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第5話 「猛獣達の逆襲」

ブルトニー港海戦により一気に緊張感が増した赤毛のブラッド海賊

団、決戦の日は刻々と近付いてきていた。

四大天使の秘宝

〜アーク大陸編〜


第十三話「猛獣達の逆襲」


ブルトニー港海戦での敗北を、ハマーンは『イサーク遺跡』の最上階会議室で報告を受けた。

「何?全滅だと!」

 ハマーンが驚愕する。

「あのバカどもが何をしておったのだ!」

 ハマーン海賊団の約半分を失ったのである。信じられない思いである。

「報告によりますと、港内に突然『赤毛のブラッド海賊団』が現れたそうです」

側近が報告する。

「何?『赤毛のブラッド海賊団』だと?」

 ハマーンは自分と同等クラスの大物海賊団の登場に驚いた。しかも民衆と共に自分に敵対しているのである。

「何が起こっているのだ?」

 ハマーンは激怒していた。戦力が半減している、しかも相手は『赤毛のブラッド海賊団』である。状況は思わしくない。情報が少なすぎたのである。ハマーンはここにきて戦力分散の愚かさを知ったのである。情報を掴んでいたら戦力を分散させる事はしなかったであろう。自分の決断の甘さを悔いた。


「ここで俺がいても仕方があるまい。直々に指示してブラッドに借りを返してもらう。『ハイド』をこちらに呼びよせよ。『アビス』はワシが船に戻るまで待機させろ」

 ハマーンが指示を与えた。


その時である、発掘作業を進めている部隊長が慌てて会議室に駆け付け報告した。


「報告があります。地下の発掘部隊より連絡あり、地下の倉庫の扉を見つけたとの事です」


「ふふふ。ついに見つかったか?流れが変わったな!これで『赤毛のブラッド』など恐れるに足りぬ」

 ハマーンの瞳の野望の炎が灯させた。



 その会話の一部始終聞いていた者がいた。テルである。ハマーンの食事係の雑用として使われていたのである。

 テルはりゅうに報告に戻った。



 スチワートからの報告をブラッドは、猫族の村『キャッツ』の王座の間で聞いた。

「分った。お前達の働きには感謝する。よく港を守ってくれた。ありがとう。こちらもすぐ動き始める。お前達は支持があるまで戦いの疲れと整備に専念してくれ。それからハマーンの手下も俺たちを警戒するだろう、情報収集を怠るなよ。それとマシュー達魔法使いをすべてこっちに向かわせてくれ」

 ブラッドはそう告げて、魔導通信機『doumo』を切った。


「話は聞いての通りだ。スチワートとマシュー達が、ハマーン海賊団の三艦隊をブルトニー港で撃破した。これによりハマーン海賊団の戦力は半減した」

 ブラッドの一言でその場にいた者すべてが喚起した。

「さすが『赤毛のブラッド海賊団』。このままの勢いで『イサーク遺跡』で奴隷となって働かされている同胞達を助けるニャ!」

 興奮したサスケが大声を上げる。

「焦りは禁物だ。ハマーンはこれから警戒してくるだろう。こちらも引き締めないと逆にやられるニャ」

 王座に座っている太郎が戒める。


「その通りだ。俺たちの計画である奇襲は、相手が油断しているから効果を発揮する。相手が警戒しているとそれが難しくなるのだ。計画の練り直さなければならない。奴隷となってしまった人達を傷つけるわけにはいかないからな」

「太郎、申し訳ないが猛獣会議をもう一度開けるように打診して欲しい。ハマーンの情報部が潜んでいるかもしれない。内密にな」

 ブラッドが太郎に頼む。

「わかったニャ」

 太郎が了承した。


 ティナは潜入しているテルとりゅうが心配であった。ハマーンの警戒が強くなると彼らが危なくなる。

「気を付けて」

 ティナは心から祈った。



 『イサーク遺跡』は巨大な要塞のようなものである。その要塞を取り囲むように巨大な石の壁を作っていた。その壁の内側と遺跡の間に無数の檻が設置されており、奴隷はその中に詰められていた。

