第3話 「猛獣会議」
猫王の息子『サスケ』と出会ったブラッド一行は猫の村に訪れる。
そこで旧友猫王『太郎』に会うために猫の村に訪れる。
四大天使の秘宝
〜アーク大陸編〜
第3話「猛獣会議」
港町『ブルトニー』を出てから、丸2日間森の中を歩いて猫族の村『キャッツ』に到着した。町に着くとティナは驚いた。全てが一回り小さい、ミニチュアハウスが立ち並んでいた。しかも町には服を来た猫達だらけだった。お店も立ち並んでいた。
「美味しいツナカンセールやっているよ。今ならお徳パックだよ!」
黒猫の商人が大声かけた。
「こっちはマタタビ1束特売だよ!」
ちょっとポッチャリした、オバちゃんシャム猫が叫んだ。
立ち飲みのバーでは、大柄の虎柄猫が『マタタビミルク』をガブ飲みしていた。
「凄いよ、猫の村!」
ティナは初めての体験でテンションが高くなっていた。
「当たり前の光景ニャ」
サスケが突っ込む。
「でもすべてが不思議だよ」
ティナが言って皆が笑った。ゴルディバとゴンゴが抱きつきたいのをウズウズしながら我慢していた。ティアナにクギを刺されていたからだ。
村の奥に進み、猫族の城に辿り着いた。そこの宿舎に荷物を置き、王座の間に出向いた。
「猫王太郎様が参られました」
側近の掛け声と共に付き猫に連れられて『太郎』が現れた。
「久しぶりだニャ〜ブラッドと友人達よ」
太郎が声をかけた。サスケと一緒でアメリカンショートヘアの老猫であった。
「久しぶりだな。太郎。体調が優れないようだな。毛並みが悪くなっているぜ」
ブラッドが呼び捨てにしているので側近が怒ったが、太郎が制した。
「ブラッドよ、ワシは歳を取った。もう後何年も持つまい。しかし今『鋼の海賊団』が森を荒らし一大事。寝てもおれん。そんな時にお主達が来たニャ。あの時のように…。何かの導きかもしれん。もう一度ワシらを助けてはくれぬか?」
「その為に俺はここに来た。お前達も協力してくれ。拠点をここに置いて、後は情報が欲しい。飯は『猫マンマ』以外でお願いする」
ブラッドが要求した。
「すまない。そちらの要求は全て受けよう。全面的に協力する。しかし『猫マンマ』は美味しいニャ」
太郎が突っ込む。
「出来ればツナカンにして欲しいな」
ブラッドが要求した。この会話はある意味笑える。
「明日。この森一帯の動物達が集まる『猛獣会議』が開かれる。天敵の犬族や狐族なども加わり、肉食動物・草食動物全ての王達が会議に出席をする。この会議で森の種族を全ての総力を上げて『鋼の海賊団』と戦うかどうか?決議を行うことになっている。ワシはもう動けんからサスケが代わりに出席する事になった。サスケは若いが、王たる資質は我輩以上だと思っている。この会議に一緒に付いていって欲しい。情報も手に入るだろう」
太郎はブラッド達にお願いをした。
「わかった。太郎の願いは断れないだろ」
ブラッドは太郎を見ながら笑った。
「よし今宵は宴会をやるニャ。夜中まで語らい会おう。ちょうど二十年物の『マタタビ酒』が手に入った。美味しいニャ」
太郎は久しぶりの友人との再会に喜んでいた。
宴会はやはり夜中まで続いた。『猫マンマ』はやっぱり出たが、ツナカンや川魚に鳥などが出た。ちゃんと人間に合わせて調理してくれていた。マタタビ酒は人間には余り効果が無いが、アルコール分が入っているため少し酔う事が出来た。ゴルティバとゴンゴは、お酌をしてくれていたメスのペルシャ達に興味身心だ。二人には可愛すぎて、ここは夢の世界であろう。
「元々ブラッドが助けてくれた村だ。遠慮せずに飲んでくれニャ」
太郎が上機嫌で話した。
「ブラッド達は、この村で何をしたの?」
ティナは暇そうに果物を食べているティアナに聞いた。
