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桃色エッセイ。

オンナの一生。

作者: 桃色 ぴんく。

 ―幸せってなんなのか。



 最近、このテーマについてふと考えることが多くなった。それだけ、年を重ねてきたからかな、とも思うが、未だに何もわからないのが現実である。



 私は20代で結婚して、2人の子供も産んだ。旦那さんとは恋愛結婚で、子供たちも可愛く、家族も仲良くて、世間から見れば、こういうのが『幸せ』なのかも知れない。

 けれど、それは表面上で、蓋を開けてみれば、いわゆる【仮面夫婦】というやつなのだ。



 長男が産まれてから、旦那さんは私にキスをしなくなった。その理由が何なのかはハッキリわからない。出産に立ち会わせたことで私を女性として見れなくなったのか、妊娠中に他の女性がいたのか。よくわからないが、元々ラブラブで新婚生活をしていたわけじゃなかったので、出産後はかなり冷え切った夫婦関係になってしまっていた。その後、長女も産まれたが、はっきり言って性行為はキスをしなくても行えるのだ。私はどちらかと言うと愛情表現=性行為よりもキスだという考えだったので、キスがなくなってからは、旦那さんの愛情を感じられなくなってしまった。そして、長女が産まれてからは、【子供は2人でいい】と、落ち着いてしまって、そこからは夫婦関係も完全にレスとなってしまった。




長男が幼稚園に通うようになり、同じバス停のママさんたちと話す機会も増えた。私はこの時30代前半だった。ママさんの中に2人ほど40代の人がいたが、2人とも若くて綺麗だった。その時の私は『40代でも女性はまだまだ綺麗だな』という印象を受けた。バス停のママさんは40代でも綺麗だったが、参観日などで幼稚園に行き、たくさんのママさんを見ると・・・どう見てもオバサンだったり、地味な人もいたり、本当に様々だった。




 どうして、あんなに【差】が出るのか。いくら育児に疲れてても、それはないでしょう、という感じの人もいた。一方で、年を重ねても相変わらず素敵でお洒落なママさんたち。この両者の違いは、なんなのか。単に『オンナであることを意識している』だけなのかな、と私は思っていた。




 その後、長女がオムツを取れる頃には、私の中で『女性として扱ってほしい』という欲求が強くなってきた。今更ながら、旦那さんには全くその気はないというか、もはやただの【同居人】としか思えなくなっていることも私はもう分かっていた。そんな時に出会ってしまった男性と私は恋に落ちた。お互い家庭があったので、これ以上の進展はないと思われたが、お互い離婚して一緒になろう、と盛り上がってしまい、私は離婚をした。

 だが、離婚後、相手の男性が音信不通になってしまった。きっと、自分の子供たちに養育費を払いながら、私の子供たちまで養える自信がなかったのだろう。私は一人残された気分になって、それでも、子供たち2人をどうやって育てて行こうか・・・考えただけでめまいがするようになってしまった。そこからは体調を崩しながら働く日々だったが、離婚から半年ぐらい経った時に、別れた旦那さんに甘えて『子供のために復縁する』ことにしたのだ。【仮面夫婦】でも【同居人】でもなんでもいい。子供たちをちゃんと育てなければ・・・復縁した当時の私はそんな思いだった。




そして、40代になり、ふと町ですれ違った女性の姿を見て驚いた。あの、バス停で一緒だった綺麗なママさんが・・・すっかり普通のオバサンになっていた。見間違いかと思うほどの変り様だった。嘘でしょ・・・なんだか自分がこの先50代になるのがすごく怖くなってしまった。その後、スーパーでももう一人のママさんと出会って、このママさんもすっかり普通のオバサンになってしまっていて、私はとてもガッカリしたのだった。きっと、40代の間にピンッと張りつめて頑張って女磨きしてたのが、50を迎えてプッツリと糸が切れたように『もういいわ』となったのだろう。普通のオバサンになって、ごく普通に一生を終えて行くのか・・・




 今の職場の仲間の50代、60代のオネエサマたちは、50を越えてもまだまだ女性らしい。特に60代のオネエサマは、日頃からよく言うのだ。

【30させごろ 40しごろ 50ござかき(ござむしり)60ろくに濡れずとも】

 女性は年齢を重ねるごとに性欲も快楽も強くなる、というような意味合いがあることわざだそうなのだが、これを基準にオネエサマは言うのだ。

「しごろの40代でオンナ捨てるとか、絶対あかん」

「旦那が相手せえへんのやったら外で遊んだらええねん」

 30代の若い仕事仲間たちも言う。

「いつまでも綺麗でいたいから、恋はずっとしたい」





―幸せってなんなのか。




【結婚して子供を産むこと】なのか

【旦那さんにすごく愛されていること】なのか

【毎日が平凡で落ち着けること】なのか




 今も、旦那さんとはレスなままだが、離婚する前より復縁してからの方が仲が良くなった気がする。そして私は、いつまでも綺麗でいたいから、あれからずっと【恋】をしている。その相手が、旦那さんだったり、子供たちだったり、その他の誰かだったり、仕事だったり、執筆活動だったり、その時の状況で様々に変化するが、とにかくその相手のために綺麗でありたい、と思う。




 私が欲しいのは、ありきたりだが、癒される時間。もう、以前のような家庭を壊すような恋愛はいらない。絶対御免だ。旦那さんのことを大好きだし、いなくなられたら本当に困る。子供たちは本当に可愛くて、大きくなるまで育てあげたいし、この子たちに悲しい思いはさせたくない。だから、何があっても家庭は守る。家事や育児で疲れた私を癒してくれる人は欲しいと思うことは多々あるが、欲しいのは【癒しの時間】だけであって、決してその人自体を欲しいということではないのだ。だから、癒しの時間をくれる相手が感情を押し付けてきたり、必要以上に束縛したり、嫉妬心をぶつけてきたりした場合は、もうその時点でその恋は終わるのだ。そうでないと、疲れるから。癒しの時間どころか、疲れ果てて倒れてしまうから。大事なのは、家事や育児の合間の自分が無理なく輝いていられること。




 

 私も、職場のオネエサマみたいに、60代になっても綺麗でいたいと強く思う。そのためには、自分も磨くし、いろいろ勉強もするし、恋もする。

 こないだ、またバス停のママさんとすれ違ったが、50代半ばにして、また綺麗に戻っていた。挨拶をすると、少しドギマギした様子で笑顔で会釈して去って行った。しばらく封印していた恋を再開したかな、という印象を受けたのだった。そのママさんの素敵な笑顔を見て、50代を迎えるのもそんなに怖くないかも、と思えるのだった。




 オンナの一生。




それは、家族にご飯を作って、旦那さんに感謝して、子供たちの世話をして、家計の足しに仕事したり、趣味の教室に通ったり、自分を磨いて、好きなことをして、時々恋をして、また母親に戻って、子供たちの成長に感動して、また自分が女性であることを思い出して・・・こういうことを繰り返して行くことだと、私は思う。




                ~オンナの一生。(完)~


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― 新着の感想 ―
[良い点] なかなかいないねぇ~、素晴らしい人生哲学であると思うよ。amebaブログ、故人の軌跡
2022/02/07 02:01 ジャンゴ爺さん古希コキ呼気
[一言] 素敵な考えさせられるお話でした。
[良い点] 最後のセリフが良すぎてスクショしました。 まさに女って、そういうものなのだろうと思います。 私も相手は何にせよ一生恋したいと思いました。 とても良いです。共感します。
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