警察と話す時は気をつけよう
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薄暗い小さな小さな部屋。
机を挟んで向こう側には恐ろしい顔をした男の人が座っている。
横には鏡。男の後ろには、もう一つ小さな学校用の机に女がパソコンを弄りながら座っていた。
……お巡りさんですねわかります。
今、蓮ちゃんの手には手錠がかかっている。
「あの〜?」
「あん?」
「ひっ……」
このやり取りをかれこれ数分は続けている。
恐ろしい程に警察官は喋らない。
これここにいる意味ありますかね?
「……カツ丼いいですか?」
「……」
少し間をあけて。
「……太鼓●達人用意しろだと」
と後ろの女に言う。
「あのカツ丼って言ったんですけど」
「だから太鼓●達人だろ?」
いや、確かに『カツ丼』って『カッ』と『ドン』を組み合わせたようなもんですけれども。無理やりすぎるでしょ。
てかこの人こんな顔面しててアホなの?そういうキャラいらないから。
「お腹空いたんですけど……」
「……カツ丼1つ」
「了解です」
と、数分後トントンとカツ丼が運ばれてきた。
机の上に置かれて手を伸ばそうとした時。
男がヒョイと取ってバクバク食い始めた。
お前が食うのかよ!
「あの〜……カツ丼いいんで、とりあえずショートケーキくれません?私ショートケーキ食べないと死んでしまいます」
「死んどけ殺人者」
「だから私が殺ったわけじゃないって言ってるでしょ!?てかそもそも死んでませんよね!?」
「知らん」
「ふざけてるの!?」
「……カツ丼美味しいな」
「えぇそうね。でもショートケーキの方が美味し――じゃなくて!真面目に聞いてくれませんかね!?私は殺してません!そもそも宋史君達死んでません!」
「じゃああの赤い液はなんだ。血だろ」
「トマトですぅ!トマトですぅ!トマトですぅ!……トマトですぅ!」
「トマトですぅ!トマトですぅ!って調べたら『宋史浩意』のものと一致したんだよ!しらばっくれてんじゃねーぞ!」
「おたくら何か間違えたんじゃないの!?やっぱり昔と変わんないじゃないの!」
「うるせぇな蓮!ショートケーキの尾行してたやつに言われたくねーよ!」
「言わせて貰いますけどね剣璽!あなただってキウイフルーツの尾行してたじゃないの!」
「キウイフルーツが犯人だからだ!」
「何のよ!?」
「こんな顔なのに俺をフルーツ系男子にした犯人だ!」
「言い訳が可愛いわね!?」
この男、剣璽剣志は蓮ちゃんの昔の相棒だ。警察時代、同じ部署だった2人はいつの間にか相棒になり、いつの間にか消えた。蓮ちゃんは警察を止めたが、剣璽はまだ残っていた。
剣璽剣志というフルネームは言いにくいので、みんなからは『剣ちゃん』とか『ケンケン』とか『スネ●ク』とか呼ばれている。蓮ちゃんは『剣璽』と呼んでいる。
この男、かなりのフルーツ系男子だ。蓮ちゃんと同じくフルーツが命。蓮ちゃんはイチゴで、剣璽はキウイフルーツである。くだらない。
と、後ろに座っていた女が立ち上がった。
そしてバズーカーを構えて――
発射!
轟音と共に取調室が煙と炎に包まれた。
どこからそれ取り出したぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁ!←問題そこじゃねーだろぉぉぉぉぉぉぉ!もっと大事なことがあるだろ!警察が何やってんだよ!
さて取調を再開しよう。
「っで、お前誰?」
「っで、お前誰?」
そりゃあみんな真っ黒だから誰か誰かわからないよな――ってそんな典型的なボケいらないから。やめてください。
「……それで。なぜ殺した?」
「だから殺してません」
「なぜ殺した?」
「聞いてた?ねぇ聞いてた?」
「はぁん?」
「そんなくだらないボケいらないわ……」
手に耳を当てて『耳でっかくなっちゃった!』ポーズをしている。
「金松蓮。勘弁なさい。金松蓮が犯人だという証拠があるのです。もう自白するしかないと思います金松蓮」
「あなたいい加減フルネームで呼ぶのやめてくれる?あなたも言いずらいでしょ?」
「梨檎羽奈菜はこちらの方が呼びやすいです」
「はぁ……」
後ろの女性。名前は梨檎羽奈菜。つまりリンゴバナ〜ナ!である。『私』『あなた』『お前』などというものは彼女には存在しない。全てフルネームで呼ぶ。自分のことだろうが人のことだろうが。
その名前の通り、金髪頭でツインテール、眼鏡をかけている。未だにパソコンかちゃかちゃしている。
「……羽奈菜の言う通りだ。蓮、お前はもうタイホ〜!されるんだ」
「嫌よ。私やってないもの」
「嫌よ。君やったもん」
「オェェェェェェェエ!」
「吐くなゴルァ!」
「オェェェェェェェエ!」
●●が顔にヒットォォォォォォ!
ベタベタ。
蓮ちゃんは口を手でぬぐい、笑顔でピースサインをする。
瞬間、蓮ちゃんの顔面に拳がくい込む。ワァオビューティフル!!
蓮ちゃんは意識を失った。終わり。
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さて、今回でゴールド探偵、蓮ちゃんは最終回となりました――
「何言ってんの作者!」
誰お前。
「金松蓮ですぅ!この作品の主人公ですぅ!」
え?何言ってんの?この作品の主人公は作者ですけど?
「うるさいわね!……それより、最終回ではないですから!こんな終わり方ないですから!この小説永遠に続きますから!(本当です)」
何カッコで本当ですとか言ってんだよ。永遠に続くわけないでしょ。作者不死身じゃないんだから。
……今日はこの辺にしといて、と。
さて、最終回ではありません。次回もあります。
「また今度ね〜!」
では次回に〜。