「昔、まだブラッドの名前が余に広まっていない頃に、私達はアーク大陸に寄ったの。そしてポートギース領のブルトニーに入港したわ。そこには沢山の商船が止まっていた。その殆どが動物を自分の国に密輸する、ハンターばかりだった。アーク大陸には元々先住民が住んでいたけど、二百年程前に西方の4王国がアーク大陸を占領してしまった。その時に殆ど殺されてしまったの。生き残った者は奴隷ね。その奴隷に案内させて、ハンター達は森の動物達を次々と殺したり捕まえたりして行ったわ。猫族だけじゃなく、他の種族もね。太郎も銃弾を浴びて死にかけていた。それを助けたのはブラッドだった。ブラッドは他の動物達に人間というだけで殺されかけたけど、説得して共にハンター達と戦うことにした。その時に開いた会議が『猛獣会議』。そしてブラッドは自ら先頭に立ち、近代兵器を使い絶対的有利なハンター達に立ち向かった。銃弾や砲弾を次々とかわして、ハンター達を倒してついには追い返してやった。それ以来ブラッドはこの森の動物達の英雄なのよ」
ティアナは説明してくれた。
「猫族だけでなく、他の動物も喋れるの?凄いね」
「因みに『赤毛のブラッド』の異名はこの時付いたのよ。嵐のような弾丸をかわしながら、ハンター達を切り裂いた。その時の返り血を浴びたブラッドの髪を見て、ハンター達は『赤毛』と勘違いしたのよ。逃げ帰ったハンター共が西方に帰り、ブラッドの噂を流した。勿論ハンターが歪めて作った悪評よ。私達が西方の国に帰った頃には、『赤毛のブラッド海賊団』として国際第1級指名手配犯となっていったの」
ティアナの説明を聞いて、ティナは同じ人間が許せなかった。それと同時に同じ人間のブラッドを誇りに思った。
「ティアナありがとう。俺も戦うよ。そしてこの森を平和にするんだ!」
ティアナはそんな小さな決意を微笑みながら眺めていた。
次の日の昼に一行は二日酔いで頭を抱えながら村を出発した。
『猛獣会議』は、森の中の古代遺跡『コロセウム』(闘技場)で行われた。鋼の海賊団が発掘している『イサーク遺跡』に程近い場所である。見つかるのでは?と思ったが、これは動物達の挑戦状でもあるのだろう。彼らの決意を感じられた。
ブラッド一行がコロセウムに付いた頃には、続々と各動物の王が集まってきていた。
「凄いよ。キリンに馬に猿や狸。色んな動物が集まっている。露店も一杯あるよ」
ティナが目を輝かしていた。
「ブラッドちょっと見てきていい?」
ティナがブラッドに頼む。
「分かったよ。会議まで時間があるから行って来い。ただ遅れるなよ」
「ありがとうブラッド!」
ティナが喜んだ。しかし何故かゴルディバとコンゴが付いてきた。
「美味しいホットドックあるよ!」
犬族の兄ちゃんが鉢巻きをして売っている。
「草食動物の方に特製野菜スティック売っているよ!」
ヤギが摘み食いをしながら売っていた。
串カツを売っている、牛に豚が文句を言っていた。もう祭りである。
「きゃ〜可愛い。アライグマ!」
巨体男に抱きつかれてアライグマは迷惑していた。
「可哀想だよ〜アライグマが〜ゴルディバ・コンゴ」
「まあ彼らの無邪気さが、またいいのですよ」
遅れてヒューベリックが付いてきた。
「ヒューベリックも来てくれたの?」
「ブラッドが不安だから付いていってくれてね」
その時ヒューベリックの携帯通信機『doumo』に着信があった。潜入している劉からである。
劉 はマシューより、携帯通信機を預かっている。バッテリーに魔力を蓄積させて動かすことが出来る。弱点は、魔力が切れやすいのと、通信範囲が狭いということである。劉は極力連絡を抑えている。
「もしもし劉コック長、ヒューベリックです。ブラッド船長は今近くにいません」
「分かった。こちらは奴隷に扮して、遺跡に潜入している。奴隷となっているのは、千人程の人間に、数百の動物達。それに海賊団は五百名ほどいる。他は船にいるのだろう。我々だけでは数が違いすぎるぞ」
「分かりました。ブラッド船長には説明しておきます。我々もこの森の動物達に協力をお願いしております」
