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第1話 「四大天使物語」

黄金の国「ジャンパー」を出港した海賊船『ルシフェル』は一路南下、アーク大陸へと向っていた。

航海の途中の船内、ティナとテルの会話から『四大天使』の謎が語られる。

四大天使の秘宝

〜アーク大陸編〜


第一話「四大天使物語」


 『ジャンパー』を出港した海賊船『ルシフェル』は、マストを広げ風に乗り南下していた。『ジャンパー』を出港して一ヶ月が立っていた。

 『ジャンパー』から乗船するようになったテルは、りゅうのいるコック場で働くことになった。元々手先が器用である。すぐに戦力となり、コック場で可愛がられた。特にりゅうは、同じ東方の民族であるテルが可愛いようだった。忍であるテルは、体術も優れていての呑み込みが早く、りゅうの拳法教室でもすぐに慣れていた。


「凄いよテルは。料理もすぐ出来て、りゅうに武術まで教えてもらって、羨ましいよ」

 マストの上でワッチ(監視)をしているティナが呟く。テルがマストの上まで上がってきて遊びに来たのだ。

「そんな事無いよ、料理の腕はまだまだだし、『拳法』だって奥が深い。自分が未熟だった事を知らされたよ。しかし俺から見たら、ティナの方が羨ましいよ。あのブラッドとバージから直接剣術を学んでいるのだから。普通ないよ、こんなスペシャル講師」 テルが逆にティナを羨ましがる。

「ブラッドとバージは元々同じ村で育ち、同じ剣術を習ったのだって。でも得意技が違う、ブラッドは二刀流だし、バージは突き。だからバージが教えているところに、ブラッドがたまに来て教えてくれるのさ。ブラッドは暇つぶしだろうけどね」

「それでも凄いよ。天叢雲剣あまのむらくものつるぎを使ったとはいえ、あの八岐大蛇を倒したブラッドに直接教えて貰うなんて贅沢だよ」

 テルが羨ましがる。そういえば殆どのクルーがブラッドに教えて貰っていない。やっぱり特別なのかな?と思うとティナは嬉しくなった。


「ところで『四大天使の秘宝』ってなんだ?『三種の神器』は違ったのだろ?」

 テルが疑問に思っていた秘宝の事を聞いてみた。

「そうかテルは知らないよね。『四大天使の秘宝』は俺たちが信仰している宗教の中で、西方の民に語り継がれている伝説だ」

「今から2千年以上も前の発見された石碑に書かれていた伝説だよ。それが聖書となって語り継がれている。昔『神』に仕える天使の中で、最上位に位置していた五人の天使がいた。五人の名は『ルシフェル』『ミカエル』『ガブリエル』『ラファエル』『ウリエル』と呼ばれていた。その大天使の中で司令官として最高位にいたのが『ルシフェル』なんだ」

「ルシフェルってこの船の名前と同じだね。何か関係あるのかな?」

 テルが聞く。ティナは分らないよ。と答え話を続けた。

「ルシフェルは六本の大きな白い翼を持ち、神の使いでありながら神と同等の力を持っていたと言われていた。他の大天使達も彼を兄のように信頼して尊敬していた。そしてルシフェルは全ての天使を纏めて世界を平和に納めていたんだ」


「カッコイイね。ルシフェルって」

 テルは物語にワクワクしていた。ティナは笑顔になったが、ふと暗い表情になって、海の水平線を見ながら続きを話し出した。


「そのルシフェルが、突然闇の奥深くに住む、闇の住人『悪魔』の軍勢を引きつれ『神』に反旗を翻した。理由はわかっていない。しかしルシフェルは仲間である天使達を次々に倒し、ついに『神』に手をかけようとたんだ。ルシフェルは悪魔王『サタン』と名をかえ、白く鮮やかな六本の天使の羽は黒い羽根と変わっていた。『堕天使』となってしまった。ルシフェルが『神』の息の根を止めようとした時に、彼を止めたのが元同僚だった、『ミカエル』『ガブリエル』『ラファエル』『ウリエル』の四大天使だ」

