現実は厳しかった
「朝か、にしても何か騒がしいな、新しい奴隷か…」
だいたい、ここが朝から騒がしくなるのは新しい奴隷が入ってきた時だけ、それもとびきりの上玉、もしくは大物
ここの看守は悪い奴でもないので聞いてみた。
「なぁ、今日騒がしいけど何かあったの?」
看守は眠そうに答えた。
「あぁ、ここらへんじゃ滅多に見かけない狼族を捕まえたんだとよ毛並みが金色のな」
「へぇ、すげぇな」
看守は一瞬目をつぶると絶望的な事を言った。
「あと、おまえさん明日、売られるんだってよ」
数秒間口がポカーンとなった。
「まじ?」
「こんなことで嘘つくかってんだ。数少ない話し相手だからな」
「お前みたいなやつ少ないんだよ」
看守のおっさんは案外いいやつだったうん。
「……あんま、大きい声じゃ言えないが巷で有名な悪徳貴族に買われるって話しだそうだ」
「まじかよ、まだどん底に落ちるのかよ……」
看守のおっさんは二カッと笑って
「まぁ、死ななければどうにかなるもんさ」
「楽観的だなぁ、人のこと言えないが」
「まぁ、運が良ければいつか一緒に酒か飯でも食おうや」
「おっさんの名前聞いていいか」
一瞬看守は戸惑ったが、名前を言った。
「カドルフって呼んでくれ、お前は?」
「トモノリ」
「トモノリか覚えておくよ、じゃあ達者でな俺はこれから外回りだ」
と手を振りながら出て行った。