「こちらはそんなに連絡出来ない。そちらからの連絡も控えた方がいい。大きな情報が分かったらこちらから連絡する」
劉が指示をした。
「分かりました。ブラッド船長に伝えておきます。気を付けて下さい」
ヒューベリックは電話を切った。
「ブラッド船長に報告する」
ティナとヒューベリック、そして遊びたらなそうなゴルディバ・ゴンゴ兄弟が会場に向った。
会場にはもう沢山の種族の代表が集まっていた。ブラッド達を見つけるのも一苦労である。ようやくブラッドとサスケ達を見つけて、劉からの報告を伝えた。
「わかった会議が終わったら少し作戦を練らないとダメだな。そろそろ会議が始まるぞ」
円形のコロシアムの中央の闘技場に、五つの巨大な椅子が置かれていた。そこに五人(五匹)の王が現れた。肉食動物代表『ライオン』と『虎』、草食動物代表『サイ』、霊長類代表『ゴリラ』、鳥類代表『鷹』である。彼らは各種族の王でもある。鷹だけは椅子が大きそうである。
「我々猫族はいつも『トラ族』についているニャ。同じ猫科だからニャ。天敵の犬族は『ライオン族』についているニャ。今彼ら五王が森の統制をいるニャ」
サスケが説明する。
「これより『猛獣会議』を始める!」
議長の『獅子王』が号令をかけた。同時に会場が歓声に包まれた。
「我々の森は再び、人間どもに荒らされてきている。しかも海賊共だ。再び沢山の同士が死に絶えている。今も奴隷となり、奴らに働かされている同士は数百もいる。それでいいのか諸君?」
ライオン王の声が闘技場をこだました。それと同時に、再び会場から歓声が広がった。
「やつらライオンは自分達の餌が無くなっているから吠えているだ。草食動物もたまったものじゃないニャ。サイや象などがいるからまだ大人しいけど、シマウマやヤギや羊は彼らの声を聞いただけで怖がっている。どっちが敵か分からないニャ」
サスケが毒づく。ここではマズイだろう?とティナは思ったが、サスケは気にも止めていなかった。
「しかし敵は最新兵器などを使って武装している。我らだけでなんとかなるものかどうか?」
サイ王が意見をいう。
「ふん。臆病者の草食動物など当てにはしておらぬ」
獅子王の一言で会場の草食動物が騒ぎだす。
「しかし計画も無しに突っ込んで行っては奴等の格好の的である。作戦を練らねば。犬死では喜ぶのは死骸を突っつくカラス族のみだ」
頭のいい霊長類のゴリラ王がその場を押さえる。
「カラス族だけにくれてやるのは勿体ないな」
鷹王がフォローする。
「編隊を組織して、森の中に誘い込み奴等の近代兵器の威力を半減させて、そこを襲うのはどうだ?」
虎王が進言する。
「兵を分断して、数を減らしてどうする。セコイ猫が!」
獅子王の一言で、虎王が牙をむいた。
「俺様を侮辱するのか?」
虎王が咆哮する。そこをサイ王とゴリラ王が納める。
「ここで争ってどうする。争うのはこの森から人間共を追い出してからだ!」
鷹王が大声で一喝する。コロセウムが静まり返った。その時である、会場の中から一人の人間が階段を下りて闘技場の真中まで歩いてきた。『ブラッド』である。ティナは息を呑みこんだ。食べられちゃう!
「どこから入ってきた人間よ。我らに降伏して食べられにきたか?」
獅子王が吠える。
「ガキの喧嘩がバカバカしくてね。ツイツイ下りてきてしまった。『レオ』は子供の躾を忘れたのか?」
ブラッドが獅子王を睨み付ける。
「何故オヤジの名を知っている?」
「お〜お前はブラッド。我らの為に戻って来てくれたのか?」
鷹王がブラッドに話しかける。
「久しぶりだな。ホーク。歳を取ったな、こんな若造に手を焼くとは」
ブラッドが笑顔で鷹王に答える。鷹王の一言で会場が騒然となった。
「あの英雄ブラッドか?」
英雄の突然の登場に会場が歓喜とかした。ブラッドコールが鳴り止まない!