 檻の一つ一つに警備を付けられており、逃げだせる状態ではない。

テルは檻に戻り、りゅうに現状を報告した。勿論他に会話を聞かれる分にはいかない。数カ国語を話せる、テルが『シン国』の言葉で話した。

「そうかスチワート達がハマーン艦隊を打ち破ったか。しかしこれで余計警備がきつくなるな。ブラッドと連絡を取ってみる。テルは引き続き遺跡の中を調べてくれ」

 りゅうが指示を与えた。



 第二回の猛獣会議は獅子王の居城『獅子城』で行われた。猫族の城とは違い立派なお城である。元々人間が作ったお城ではあるが、十数年前にブラッド達がハンター共を蹴散らした時に勝ち取った戦利品である。


「皆さんに集まって頂いたのは、ハマーン海賊団と戦うための作戦を立てるためです」

 ブラッドが唇を切った。

 今回集まったのは、『獅子王』『虎王』『サイ王』『ゴリラ王』『鷹王』の五王に加え、呼びかけをした『猫王』太郎とサスケである。

各王に加えてブラッド・ティアナ・ゴルディバ・コンゴ・ヒューべリック・ティナが参加した。

敵の情報漏れを恐れて、少数会議となった。


「ハマーン海賊団の内、三隻の艦隊を私の部下が打ち負かした。これで奴らの戦力は半分となった」

 ブラッドが報告すると、各王から歓声が上がった。

「しかしこれにより奴らの警戒がより強くなる。これからは緻密な計画が必要だ」

 ブラッドが皆を引き締めた。そして会議室の中央にある円卓の卓上にある地図を見ながら作戦を説明した。

「奴らは遺跡の回りを大きな石の壁を作っている。この壁は簡単には打ち破れない。そこで我らが誇る魔術師軍団の力を使う。まず五部隊に分かれる事にする。『肉食動物』二部隊、『草食動物』一部隊、『霊長類』一部隊、『鳥類』一部隊である。各部隊の指示は五王にお願いしたい」

 ブラッドの指示に各王は頷いた。


「各部隊は五ヶ所に分かれて貰いたい。ちょうど遺跡を取り囲む『五芒星』のように配置します。正面が獅子王率いる『肉食動物』、正面から右斜め下には虎王率いる『肉力動物』、左斜め下にはゴリラ王率いる『霊長類』、右下にはサイ王率いる『草食動物』、左下には鷹王率いる『鳥類』です。よろしいですか?」

 ブラッドは地図を広げて丁寧な説明に各王が頷く。


 色々な失敗と呼ばれる多くが、意思の疎通が出来ていない事が多い。挙句の果てには、行き違いや他人悪口となり統制が取れなくなるのである。皆が同じ方向を向くには、意思の疎通が不可欠である。ブラッドはその重要性を知っている。他人なら特に必要なのだ。だから最初に彼らが分かるまで丁寧に説明するのである。


「各部隊に我々の魔術師軍団を付けます。合図と共に、魔術師軍団が壁をぶち破りますので、そのまま突入して下さい。奴隷の中に私の部下が潜入しております。作戦が始まったら塞内で反乱するように指示しておきます。外から中から彼らを混乱に陥れます」

 ブラッドの説明に五王は納得した。


 その時である、魔術士ヒューベリックの携帯魔道通信機「doumo」に連絡が入った。潜入しているりゅうからである。

「もしもしりゅう、今会議中です。もう少し後に出来ませんか?」

「いや彼は中々身動きが出来ない。代わってくれ」

 ブラッドが携帯を受け取った。

りゅうすまないな、今五王達と会議をしている、決戦は近いぞ」

「ブラッド船長、遺跡周辺の警備が厳重になっております。遺跡内に進入しているテルから聞いて、ハマーンの三艦隊を撃破した事は知っております。それとハマーンは『イサーク遺跡』の宝を発見したようです」

 りゅうは一通り説明した。

「分かった決行は3日後にする。太陽が真上に上った正午に、動物部隊と五方向から攻撃を仕掛ける。りゅうはそれまでに奴隷になっている住民に知らせて反乱の準備をしてくれ。内からも混乱を誘う」

「分かりました。準備をしておきます」

「気をつけてくれ慎重に頼む、何処で情報が漏れるか分からない」

「了解です」

 そのまま連絡が切れた。ブラッドは携帯をマシューに返すと五王に話しかけた。

「お聞きの通りです。敵も警備を強化して私達の攻撃に準備しております。なので内外で混乱を誘い、その混乱に乗じて『イサーク遺跡』に乗り込みます。敵は宝を見つけたと言っております。時間がありません。3日後の正午に決行したいと思います。各王は準備を進めて下さい」

