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第4話 「ブルトニー港海戦」

ブラッド一行が「猛獣会議」に出ている頃、海賊船「ルシフェル」

が停泊しているブルトニー港に、ハマーン海賊団が襲い掛かる。果

たしてブラッドのいない赤毛の海賊団は港を守ることが出来るのか

!?

四大天使の秘宝

〜アーク大陸編〜


第4話「ブルトニー港海戦」


 アーク大陸の先住民が築き上げた古代遺跡『イサーク遺跡』。土に埋もれていたこの遺跡も千人以上の奴隷により掘り起こされ、ほぼ全貌が明らかになってきていた。超巨大な遺跡の壁一面に彫られた彫刻の数々が、古代文明の偉大さを物語っている。森の中に浮かび上がるように築かれた古代遺跡はまさに圧巻である。

 その古代遺跡の最上階に会議室を設け指揮を取っているのが、鋼の鎧に覆われた『鋼の海賊団棟梁ハマーン』である。

あらゆる攻撃を跳ね返す、鋼に覆い尽された母船『マルテンサイト』船長でもあり、その他五隻の海賊団を配下に置き、組織して指揮している大海賊である。しかしここに来てハマーンは苛立っていた。

「まだ宝の倉庫は見つからないのか?」

 ハマーンは側近に怒鳴った。

「申し訳ございません。奴隷共の動きが鈍く、作業が思うように運びません」

「言い訳など聞きたくも無い。奴隷など死んでもまた徴収すればよい。1年も経つのに見つからんとは何をやっている」

 森の奥深くに1年も費やしている。苛立ちは頂点に達しようとしていた。

「それなのですが、我らの偵察隊の報告によれば、ブルトニー港に何やら怪しい船が停泊しているとの事です。ガリオン型の巨大船で、商船には見えないようです」

 側近が報告した。

「ほう海軍か?海賊か?我らと戦う算段をしているかもしれんな?退屈をしていたところだ、その船を破壊して、新しい奴隷を補充することにしよう」

 ハマーンが暇つぶしを見つけたようだ。

「それと森の種族共が、集会を開いているようです。その中に何やら人間も加わって、作戦を練っているようです」

 側近が密偵の報告を告げる。

「知能の無い動物共などどうでもよいが、人間が加わったとすれば、何か反逆の恐れがあるな。これを機に動物共を皆殺しにして、奴らが我らの『食料』という事を認識させねばならん。しかしまずはブルトニーに停泊している船だ。その船を沈めて、町の住民をすべて奴隷にしてやる。女子供もだ。女は選んで俺の物にする。後はお前達が好きにしろ」

 ハマーンは上機嫌になった。

「まずは、海で停泊させている、キラー・ダガー・マッドに指示してブルトニーに向わせろ。港を火の海にしてやれ。そして奴隷をこの遺跡につれてこさせろ」

 ハマーンが支持をする。

「はっ!それで動物共は?」

「楽しみは後で取っておく。早急に進めよ」

 ハマーンの指示を聞いて、側近は会議室を後にした。



 ブルトニー港に待機を命じられた『ルシフェル』のクルーは、毎日の如く豪遊していた。うるさいティアナもブラッドもいないのである。皆は羽を伸ばしていた。しかし砲撃長スチワート、通信長兼魔術師マシューは遊んではいられなかった。相手は大海賊団『鋼のハマーン』が相手である。準備を怠るわけにはいかない。リーダー格の彼らは、経験を元にあらゆる状況に備えて対策を考えていたのである。妥協は許さない、妥協が命取りになるからだ。彼らの経験と知性をフルに生かし、対応を考えて準備を行っていた。あらゆるパターンを想定して百通り以上の思わぬ状況にも対応出来るように準備している。勿論その百通りの思わぬ状況を引き起こすのがいつもブラッドである。出来るだけ想定出来る事は準備しておくのだ。彼らも最高のリーダーである。


