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第2話 「大地の国 アーク大陸」

ようやくアーク大陸にたどり着いた『赤毛のブラッド』海賊団であるが、思いがけぬ強敵の影がアーク大陸を覆っていた。


これから彼らの壮絶な戦いが始まる。

四大天使の秘宝

〜アーク大陸編〜


第2話「大地の国 アーク大陸」


 深い霧に覆われていた。海賊船『ルシフェル』がアーク大陸を発見してから、十五時間がたっていた。対岸沿いに東に船を走らせた。ポートギース領キングスランドの港町『ブルトニー』に向っていた。アーク大陸は肥沃な大地が多く、森や人の住む地域は限られている。だから直ぐに上陸せずに、人が住んでいる『ブルトニー』に向っているのだ。

 アーク大陸はガニーシャ大陸西方の国々が、先住民を追い払い侵略して現在は四つの領に分けられている。『ポートギース領キングスランド』『オータン領グリーズ』『ブルツ領ロックウェル』『イリア領サウスロック』である。アーク大陸は森が密集した地域と肥沃な大地がある地域と分かれる。『ポートギース領キングスランド』と『オータン領グリーズ』は森に囲まれた地域で豊富な資源に囲まれている。『ブルツ領ロックウィル』と『イリア領サウスロック』は、自然の資源は殆ど無いが、石炭などのエネルギー資源が沢山取れている。どちらの方が、利益になっているのかはまだ分かっていない。


 入港する頃には明け方になっており、港には深い霧に覆われていた。しかし貿易が盛んなこの港は、二十四時間体制で入港が大丈夫なのである。ブラッドは湾内に船を進めた。

 霧が深いため、湾入口の両サイドの灯台の明かりをたよりに湾内の港へと向っていった。

 しかし様子がおかしい。いくら明け方とはいえ、静か過ぎる。クルー全員に緊張が走った。

 港が目前に見えてくると、霧の中からルシフェルを取り囲むように松明の炎が一成に上った。

「囲まれている!」

 ブラッドがクルーに警戒を促した。

 少しずつ霧が晴れて行くと、そこには武器を構えている、住民たちが船を囲んでいた。


「海賊達はこの港から出て行け!」

 住民の一人が代表して大声を出す。

「俺たちは補給に来ただけだ!」

 ブラッドが説明をする。

「嘘をつけ奴等の仲間だろう。騙されないぞ!」

「奴等?奴らとは誰だ?」

「しらばっくれて、鋼の海賊団ハマーン一味だ!」

 住民たちがはき捨てるように言った。

 聞いたことのある名だ。この辺一帯を縄張りにしている、悪名高い海賊団である。ブラッド自身は海域が違うので会ったことは無いが、評判は聞いている。

「ブラッドこの住民など直ぐに蹴散らせる。それで一旦引いてはどうだ?」

 一等航海士バージが提案する。住民の群れなど赤毛のブラッド海賊団には赤子の手を捻るようなものだ。

「いや住民を傷つけるわけにはいかない」

 ブラッドが困っているところに一人の老人が住民達に声をかけた。

「待ちなさい。彼らは敵では無い。武器を下ろしなさい」

「しかし管長、奴らが何者か分かりません」

「分かっておる。彼らは我らの恩人じゃ」

「パンじぃ。生きていたか?」

 ブラッドが懐かしそうに答える。

「パンじぃではない。パン管長じゃ」

 パン管長はニヤッと笑う。


 港の管理室の一室にブラッドとティアナとバージは通された。すると直ぐにパン管長がやってきた。

「パンじぃがこの港を管理する管長になっていると思わなかったよ」

「はははブラッドも久しぶりだな。他のお二方も元気そうで何より」

 ティアナとバージが頭を下げた。

「十数年ぶりだな。ワシが生きている内に来てくれて嬉しいよ」

「俺はとっくにくたばったと思っていたよ。しかしこの港の異変は何だ?」

「相変わらず口の減らない男だな。ははは実は1年ほど前に大海賊団『鋼のハマーン』一味が港に押し寄せ、この港を荒らして行った。最初は海軍も対抗したが、全滅させられた。もう海軍の援軍も来ないようになった。奴らはそれをいい事に、住民の若者を殆ど連れ去り、森の奥深くに行ってしまった。今でも何ヶ月に一回、また若者を徴収しに来るのさ。我らはもう耐えられなくなり、奴等と戦うことを決めた。その時にお前さんたちが現れたのじゃ」

 パン管長が説明した。

「ハマーンか〜やっかいな相手だな。森の奥には何があるのだ?」

「この森の奥には、このアーク大陸の先住民が築いた遺跡がある。イサーク王朝時代の遺跡だ。今から千年程前に栄えた文明なのだが、そこには王家の財宝が眠っているという伝説が先住民の中で残っている。その財宝を目当てに、住民を使って遺跡を掘り返しているようじゃ」