 ティナの話をテルは、ごくりと唾を飲み込んだ。

「四大天使は元々ルシフェルの副官である。彼の強さを一番知っているのが、四大天使だった。だから彼らはルシフェルに勝てないまでも封じる事にした。彼らの戦いは十日間続いたとも言われる。大地は裂け、嵐や雷がこだました。地形も変わってしまったらしい。その凄まじい戦いの中、一瞬の隙を見つけて、四大天使は結界を張り悪魔軍と共にルシフェルを地獄へと封じ込める事に成功したんだった」

 ティナの話を聞きながら、息をするのを忘れていたテルは、ふぅ〜と息を吐いた。

「四大天使はルシフェルの復活を怖れ、自分の分身を形にして地上に使わした。悪魔たちを封印するために。その分身が東の『ミカエル』の『炎の剣』、北の『ガブリエル』の『水の槍』、西の『ラファエル』の『風の弓』、南の『ウリエル』の『地の盾』なんだ。ルシフェルを封印するための結界の為に、そしてもしルシフェルが復活した時に対抗出来る唯一の武器として。それが四大天使の秘宝だ」

 ティナは一気に話した。

「凄い話だな。ドキドキしたよ!」

 テルが興奮して話した。

「まあ二千年以上も前に発見された。石版に書かれている事だから、どこまで本当か分らないけど、僕たちは石版に書かれた言葉を写した『聖書』を子供の時から読んで過ごしたんだ」

「でも何で『四大天使の秘宝』と言われているんだ?」

「初めは西方の国々を司祭や信者が探し回った。悪魔から保護するためにね。でも見つからなかった。しかしここ数百年で大航海時代を迎えた。探す範囲が世界中となった。いつしか冒険家や海賊がお宝と位置付けてしまったんだ。『四大天使の秘宝』ってね。一つ手に入れられたら、国を丸ごと買う事が出来ると言ってね。しかし誰も見つけることが出来なかった。いつしか探す冒険家や海賊も殆どいなくなり伝説の宝物になってしまった」