 スチワートは数名の部下に情報収集させて、敵艦隊の居場所、戦力を割り出させていた。


「情報によると、ブルトニー港の南に百五十キロ程南下した海岸に船を停泊しているようだ」

 スチワートが地図を開き、副砲撃長マックとマシューに説明していた。

「早速、何名かに調査行かしたところ以下の事が分かった。艦隊は六隻。一隻はこの『ルシフェル』と同じ超巨大ガリオン級の巨大戦艦だ。しかもこの巨大戦艦は鋼で覆われている。ハマーンの母船『マルテンサイト』と断定して間違いないだろう。その他の五隻の旗を見てもビックリする。ガニシャ大陸の南側一帯を暴れまわった。『ドクロに猛獣爪』のマーク、『キラー』『ダガー』猛獣兄弟の二隻。一晩で港を火の海とかした。『ドクロに炎』のマーク、炎の魔術師『マッド』。数分の間に、人を芸術的に殺す。『ドクロに砂時計』のマーク、冷徹な殺し屋『ハイド』。一瞬の間に十隻もの海軍を海の底に沈めた。『ドクロに鮫』のマーク、海の支配者『アビス』。すべてが国際第一級の海賊だ」

「なんでそんな奴らが、ハマーンの軍門に下っているのかがわからない」

 マックが嘆く。

「それ程ハマーンの力が巨大だという事であろう」

 マシューが冷静にいう。

「しかし我らは奴らと戦わねばならない。奴らが巨大であるならば、『裏』をかいてやればよい。何もまともに遣り合わなくてもいいだろう。」

 マシューは最高位の魔術師でもあるが、彼の豊富な知識は軍師としても力を発揮する。

 その時である、ルシフェルに搭載されている固定魔道通信機『MTT』(Magic Telegraph and Telephone)が鳴った。偵察に向わしているクルーからである。

「もしもしどうした?」

 スチワートが話した。

「砲撃長、今ハマーンの艦隊が三隻北上して行きました」

 偵察に向ったクルーが報告する。

「何?どの船だ?」

「『ドクロに爪』のマークの船が二隻、『ドクロに炎』のマークの船が一隻です」

「キラーとダガーとマッドだ!」

 ニックが叫ぶ。ルシフェルのブリッジが静まり返った。

「お前達は引き続き監視をしてくれ。こちらからもまた連絡する。」


「最悪の状況だ。ブラッドは五人衆一人で一隻と言ったが三隻もいるじゃないか。」

 ニックが嘆く。


「それはどうかな?戦力を分散したという事は、こちらはチャンスかもしれん」

 マシューは不適な笑みを見せた。



『ドクロに猛獣爪』のマークの海賊船二隻『バイソン』・『シーザー』はマストを広げ北上していた。その少し後ろに「『ドクロに炎』のマークの海賊船『ヒドラ』が付いてきていた。海賊船『バイソン』の船上には、『キラー』と『ダカー』兄弟が乗っていた。

「何だって『ハマーン』は『マッド』なんて付けるのだ。俺達だけで十分だ!」

 大きな牙がある獣の毛皮をきている弟ダガーが声を荒げる。まさに猛獣の如くである。

「ボスは火の海にしろとの命令だ。マッドの炎が必要なのだろう。それにブルトニーに出している偵察隊が、怪しい巨大戦艦を発見している。万が一の事を考えての戦力配置だろう」

 兄のキラーも獣の毛皮を着ているが、弟と違い冷静だ。

「火の海など、俺達三百人の猛獣部隊によって直ぐにでも火の海にしてくれる。その怪しい船ごとな!」

 弟ダガーが吠えた。


 その時である。後方から大きな炎の球が飛び込んできた。危うくダガーに炸裂するところであった。とっさに避けたダガーはまさに野生の感であろう。火の玉は甲板を粉砕するかと思われたが、その『火の玉』は空中で動きを止めて、そのままゆっくりと着地した。その炎から現れたのが炎の魔術師『マッド』だ。