 ブラッドは話を聞き終えて、ちょっと間をおいて話し出した。

「ハマーン達は俺らがやっつけてやる。そのかわり遺跡のお宝は頂くぜ。それでどうだ?」

 ブラッドは提案した。ハン管長は少し考えて答えた。

「すまない。またお前達に迷惑をかけるな」

「お宝の為さ。あんたらは関係ない」

 ブラッドはテレながら答えた。



 港ではまだ上陸を許可されていなかった。そこへブラッドとティアナとバージが帰ってきた。

「上陸の許可が下りたぞ!」

 ブラッドがいうとクルーは喜んだ。1ヶ月ぶりの陸である。嬉しいはずだ。

 ブラッドは幹部達を集めて作戦会議を開いた。その間クルー達は自由行動である。ティアとテルも町に出た。


 会議にはブラッドとティアナそして五人衆が出席した。

「という訳で、鋼の海賊団ハマーンをぶっ潰す。いいな!」

 ブラッドが説明した。

「しかし、鋼の海賊団の噂は知っているだろう。五隻の巨大船団を引き連れ、そのどの船長も一級の海賊だ。まともに遣り合えば分が悪いぞ?」

 砲撃長スチワートが言う。

「五人衆一人で一隻だな」

 ブラッドが押し付ける。

「オイオイ勘弁してくれ。一隻に百人〜二百人はいるぞ。それに鋼の海賊直属の鋼の軍団は、どんな武器も魔法も通じないらしい。どうする?」

「鋼の軍団の鎧には、防御魔法が施されているのだろう。それ以上の魔力を持った者が、鎧を壊せばよい。もしくはこちらも武器に魔法を掛ければよい」

 大魔術師マシューがいう。

「まあ情報収集が先だ。俺もまともにぶつかる気は無いからな!」

「まずは少数で遺跡を調べる。パーティーを作るぞ。俺はティアナとバージとゴルディバとそれにヒューベリックを連れて猫族の猫爺に会いに行ってくる。バージとゴルディバはそれぞれ数名選抜してくれ。りゅうは数名を連れて遺跡に潜入してくれ」

 バージとゴルディバとりゅうは頷いた。

「スチワートとマシューは待機、船もマストをたたんでなるべく目立たないようにしてくれ。海賊が現れたら住民を守って、奴等を叩いてやれ。港での遊びは『ほどほど』にな」

 スチワートとマシューが頷いた。まあ陸に上った海賊が『ほどほど』にするのは大変だが…お金も使うから何とか住民は許してくれるだろう。

「出発は明朝にする、選抜・準備を済ませるように。解散!」

 会議が終了した。



 テルは初めての海外に興奮していた。完全に観光客になっていた。

「凄いや全然文化が違うね。見たことも無い物ばかりだ。皆目が青いし髪は金髪だ!」

 ティナは当たり前だろう?と思いながらテルと行動していた。

 その時である、広場の方で人だかりが出来ていた。『喧嘩?』クルーの誰かがまた暴れているのかな?と思い広場に駆けつけた。


「このくそ『猫』の分際で、俺達をバカにしやがって皮を剥いで店に売り飛ばすぞ!」

 3人の大男達が喚いていた。しかしその相手は少し大きめの『猫』である。しかも両足で立っていた。

「ふん。人間が偉いとは思わないが、お主達は特に小人に見える。早くそこの子供に謝るニャ」

 猫が答えた。どうやら子供に言いがかりを付けた大男達を見て、猫が子供を助けたようだ。

「猫が喋っている?しかも派手な赤服にマントを付けて立っている。刀も持っている。やっぱり外国は凄いや」

 テルが大声で興奮して話している。外国でも珍しいぞ?とティナは思った。テルとティナが騒いでいると、猫の耳がピクンと動いて後ろを振り返った。

「誰だ?俺をバカにしているのは『猫族』を知らんとはどこの田舎もんだ?」

 猫はテルとティナを睨み付けた。

「いや、その海外初めてなので。ご免なさい」

 テルは謝った。

「このくそ猫がバカにしやがって無視か!」

 無視された大男達が、猫に後ろから襲い掛かった。

「危ない!」

 ティナとテルが大声を上げた瞬間、猫は飛び上がり、反転して大男達の攻撃をかわした。そして指先から「キラン★」と光る爪を出し、大男達の顔を『ニャニャニャニャ〜』と掻き毟った。

