Prologue
タイトルの読み方は「構成術士の欠陥因子」です。
なお、プロローグというより大まかなあらすじとなっております。
二千四十八年 十二月二十七日
この日、新たな年を迎えようとしていた地球に暗雲が掛かった。
チュニジア共和国の上空に、文字通りの黒い雲が。
人類が直面してきたあらゆる危機。
例えば、
温室効果ガスによる地球温暖化や、急激な地球規模の寒冷化に伴う冷害。
或いは水資源の世界的枯渇、及び人口増加に伴う食料難。
水質汚染。土壌汚染。異なる思想や宗教の間で生じる摩擦。
これらの災厄とは明らかにその“本質”が異なる災厄が、その日、人類を襲ったのだ。
突如として現れた黒い霧状の化物、「Sadow」。
そして、その霧から生み出された異形の生物、「Hannibal」。
奴らの襲撃によって、各国は甚大な経済的損害を被ることとなった。
そう――。
人類にとって、本当の意味での「天敵」がその姿を露わにしたのだ。
これを受け、地球連邦軍(Earth United Government Force)は極秘裏に開発していた「ある兵器」の投入を決定した。
物理的にも、そして“道徳的”にも危険な凶器。
それは核兵器でも化学兵器でもなく――「人間」であった。
彼らはたった一個人で一国の軍事力にたりうるような、圧倒的な力を有していたのだ。
宇宙を――四次元空間を形作る高次元空間構造に干渉し、その構造を変化させることで術者が望む“結果”を獲得する力。
後にそれは「構成術」と呼ばれ、超能力や魔法といったオカルトではなく、超弦理論及びM理論に基づいた科学技術として確立されていくこととなる。
つまりは、シャドウに対抗できる“兵器”の開発。
そんな極自然な、反人道的な時代の流れとして、各国は構成術を扱う「才能」のある者を自国中から掻き集め、後に“人間兵器”と呼ばれる「構成術師」の教育に着手し始めた。
そんな政策によって設立された施設の中に、国立詞素大学とその付属校があった。
そして、春。
国立詞素大学付属第七学園に、一人の少年が訪れた。
入試の実技成績は堂々の最下位。
総合成績も下の下。
そんな「欠陥品」の少年は、静かで平穏な学生生活を望んでいたのだが。
神の悪戯か。学園を舞台に巻き起こる騒乱の渦中へと、彼は呑み込まれていくことになる。