「やあお二人方、何やら俺の噂かな?」

 紳士的な口調でマッドが挨拶した。

「危ないだろ。さては俺を殺すつもりだったな!」

 ダガーが叫ぶ。

「かわすと分かっていたから、ここに下りたですよ。まさかこんな鈍い炎をかわせない幹部がいるはずがないと思いましてね」

「何?」

 血の気が上った、ダガーが剣を抜いた。

「止めろ!馬鹿者!」

 兄キラーが一喝する。ダガーが怯んだ。

「マッドも悪ふざけがすぎる」

 キラーがクギを刺す。怖ろしい容姿の割には冷静だ。

「それで何のようだ」

「あんた方がさっさと出港してしまうので、作戦も決めていなかった。それでわざわざ出向いてあげた訳です」

 あくまでも紳士的な態度である。風貌からしても紳士である。

「作戦などいらぬ。港にいる住民どもを捕らえて港を焼け野原にするだけだ!」

「嫌ですね。野蛮な人は。少しは計画も練られないと」

「何?」

「何か問題でもあるのか?」

 飛びかかろうとするダガーを制して、キラーが問う。

「問題があるとすれば港にいる巨大船ですね。港は俺達が占領してから商船などは一切立ち寄らなくなった。それなのに超巨大船が入っているという事は、何か意図があるのは間違い無いでしょう。それを無暗に突っ込んだらバカですから」

 マッドの一言で、またダガーが叫ぶ。

「たかが一隻に何を恐れるのだ。臆病者。圧倒的に数が違うのだ。兵力の差とパワーで押さえればいいのだ!」

 ダガーの一言で溜息を付きながらマッドは話した。

「敵の戦力も知らないで突っ切るのは無駄に兵士を削ぐだけです。兵法の初歩の初歩ですよ。奴らがどのような武器を持っているかも分からない。魔法使いがいるかもしれない。仮に私が敵ならばこの船を一発で海の藻屑とする事が出来るのですよ」

 マッドの瞳に魔力が宿った。その瞳にダガーは身動きが取れなくなった。

「いい加減にしろ!二人とも戦いの前だ。慎め」

 キラーが制する。冷静である。

「現段階では情報が少ない。『バイソン』(キラー)と『ヒドラ』(マッド)が港に入り、港の状態を見ながら攻撃を仕掛ける。『ジーザー』(ダガー)がバックアップだ。文句はあるまい」

 キラーが支持をする。マッドは頷く。しかしダガーが喚く。

「どういうことだ?兄じゃ?俺がバックアップとはどういうことだ?」

 ダガーは納得がいっていない。

「敵が何処にいるか分からない。しかも敵を港から逃がすわけもいかない。だからバックアップが必要なのだ」

「そんなのマッドにやらせろ!」

「マッドの魔力と我らの突進力が必要なのだ。お前は湾の中から一人も逃げられないようにフタをしろ。絶対一人も逃がすな!」 切れきれモードのキラーの迫力にダガーも渋々納得した。



ハマーン艦隊の三隻は、夕方にはブルトニー港外に到着した。そのまま『シーザー』(ダガー)を待機させて、『バイソン』(キラー)と『ヒドラ』(マッド)の二隻は、港内に入っていた。しかし…。

「おかしい。港が静か過ぎる。どういう事だ?しかも巨大船など何処にもいない」

「全員警戒しろ。」

 キラーが緊張を伝える。

 その時である。港内の奥に入りこんだ海賊船の背後から大砲が打ち込まれた。スチワートに指示で湾入口の二つの灯台に大砲を設置していたのだ。スチワートに鍛えられた砲撃員による的確な砲撃である。『ドカーン』という破壊音と共に船尾にある舵を的確に打ち抜いた。

舵を失った、二隻は身動きが取れなくなった。


「図られた!後方の大砲を破壊しろ!」

 キラーが指示した。すると静かだった港から住民が津波の如く押し寄せ、銃と大砲を次々と撃ちはなった。

突然の住民の反撃に、舵を失った海賊団は狼狽した。住民とはいえ数千もの人数である。元々海賊の恐怖によって押さえつけていたのである。人数では圧倒的に数が違う。


 スチワートが海賊団に対抗する為に、住民達に思いを伝えて賛同してもらったのだ。

 決め手は『自分達の自由を取り戻すのは今しかない。立ち上がろう!』である。その一声で住民達に力を与えた。もちろんパン管長の強力があってのことである。

 小さな力でも団結すれば大きな力になる。十分意味のある彼らの勇気である。



 港内の異変に気付いたダガーは、慌てて母船『シーザー』を港内に移動させようとしていた。

 しかしその時である岸の陰に隠れていた海賊船『ルシフェル』が『シーザー』に一成射撃を行った。

 突然の砲撃にダガーを含めて、クルーは狼狽した。次々と放れる砲撃に『シーザー』は身動きが取れなくなった。元々戦力は『ルシフェル』の方が圧倒的に上である。勝敗は一気に付いた。

