ショートケーキに気をつけて
###
「佐々木本部長!!!」
会話をしていた3人のところに慌ただしく入ってきた1人の警察官と思われる人物。
「部屋に入る時は『何年何組何番名前身長体重血液型彼女いない歴何年今後の目標その為には何をすべきか』を言ってから入りなさい、と小学生の時に習わなかったのかね」
……
「そうよ。その入り方は、女子が更衣室で着替えている時に男子が「ごめん!間違えた!」とか言ってわざと入ってきて、その薄汚い目で私たちの可憐な体を隅から隅まで見てネットに晒し、興奮しているのと同じよ!!!」
この2人もうダメじゃ。てか蓮ちゃん例えおかしいから。おかしいから。そんな変態な男子がいるわけないでしょう!?!?!?
《はっ!1年1組1番!高橋創将!身長160cm!体重5キロ!A型!彼女いない歴150年!今後の目標は早く『ゴールド探偵、蓮ちゃん』なんていう小説を完結させたいことです!その為にはもう今すぐ蓮ちゃんを殺せば終わります!》
【……】
剣璽がすぐさまバズーカーを構え、発射する。
《--》
☆O☆WA☆RI☆
じゃねぇだろおおおおおおおおおおおお!?作者ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?ってこれ誰のツッコミやねん。
「さて、気を取り直して--」
「あの〜……」
「なんだね君は!」
「は、はい!わたくし捜査一課の者です!先程通報がありまして、交通事故が発生したとのことです!」
「そんなことかね。そんなこと私に報告する必要はなかろう」
「いえ、それが……」
「ん?」
「どうやらその交通事故に、先程いらっした公安の車が関係しているらしく……」
「なんだと!?」
「なっ!?」
「なので、本部長殿に確認していただきたいので一緒に来ていただけるとありがたいのですが」
蓮ちゃんはその言葉に違和感を感じた。
交通事故が発生したとして、何故そこに公安の車が関係しているとわかるのだろうか。先程の公安の車を知っているのは、捜査二課と本部長とその周りの役員のみ。捜査一課が知っているわけがない。ましてや、通報した一般人が知っているわけがない。
それに、わざわざそのために本部長を呼ぶ必要はない。捜査二課長の剣璽を呼ぶのが普通なのに、わざわざ本部長を呼ぶ理由はなんだろうか。
本部長はその警官らしき人物の言葉に乗せられ、席を立ち1歩踏み出した時。目の前に蓮ちゃんが塞ぐように立つ。
「佐々木本部長殿。お待ちください。この女……」
「な、何を言ってるんですか?蓮さん--ヒッ!?」
一瞬でその警官の目先に刃が迫った。あと数ミリで当たりそうだ。
その主は--蓮ちゃん。どこからか取り出したナイフを片手に。
「あら。よく私の名前を知っているのね」
「そ、それは……」
次の瞬間、女の体が回転し、女の腕により蓮ちゃんの持っていたナイフは地面に転がり落ちる。そして、それと同時に蓮ちゃんの腹に、女の足が迫る。だが、蓮ちゃんは華麗にその足をかわし、その足を叩き落とす。
女は倒れ込むのを反動にし、起き上がりながら蓮ちゃんの顔を裏拳で殴る。反応できなかった蓮ちゃんは少し後ろによろめく。
その一瞬の隙に女は蓮ちゃんに近付き、殴ろうとする。が、その右腕は蓮ちゃんに当たる寸前で止まる。剣璽に掴まれたのだ。
「えーとお嬢さん。天下一武道会は外でやってくれないかい?」
「チッ!」
そんな挑発的な言葉を放った直後、女の後ろ回し蹴りによって、蓮ちゃんごと吹き飛ばされる。
その隙に、女は扉の方に走っていった。
「まさかあいつ飛び降りる気じゃないだろうな!?」
「そのまさかよっ!」
女は窓を破って外に落ちていく。
「馬鹿な!ここは10階だぞ!死ぬ気か!?」
そんな言葉を放っている佐々木を横に、蓮ちゃんは女と同じく窓に向かって走り出す。
「剣璽!バズーカーを空に向けて放って!」
「なに!?」
「はやく!」
最初、蓮ちゃんの言っていることがわからなかったが、次の言葉の瞬間、窓に飛んでいる人の姿がうつった。そう、先程飛び降りた女だ。
制服の下に隠しこんでいた大きな翼を広げて。
蓮ちゃんが窓を踏み台にして大きくジャンプしたのと同時に、剣璽が空に向けてバズーカーを放つ。
スピード的には圧倒的にバズーカーの方が早いので、すぐさま蓮ちゃんのところを通り過ぎるだろう、と思った矢先。
蓮ちゃんはそのバズーカーの弾を足で踏み、それもや踏み台にしてまた大きくジャンプする。それと同時にバズーカーの弾が爆発を起こす。その爆風がまた蓮ちゃんのジャンプの飛距離と速度を伸ばす。
「恐ろしい女だ……しかし、たとえあの女にとどいたとしてどうやって倒す気--ほう、なるほど」
本部長室に置いてあったはずの花瓶が、中身を残して消えていた。
「待てええええええええええええ!」
「な、何ッ!?」
そりゃ驚くだろ。だってあんなところからここまで届くはずがないもん。アホだよこの人。
「落ちろおおおおおおおおおおおお!」
蓮ちゃんは花瓶を振り上げおろす。しかし、花瓶は女に当たるのではなく、その翼に直撃した。
花瓶は翼を貫通していき、蓮ちゃんはそのまま地面に落ちていく。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!死ぬぅぅぅぅぅぅうううう!」
そう下はコンクリート。ましてや、高さは愛知県警の建物の高さを超える。死ぬしかないね。やった、これでこの話完結するぞ。
蓮ちゃんはビルの屋上の端にぶつかり、落ち、そして水道管にぶつかり、落ちていった。
###
一方飛んでいった女は。
「私よマゼンタ」
『あらどうしたの?』
「ごめんなさいね。こっちのミッションは失敗に終わったわ」
『いいのよ。どうせそっちはサブミッション。成功できなくても支障はない。どうせまたあの女がいたのでしょう』
あの女--金松蓮。
「だけど、金松蓮は10階の高さから落ちたから命があればいい方だと思うのだけれど」
『バカねぇあなた。シルバー様もブロンズ様も言ってたでしょう。「金松蓮はしぶといぞ」って』
「まぁたしかに……」
『だからどうせまた現れるわよ』
「まぁそういうことにしておくわ」
『それじゃああなたはしばらく休んでなさい。怪我してるのでしょう?』
それを当てられたのは少し屈辱だが、しょうがない。
『次の組織の指示があるまでゆっくり羽を伸ばして休んでなさい』
「はいはい。どうせ作り物の羽ですけどね」
そのままその女は空に消えていった。
###
「蓮!!!」
それからすぐに蓮の捜索を始めた愛知県警だったが、なかなか蓮を見つけれないでいた。
「確かに落ちたのはこの辺りだったようだが……ん?」
剣璽が捜索していると落ちていたあるものを見つける。
「これは蓮の……」
それは大量の血だった。もしや……と剣璽が思ったその時。どこからか悲鳴が聞こえてきたのと同時に、バイクのエンジン音が聞こえてきた。
「まさかあいつ!」
すぐさま通りに出てその音の正体を見る。それはノーヘルでバイクに乗って走り去る蓮ちゃんの姿だった。
「おい蓮!」
その叫び声は蓮に届くことはなく、蓮ちゃんは走り去っていった。