けた。


 するとブロッサムスライムからは感謝の気持ちが返ってきた。

 どうやら自分の新しい名前を気に入ってくれたようだ。


「それじゃあサクラ。行こう!」


 俺とブロッサム改めてサクラは意気揚々と街道を歩きだした。

どーもこんにちわ。4話担当『欠ロボT』の欠陥少年です。

今回バトルシーンを書く事になりましたが皆様楽しんで頂けたでしょうか?小説を書くのが久しぶりな上に、相変わらずグダグダな文ですが応援よろしくお願いします。

それでは次のスタン君の冒険を乞うご期待!


誤字・脱字の指摘、感想・批評等を随時募集しています。

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