 ブラッドの説明に五王も頷く。


 会議が終わり、各王が退出した頃に、1人(1匹)の子供のライオンが会議室に入ってきた。

「お父様、この方がブラッド様ですか?」

「エースか、そうだ彼が我らの英雄ブラッド船長だ。お前のおじい様も彼に助けられたそうだ」

「ブラッドよ、我が息子エースだ。貴方の大ファンなのだ」

「初めましてエースです」

 エースはテレながらブラッドに近付いてきた。

「エース王子、お初にお目にかかります。『赤毛の海賊団』船長のブラッドと申します。お見知りおきを」

 ブラッドは若き王子に深々と頭を下げた。

「頭を上げて下さい。ブラッド船長。貴方は私の憧れでもあり、英雄なのです。貴方の話は子守歌のように聞かされていました。アーク大陸の全ての動物達の英雄なのです」

「私はそれほど偉くは無いですよ。道を開いたのは貴方方の先人達です。私は少しお手伝いしただけですよ」

 ブラッドは微笑みながらエースと話した。

「今度の戦いもそうです。貴方のお父さんの背中を見て王のリーダーシップと言うものを学んで下さい。それは国を治める者として一番重要な事です。常識じゃない何かを感じて下さい。それは貴方が王となる使命なのです」

 ブラッドの言葉にエースは感動を隠せない。

「はい!ありがとうございます」

 ブラッドは頭を下げて会議室を後にした。

「エースよ、彼のような英雄になりなさい。百獣の王とは我ら一族だけの王ではない。この森に住む全ての動物の王とならねばならぬ」

「はい。お父様」

 部屋を後にするブラッドを見送りながらエースは父とブラッドの言葉を繰り返した。



 三日後、ブラッド達と森に集まる全ての動物が『イサーク遺跡』の森の中を取り囲んだ。正面にはライオン王が指揮をとる『肉食動物』軍団が終結していた。

 ブラッド達一行は獅子王と共に正面から突撃する。メンバーはブラッド・ティアナ・ゴルディバ・コンゴ・マシュー・ティナである。サスケを中心とした猫族部隊も正面から攻撃をしかける。その他の部隊には各魔術師が三名待機させている。『イサーク遺跡』を取り囲む壁を打ち破る為の切り札である。


 正午…太陽が真上に上った。

「ブラッド船長。いよいよですね」

「エース王子。気を付けてください。これからは戦場です」

「分かっております。貴方達の勇姿を目に焼き付けます」

 エースの瞳を見てブラッドは優しい笑顔で彼の毛皮を撫でた。

 そして振り返り『イサーク遺跡』を見据えた。その瞳は『戦士』の目となっていた。


「さあ決戦だ!」


 真上に上った太陽が森の出口に光を与えた。戦いを待つ数百の動物達は、ブラッドを背に『イサーク遺跡』を見据えた。


 次回、『決戦!イサーク遺跡』をお楽しみに。


キャスト

ティナ…赤髪に黒い目を持つ少年、この物語の主人公

ブラッド…「赤毛のブラッド」として海軍・海賊に恐れられている。海賊船ルシフェル船長

ティアナ…海賊船ルシフェルの副船長兼経理担当。森の種族「エルフ」にしてブラッドの妻

バージ…5人衆の一人。ブラッドの幼馴染。一等航海士として舵を任されている。最強の剣士

ゴルディバ…5人衆の一人。甲板長。巨漢ながら性格は温厚。ただし戦いの時は狂戦士となる

りゅう…5人衆の一人。コック長。武術の達人。その正体は、シン国の皇太子。

ゴンゴ…副甲板長、ゴルディバの弟。兄と同じ巨漢で狂戦士。可愛い動物、甘い物に目がない。

ヒューベリック…ドクター助手。白魔法・薬学の権威。

テル…ジャンパー国 天皇直属の忍 ティナと友達になる。赤毛のブラッド海賊団コックとなる。

サスケ…猫王太郎の息子。猫族の王子。側近・・・五右衛門・八兵衛

太郎…猫王。ブラッドの戦友でもある。

五王…『獅子/シンバ』、『虎王/猛虎』、『鷹王/ホーク』、『サイ王/パティオ』、『ゴリラ王/コング』

ハマーン…鋼の海賊団棟梁。鋼の鎧覆われている。大海賊


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