 そして『トドメ』には、マシューの黒魔法による巨大な炎の球攻撃である。炎系最大魔法『ファイヤーボム』である。これにより『シーザー』は炎上して、海の藻屑と消えていった。

ダガーのような猛獣海賊団は、陸戦において威力を発揮する。彼らは戦わずして負けたのである。冷静なキラーがダガーを下げたのは正解だが、マシューはそれを超える策を練ったのだ。まさに作戦勝ちである。



 港内の身動きが取れない海賊船は標的となり劣勢となっていた。船は砲撃により大破して海賊共は混乱していた。しかしキラーは『砲撃』と『上陸』の2部隊に分けて編制した。百戦錬磨の経験が的確な指示を与えた。

その指示を見た炎の魔術師マッドは、呪文を唱えマシューと同じ魔法『ファイヤーボム』を岸にいる住民達に炸裂させた。一瞬にして数百もの住民を火の海に包んだ。時間稼ぎである。


 炎の中で泣き叫ぶ住民を見て、他の住民が恐怖した。そして恐怖により逃げ惑う住民が出てきた。こうなると収集が付かなくなる。パン管長をはじめ港内関係者が落ち着かそうとするが、恐怖が恐怖を呼んで混乱が収まらない。

 その混乱に乗じて、猛獣海賊団がボートに乗り次々と上陸した。これからは一方的な殺戮の始まりだ。逃げ惑う住民を次々と殺しまくり、死体の道が切り開かれた。

 形勢が変った海賊団は大砲を撃ちまくり住民の死体の山が築いた。

「住民共が、舐めたマネをしやがって。皆殺しだ!」

 キラーも猛獣の本能が出ていた。

その時である、背後から激しい砲撃が飛んできた。住民打つ砲撃とは比べ物にならないくらい強力で正確な砲撃である。


「砲撃だと?バカな?ダガーは何をやっている!」

 キラーは振り返って驚いた。そして目を疑った。

「『ドクロに6本の黒い羽』のマスト…『ルシフェル』だと!『赤毛のブラッド海賊団』!」突然の大物海賊団に、キラーがひるむ。

「停泊をしていた巨大船とは『ルシフェル』という事ですか?通りで準備がいいわけですね」

 あくまで紳士なマッドが分析した。

「こんな大物を殺せるとは、付いていますね私は」

 マッドは炎の呪文を唱え、海賊船『ヒドラ』の上空に超巨大な球状の炎の球を出した。『ファイヤーボム』である。炎の球は『ルシフェル』に向って物凄い勢いで飛んでいった。


 巨大な炎の球が『ルシフェル』に直撃する直前に、港内の『水』が盛り上がり巨大な壁となった。その水の壁が炎の球を飲み込み消滅させた。

「何?どうなっているの?」

 紳士的だったマッドが狼狽した。計算外の事が起きたエリートというのは、頭で考えられなくなるとパニックになりやすいのだ。


 『水』の壁は魔術師マシューによる『水』の絶対防御魔法であった。

「若造が攻撃魔法だけに力を入れて、防御魔法のイロハも知らないように思われる。だから船もボロボロになるのだ。『ルシフェル』が無傷を続けているのはこの絶対防御魔法のおかげじゃ。まだまだ修行が必要だな」

 マシューがスチワートに説明する。

「しかしこれ以上の殺戮は許せないのう」

 マシューは呪文を唱え始めた。すると『ルシフェル』の頭上にマッドが作った『ファイヤーボム』の倍以上もする大きな巨大な『火の玉』が出現した。

「バカな?こんな大きさ?助けて!」

 炎の球を見た、マッドは混乱して我を忘れた。その姿は紳士とは程遠い姿であった。

 その超巨大な炎の球が、『ヒドラ』に直撃して、大爆発と共に沈んで行った。


 その光景を見た住民達は驚きと歓喜と共に息を吹き返し反撃に転じた。

 隣の炎に包まれる『ヒドラ』を見ながら、キラーが絶句した。自分達の爪の甘さが今頃になって分かったのだ。この勝敗を分けたのは、情報量と組織力の差である。突然『港』に攻め来られたら、いかに『ルシフェル』といえども負けていたかもしれない。しかし事前に情報を集めて、敵戦力を分析して作戦を立てた。しかも住民を味方の付けたのである。チームワークも悪く、敵分析も怠った。組織など烏合の衆と一緒なのある。


