冒険者として
「おおー。広いなー」
『ホントだねー!』
装備をしっかりと整えた俺とサクラは、見渡す限り黄緑色の草の海が広がる草原『ホルトュナ大草原』にいた。
この草原は冒険者ホルトュナの功績からその名前を与えられた草原である。
ちなみに一番最奥には『ホルトュナ遺跡』と呼ばれるダンジョンが存在する。
前にも言ったがゲーム同様、迷宮では珍しいアイテムが入った宝箱がランダムで出現する。
迷宮侵入→珍しいアイテムで一獲千金→俺金持ち→いっぱい課金......フフフ。
『おーい?大丈夫?』
「は!?だ、大丈夫だ」
サクラの声に妄想の世界から帰ってきた俺は依頼書を確認した。
草原の魔物討伐
適正ランクF以上
グリーンウルフの魔石を入手
※グリーンウルフの牙があれば報酬上乗せ
「魔石は確定だけど...アイテムはランダムドロップなんだよなぁ...」
ううむ...と思わず唸ってしまう。
依頼の対象は魔石だが、どうせなら牙も手に入れて報酬を増やしたい。
父さんと母さんからお金を貰っているから暫くは大丈夫だが、これからの事を考えるならお金は持っておいて損は無いだろう。
「運は悪くないと思うけど...まぁ、神頼みだな」
サクラをチラッと見ながらそう呟きつつ剣を引き抜いた。
もう片方の手には来る前に鍛冶屋で買った『ラウンドシールド』と呼ばれる丸盾を装備してある。
「よし、行こうか」
『おー!』
俺とサクラは意気揚々と草原の中を歩き出した。
数分後。
目的であるグリーンウルフはすぐに発見出来た。
その名の通り黄緑色の体毛を持つグリーンウルフは草原と同系色の為見つけにくいかと思っていたが、そこは先導していたサクラが離れたところにいたグリーンウルフを目ざとく気づき(意外な才能である)背後取ることにも成功した。
「よし。俺が攻撃するから、サクラは距離を取りつつ補助を頼むよ」
『OK!任せて!』
俺は小声にサクラは元気に返事をして一瞬焦ったが、グリーンウルフは反応していない。
よくよく考えたらサクラの声は『魔心伝心』で俺にしか聞こえていないことに気づいた、が心を読むモンスターもいるので後で気をつけるように伝えておこうと決めた。
サクラを地面に降ろすと剣を強く握り、ダッと駆け出す。
「は!」
「グガ!?」
勢いに乗せ剣を振り下ろすが、グリーンウルフが気づき俺の攻撃は腹に浅く傷をつけただけで終わった。
グリーンウルフは初期に出てくるモンスターの中で1位2位を争う早さを持つ。
攻撃方法は体毛の色での隠密からのその早さを活かした爪や牙による連続攻撃をメインとしている。
分かっていたがやはり早い。
「でも、こっちにだって策はあるんだよ」
『我は、得る、己に、速さを』
瞬間俺の身体を淡い赤い光が包む。
無属性魔法加速。
文字通り自分の速度をあげる魔法だ。
これにより俺の速さはグリーンウルフに近くなった。
「ガァァ!!」
「おらぁ!」
「ガッ!?」
目の前から口を開いて突っ込んできたグリーンウルフに合わせて丸盾で叩きつける。
そのまま追い打ちで剣を振るうが、ゴロゴロと回転で回避された。
加速により速くなったとはいえ、やはりまだグリーンウルフの方に歩がある。
さて、どうするか...
剣を構えながらグリーンウルフと見つめ合う。
グリーンウルフは俺を睨みつつも盾攻撃を警戒して突っ込んでは来ない。
このまま膠着状態に陥るかと思ったさなか、俺の身体を再び赤い光が包んだ。
『もっと速くしたよ!』
「ナイスだ!サクラ‼」
再び地を蹴る。
先程よりさらに速くなった俺の剣がグリーンウルフの頭に振り下ろされ、俺が重い手応えを感じると共にグリーンウルフの体が地面に倒れた。
「.........よし!」
『わーい!!勝ったー!!』
俺はグッと小さくガッツポーズをし、サクラは飛び跳ねて喜ぶ。
俺はサクラを肩に乗せると顎(人間で言えば顎の筈)を軽く撫でる。
「ありがとなサクラ。ベストタイミングだったぜ」
『どーいたしましてー♪』
そんな風にサクラとじゃれているとグリーンウルフの体が白い光となって消えた。
光が消えた場所を見ると、緑色の石の下に何やら布的なもの。
「お!?アイテムドロップだ!!」
『ホント!やったね!』
拾ってみると布では無く、緑色の鞣し済み毛皮だった。
何故たった今倒したモンスターの毛皮が既に鞣されてるのかは知らないが、取り敢えず両方拾うとアイテムバックに仕舞った。
『牙じゃ無かったねー』
「そうだなー。次の獲物探そうか」
『うん!』
俺達は次のグリーンウルフを探して歩き出した。
どーもこんにちわ。10話担当『欠ロボT』の欠陥少年です。
最近某ゲームでキャラ強化のレアアイテムが出なくて泣きそうなってます。物欲センサーダメ絶対。
では、スタン君とサクラの次の冒険をどうぞお楽しみに!
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