 大男達は呻き声をあげた。キズだらけの顔を抑え、大男達は『覚えていろよ!』と捨て台詞と共にその場を逃げていった。

「ネコさん凄い!」

 テルとティナは褒めまくった。

「あんな図体がデカイ人間など俺様には楽勝ニャ」

 猫も褒められて満更ではないようだ。

「僕ティナこいつはテルです。あなたは誰ですか?」

「俺は猫族の・・・」

 と名前をいいかけた時、遠くから大声を出しながら駆けてくる二人の巨人が迫ってきた。

「太郎!」

 ゴルディバとゴンゴが、まるで我が子のように抱きかかえ、頬ずりしまくった。

「た・ろ・う?」

 ティナとテルはお互い顔を見合わせた。どうみてもその猫は現代でいう、銀の虎毛のアメリカンショートヘアである。しかもアーク大陸でジャンパー風の名前にビックリである。

「太郎はオヤジの名前ニャ。俺はサスケニャ」

 物凄い勢いで嫌がっている、しかしサスケに小動物好きの巨人二人は離れない。

「そうか!息子か〜息子もカワイイな〜♪親父殿は元気か?」

 ティナとテルはサスケが可哀想になってきた・・・。

「無礼者。王子から離れろ!」

 後ろから二人(2匹?)の茶色の虎毛の猫が剣を抜いて現れた。

「王子?」

 ティナとテルがまた顔を見合わせた。

「いやスマン。ツイツイ太郎だと思って感動して抱きついてしまった」

猫王みょうおう様を呼び捨てとは貴様何者だ?」

 側近の猫が威嚇する。

「昔の知人だよ。」

「もうよい五右衛門・八兵衛」

 サスケが止める。もうティナもテルも名前が和風なのは突っ込まなかった。

「この者は昔猫族を人間のハンター共から救って下さった。恩人だ。私も小さかったが覚えている」

「あの時の子猫か〜覚えているよ〜♪大きくなって!」

 サスケに二人が抱きつこうとした時に、『サッ』と今度はかわした。

「お主達は今回何をしにきた?」

「鋼の海賊団を倒しに。そして明日猫族の王『太郎』に会いに、俺達の船長ブラッドと一緒に猫族の村に行く予定だ」

 ゴルディバがさっき決まった。予定を話した。

「何?しかし今親父は病に伏せている。面会が出来るかどうか?」

 サスケが暗い表情で話した。

「ならばお見舞いに行かねば。明日ブラッド達と共に行こう。今日は船に泊まっていきなさい。ブラッドも歓迎するだろう」

 ゴルディバが誘った。猫達は拒んだが、『マタタビ』が沢山あると言ったら誘惑に負けて船に泊まることになった。



 船ではブラッドがサスケ達を大歓迎して直ぐに宴会になった。猫達もマタタビミルクで大いに酔っ払い盛り上がった。

「そうか。太郎の容態が悪いのか?」

 ブラッドが悲しんだ。猫族は普通の猫の寿命より数倍生きられるようだが、太郎は歳なのだろう。

「我が猫族は人間共のハンターと戦って、大半が傷ついていたニャ。我らは人間を恨んでいたニャ。しかし、お主達が助けてくれて人間を信じるようになった。我らが人間の町に来るようになったのもお主達のおかげ。お主達は猫族では英雄となっているニャ」 

サスケがマタタビで酔いながら話す。

「俺も太郎に会えてよかった。もう一度会いたいよ」

「今は問題が多い。今度は鋼の海賊団が現れて、森を荒らしている。俺達は戦おうと思っているニャ」

「その鋼の海賊団は俺達が倒す。その為にも太郎と会わなければならない」

ブラッドは優しくサスケに答えた。宴会は夜遅くまで続いた・・・。


翌朝、ブラッド・ティアナ・バージ・スカー・ゴルディバ・ゴンゴそれにティナが、サスケ達と猫族の村に向った。テルはりゅうと共に、遺跡の潜入にあたった。テルがティナを羨ましがったのは言うまでもない。


次回「猛獣会議」をお楽しみ。

キャスト

ティナ…赤髪に黒い目を持つ少年、この物語の主人公

ブラッド…「赤毛のブラッド」として海軍・海賊に恐れられている。海賊船「ルシフェル」の船長

ティアナ…海賊船ルシフェルの副船長兼経理担当。森の種族「エルフ」にしてブラッドの妻

バージ…五人衆の一人。ブラッドの幼馴染。一等航海士として舵を任されている。最強の剣士

ゴルディバ…五人衆の一人。甲板長。巨漢ながら性格は温厚。ただし戦いの時は狂戦士となる

スチワート…五人衆の一人。砲撃長。最高の狙撃手。新兵器開発が趣味

マシュー…五人衆の一人。通信長兼ドクター。白・黒魔術の最高位の魔術師。趣味の新魔術の研究

りゅう…五人衆の一人。コック長。武術の達人。その正体は、シン国の皇太子。

スカー…二等航海士、バージの弟子。槍術の達人

ゴンゴ…副甲板長、ゴルディバの弟。兄と同じ巨漢で狂戦士。

テル…ジャンパー国 天皇直属の忍 ティナと友達になる。赤毛のブラッド海賊団のコックとなる。

サスケ…猫王太郎の息子。猫族の王子。側近・・・五右衛門・八兵衛


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