 『ルシフェル』は船首を『パイソン』船尾にぶつけた。その後、甲板員の『狂戦士』部隊が敵船に乗り込んだ。

 『猛獣部隊』と『狂戦士』部隊の戦いである。戦いは壮絶な殺し合いである。しかしそこに航海士部隊(剣士)が加わり、形勢は有利となった。元々『猛獣部隊』の半数は、上陸しているので人数的には少ないのである。勝負は決した。しかしトップ(船長)を抑えなければならない。スチワートがキラーの前に立った。

「どうした。もう後が無いぞ」

 スチワートがキラーを追い詰めた。

「貴様がブラッドか?予定外だがお前を殺して首をハマーンに献上してやる!」

「残念ながらお前のような『三下』にブラッドは会わない。残念だったな」

 スチワートが凄む。駆け引きだ。キラーは国際第一級に名を連ねる大物である。対局においていかに自分を『有利』に持ち込むかも作戦である。

「おのれ!俺を愚弄するつもりか?肉片の一つも残らず切り刻んでやる!」

 キラーは切れた。スチワート作戦通りである。キラーは手持ちのアックスを両手に構え襲い掛かった。

 早い!スチワートはギリギリかわした。しかし次々と嵐の如く斧が襲い掛かった。スチワートは追い詰められた。

 交わしきれない!キラーの斧が振り上げた瞬間。スチワートは腰から銃を引き抜いた。

 『ドン』「ドン」『ドン』と三発連発した。新兵器『リボルバー』である。単発式の銃が多いこの時代には活気的な武器である。ガラクタからよくこんな新兵器を作るのか?驚かされる。

 銃弾はキラーの心臓と脳天を打ち抜いた。キラーは絶句しながら、斧をスチワートの頭上で手元から離した。そしてそのまま仰向けに倒れた。

 間一髪であった。そこに副砲撃長ニックが駆け寄った。

「大丈夫ですか?隊長!」

「遅いぞニック。死ぬところだった」

 スチワートが笑顔をみせて立ち上がった。

「申し訳ありません。しかし快勝です。」

 スチワートとニックが、炎が上っている港を眺めた。

「快勝とはいえない。大きな被害が出た。」

「しかし彼ら住民が自分達で立ち向かった。それが次に進める勇気となるのだ。勇気の一歩が、また大きな一歩でありそれが一番大切なのだ。」

 炎を眺めながらスチワートがニックに語った。


 自軍の敗戦を知り、猛獣部隊は武器を下ろして投降した。住民達の勝利である。今まで押さえつけられた恐怖からの解放にされた住民は、喜びの歓喜に溢れた。暗闇から未来の光が差し込んだのである。


次回「猛獣達の逆襲」をお楽しみに。


キャスト

ティナ…赤髪に黒い目を持つ少年、この物語の主人公

ブラッド…「赤毛のブラッド」として海軍・海賊に恐れられている。海賊船「ルシフェル」の船長

スチワート…5人衆の一人。砲撃長。最高の狙撃手。新兵器開発が趣味

マシュー…5人衆の一人。通信長兼ドクター。白・黒魔術の最高位の魔術師。趣味の新魔術の研究

ニック…副砲撃長、狙撃手。スチワートと同じで新兵器開発が趣味

ハマーン…鋼の海賊団棟梁。鋼の鎧覆われている。大海賊

キラー(兄)…猛獣兄弟と恐れられている。今はハマーンの傘下に入っている。

ダガー(弟)…猛獣兄弟と恐れられている。兄のキラーが冷静であるに対して、弟は単純である。

マッド…炎の魔術師と恐れられた海賊。今はハマーンの傘下になっている。常に紳士を装っている。



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