獅子王も口を慎んだ。その会場が静まるのを待って、ブラッドが「五王」に話しかけた。
「今回の件は、鋼の海賊団という悪名高い人間達の仕業だ。この件は俺達が処理をする」
ブラッドの言葉に会場がまた歓喜の声に包まれた。
「しかしこれは俺達森に住むものと人間との戦いだ。英雄だろうが口をださせん!」
獅子王が咆哮と共に会場を鎮めた。
「なら少しの時間をくれ。その間に俺達が奴等を始末する。その後、もし俺達が負けたらお前達が戦えばいい。人間同士が殺しあうのだ、文句はあるまい」
ブラッドが獅子王以上の気迫で押し戻した。
「ただ、数が違いすぎる、最後には兵を動かして欲しい。お願いする」
今度はブラッドが頭を下げた。
「ならば決議しよう。英雄ブラッドの意見に賛成の者は挙手をお願いする」
最年長鷹王が先導した。『4対1:』獅子王以外は賛成に回った。
「多数決により、鋼の海賊団との対決は一時、英雄ブラッドに託す。以上!」
鷹王の言葉に会場は歓喜の渦とかした。
ティナやサスケ達が、コロシアムの中央に駆け寄る。その時、怒りを我慢している獅子王にブラッドが近付いていった。回りの者全てが固まった。怒りに震える百獣の王に近付いているのだ。一発で殺されてしまう。皆息を飲み込んだ。会場は歓喜に包まれているが、その回りの空間だけ時が止まったように音が無くなっていた。
「獅子王よ、父レオは元気か?」
ブラッドが声をかける。
「父は昨年殺された。鋼の海賊団共に!皆を守る為に、鋼の軍団に一人で戦いを挑み殺された。身体に何十もの剣を突き刺されて…。そして俺達の目の前で切り刻まれた。父は俺達に『生きよと』言った。だから俺はこの爪でこの牙で、奴等を八つ裂きにしたかった!」
獅子王は苦しんでいたのだ。
「そうかレオは逝ったか!?また大切な友を失ったな…」
ブラッドが獅子王の背中をさする。
「レオは『生きよ』と言ったのであろう。それはお前を一人助けたくて言ったわけでは無い。お前を王として認めたのだ」
「どういうことだ?」
獅子王がブラッドに問いかけた。
「レオは自分が死んでも、お前が王としてライオン族を、そしてこの森に住む全ての生き物を守る『百獣の王』の称号を継げると信じて『生きよ』と言ったのだ。お前だけを守ったのではない。新しい『王』を守り、この森をお前に託したかったのだ。俺が知っている『百獣の王レオ』はそんな男だ」
ブラッドは語りかけた。獅子王の瞳から涙を溢れた。
「一緒に戦おう!!」
ブラッドの一言で、獅子王の決意が固まった。
「ブラッドと一緒にいると心臓が何回止まるか分からないな。百獣の王に説教たれる奴なんて初めてみたニャ」
ブラッドが皆の元に戻るとサスケが疲れたように言った。
「あら私達なんて毎日よ。まあそんなところが好きなのだけど」
ティアナがのろけた。
「こいつは昔からトラブルメーカーだからな」
旧友バージがブラッドの肩を組んだ。
「でも凄くカッコよかったよ」
ティナは大はしゃぎである。
「よし今日はパーと宴会とするか」
ブラッドが笑いながら提案した。
「『今日も』の間違いでしょう?」
ティアナが突っ込んだ。
「そうだっけ?」
ブラッド一行は笑いながら歓喜に包まれるコロセウムを後にした。
その一行を黒い影の集団が森の中から監視していた。ブラッド達がコロセウムを後にすると、黒い集団は森の中に消えていった。
次回「ブルトニー港海戦」お楽しみに。
キャスト
ティナ…赤髪に黒い目を持つ少年、この物語の主人公
ブラッド…「赤毛のブラッド」として海軍・海賊に恐れられている。海賊船「ルシフェル」の船長
ティアナ…海賊船ルシフェルの副船長兼経理担当。森の種族「エルフ」にしてブラッドの妻
バージ…5人衆の一人。ブラッドの幼馴染。一等航海士として舵を任されている。最強の剣士
ゴルディバ…5人衆の一人。甲板長。巨漢ながら性格は温厚。ただし戦いの時は狂戦士となる
劉…5人衆の一人。コック長。武術の達人。その正体は、シン国の皇太子。
スカー…二等航海士、バージの弟子。槍術の達人
ゴンゴ…副甲板長、ゴルディバの弟。兄と同じ巨漢で狂戦士。可愛い動物、甘い物には目がない。
ヒューベリック…ドクター助手。白魔法・薬学の権威。
テル…ジャンパー国 天皇直属の忍 ティナと友達になる。赤毛のブラッド海賊団のコックとなる。
サスケ…猫王太郎の息子。猫族の王子。側近・・・五右衛門・八兵衛
太郎…猫王。ブラッドの戦友でもある。
五王…『獅子王/シンバ』、『虎王/猛虎』、『鷹王/ホーク』、『サイ王/パティオ』、『ゴリラ王/コング』