「そうか。その『殆ど』の一つが『赤毛のブラッド』海賊団だね」

「でもその四大天使の秘宝は封印なのだろ?それを解いてしまうと堕天使ルシフェルが復活してしまうじゃないか?」

 テルが首を傾げながらティナに聞いた。

「えっ?そういえばそうだよね?そこまで考えてなかったよ」

 ティナが困惑して答えた。

「まあ伝説だからな?」

 テルが笑いだした。

 しかし、ティナに不安がよぎった。ブラッドはなんで四大天使の秘宝に拘るのだろか?『ルシフェル』ってどうして名付けたのだろう?気になってしまった。


 夕陽を見ながらブラッド船長はブリッジの上で考え事をしていた。その隣にティアナが来て佇んだ。

「どうしたの?何か考えごと?」

 ティアナはブラッドに聞いた。

「いや何でもないよ。夕日が綺麗だなと思って、それに久々にアーク大陸に行けるからな。楽しみでね。ワザワザ東方まで来たからな。もう行けなかったかも知れないし」

「本当かしら?」

 ティアナが疑わしい目でみる。

「本当だよ。あそこには珍しい動物や生き物がいる。今度はどんな発見があるか楽しみだ。今回は動物好きのゴルディバ・ゴンゴ兄弟を連れて行かないと怒るよな」

「ゴルディバ・ゴンゴのあのデカイ体に抱き付かれたら、動物もビックリするでしょうね」

「最初は怖がるけど動物は感覚で分かるのだよ。人の優しさが…。ティアナも久々の森だからゆっくりして行きなよ」

 ブラッドが森の種族エルフのティアナを気遣う。

「そうさせてもらうわよ。珍しい植物があったらもってこなきゃね。ブラッドも早く入りなさいよ、風邪引くわよ」

 ティナはブラッドと話をして、寝室へと戻って行った。

「ああ」ブラッドは夕陽を眺めた。その瞳は深い苦しみに彩られていた。彼の右の手首には黄金に輝くブレスレットが、夕日に輝いていた。そこには『逆十字』が描かれていた。


 一週間後、サロンでティナは航海士のクルー達と夕食を食べていた。

「美味しい。これジャンパーの料理?何て名前なの?」

 ティナがフルーツを運んできたテルに聞いた。

「天ぷらと寿司という料理。ジャンパーは海に囲まれた島だから魚をよく食べるんだ」

「生の魚は怖かったけど、意外と美味しいね。この天ぷらも」

 ティナは初めて食べた生の寿司に驚く。

「新鮮な魚が釣れたからね。それも大物。それで劉コック長に頼んで作らせてもらったのさ」

 食糧確保も立派なコックの仕事である。船の共に釣りをたらしていつも魚を取っている。


「これから行くアーク大陸ってどんなところ?」

「俺も行った事無いけど、物凄く大きな大陸で大自然に囲まれているらしい。ブラッドの恩人がいるらしいけど。よく分からない」 テルの質問にティナが答えた。

「まあ楽しみだな。」

 テルがワクワクしながら答えた。彼には初めての外国である。

「そうだ!大自然に囲まれていて、可愛い動物達、珍しい動物達の宝庫だ!」

 話を聞いていた。ゴルディバ・ゴンゴ兄弟が楽しそうに寄って来た。赤毛のブラッド海賊団最強戦士にして「狂戦士」。しかし兄弟は、無類の動物好き、しかも可愛い動物には"目"が無い。船にも沢山の小動物を持ち込んでおり、動物達が悪さをするので困っているが、二人が怖くて誰も文句を言えない。しかし身長230cmの大男に抱かれる小動物の気持はどんな気持ちなのだろう?と考えるとゾッとする。

「何百万ヘクタールの巨大な森には、まだ未発見の動物が沢山生息しており、広大な大地には何百・何千の動物の集落がある。砂漠地帯にも色んな動物が生息しており、まさに生き物の楽園だ!」

 ゴルディバとゴンゴはテルが運んできたフルーツを殆ど平らげながら話した。

「凄そうだね。人は住んでいる?」

 ティナは質問した。

「もちろんだ。もともと原住民が住んでいた。数々の遺跡も発見されている。しかし大航海時代を迎えてから、近代兵器を用いて西方の国々『ポートギース』『オータン』『ブルツ』『イリア』が『アーク大陸』を四分割して占領している。酷い話だ。まあそのため本土から沢山の移民が移っているから言葉には支障はない」

 兄弟は簡単に説明した。

「ブラッドの恩人って移民して来た人なの?」

 ティナは聞いてみた。

「いや現地の奴らさ、まあちょっと普通じゃないだけどね。それは後のお楽しみだ」

 ゴルディバは意味ありげに答えた。

「まあ俺たちはアーク大陸に行った時に、秘密に動物の狩りをしている『ハンター』達を尽く懲らしめてやった。それで現地の奴らとも打ち解けて仲良くなったのさ」

 ゴルディバは説明した。フルーツの皿は既に空になっていた。小動物が好きな二人は大の甘いもの好きでもある。

「大陸では俺が案内してやるよ。それじゃ早く寝ろよ」

 兄弟は寝室に戻って行った。

「なんかワクワクしてきたな」

「うん」

 ティナもワクワクしていた。


数日後、『アーク大陸』が見えてきた。快晴で海鳥達が出迎えてくれた。ティナとテルは海鳥達と戯れながら『アーク大陸』を眺めた。

これから起こる『大冒険』に、期待に胸を躍らせて。


次回「大地の国、アーク大陸」をお楽しみに。


キャスト

ティナ・・・赤髪に黒い目を持つ少年、この物語の主人公

ブラッド・・・「赤毛のブラッド」として海軍・海賊に恐れられている。ルシフェルの船長

ティアナ・・・海賊船ルシフェルの副船長兼経理担当。森の種族「エルフ」にしてブラッドの妻

ゴルディバ・・・五人衆の一人。甲板長。巨漢ながら性格は温厚。ただし戦いの時は狂戦士となる

ゴンゴ・・・副甲板長、ゴルディバの弟。兄と同じ巨漢で狂戦士。

テル・・・ジャンパー国 天皇直属の忍 ティナと友達になる。赤毛のブラッド海賊団のコックとなる。



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