転生
「パンパカパーン!! おめでとーぅ少年!!」
「.....は?」
気がつけば俺は真っ白な空間にいて、目の前に一人の男? が立っていた。
中世的な顔立ちではあるが、イケメン部類に入る。
ずいぶんハイテンションのようだが、いったい何者なのだろうか?
それよりも俺は、ついさっきまで自分の部屋にいたはずだ。
ここはいったいどこなのだろうか。
「おっーと! 現在進行形で状況の理解ができていないであろう君に、これを見せてやろう!」
そう言って、目の前の奴がパンッと手を叩くと、そいつの頭上にテレビ画面の様なものが出現した。
言われた通り画面を見ていると、すぐに映像が流れ出した。
何処かの暗い部屋で、一人の少年が倒れているようだった。
その少年の身体は枯れ枝の様に細長く、顔は痩せこけていて、頬骨が見えて──。
「って、コレ俺じゃねぇーか!?」
「そ、君死んだぜ」
「えっ、俺死んだの!?」
衝撃的な事実に、思わず俺は目を見開いた。
「そりゃそうでしょ! 一ヶ月1000円生活なんて出来るわけないじゃーん」
ケラケラと笑う男に言われて思い出す。
そういえば、俺は重度の廃課金ゲーマーであった。
週6バイトの給料と、実家から送られていた食費を、殆どとあるゲームに注ぎ込んでいた。
その結果、映像に映る様にまともに動けなくなってしまったのだ。
「あの...ちなみに死因は?」
「栄養失調からの餓死だね」
「で、ですよねー」
「あ、ちなみに俺っち神様だぜ?」
「へーそうなん...はい?」
突然の爆弾発言に間抜けな顔をしてしまった俺を見て、腹を抱えて大爆笑する男改めて神様。
「あー、やべ。君やっぱめっちゃおもろい」
「な、なんてムカつく神様だ.....まあ、それは別として。さっきあんた、おめでとうとか何とか言ってなかったか?」
何がそんなに面白いのか、俺には理解できなかった。
とりあえず、いつまでも笑いこけている自称神様に、話の続きを催促してみる。
すると、どうやら効果はあったようで、何とか笑うのを堪えている、といった表情でこちらを見た。
「あぁ、そうだね。そろそろ本題に入ろうか.....ということで君! 転生してみない?」
「転生って、『なろう』とかによく出てくるあの転生?」
「そ。俺っち俗に言う『ゲーム神』ってやつなんだけどさ。俺っちが作った世界の人数一人足んなくてさ。ほら君『モンスター・ガールズ・オンライン』やってんじゃん」
『モンスター・ガールズ・オンライン』。
通称MGO。
結果的に俺が命までぶっ込んでしまったモンスター育成ゲーム。
ストーリーの内容としては、主人公が世界各地に生息しているモンスターを、時には倒し、時には仲間にして育成していき、最終目的の強大な敵を打ち倒す、というド定番なファンタジー系のRPGである。
しかし、このゲームの語るべき場所はそこでは無い。
実はこのゲーム、ストーリークリア後のやり込み要素として、仲間にしたモンスターを限界まで進化させ、好感度パラメーターをMAXまで上げると、可愛いモンスター娘に変身するのだ。
俺が死ぬまでにプレイしたゲームの中で1番面白い育成ゲームだった。
「やってたけど.....もしかして?」
「その世界なんだけど、行かない?」
「.....マジで?」
「マジだよ」
俺は全力で神様、いやゲームの神様に傅き手を合わせて祈りのポーズをとった。
「あなたは神か?」
「だから神だって」
「是非お願いします!!」
「ほいほい、そんじゃこの契約書を書いてね」
渡された紙に、同じく渡されたペンで高速で必要事項を書き連ねる。
「はい!」
「ほいほいほい.....OK! じゃ、そこの扉から行けるから」
「了解っす!」
俺はいつの間にかあった扉に手をかけ、その中に入った。
「あ、一応ゲームの世界をもとのしてるんだから楽しんで来てねぇー!!」
「もちろんっす!!」
俺は扉が閉まる瞬間大声で叫ぶ。
「モン娘ハーレムつくってやるぜぇぇぇ!!」