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第九話

「父さん!?」

「早く出るぞ、俺の姿を見て驚いて飛び出して行ったが、いつまた戻ってくるかわからん。雪広、お前はニカちゃんを頼む。俺はその友達を運ぼう」

 目をパチクリさせている俺を見て、苛立つ父の声が響く。

「驚くのもいいが、まずは外だ。さっさと動かんか」

「う、うん」

 軽々と草哉を担ぎだす父の後を追うように、晶と真紀緒の手を借りながら、ニカ子をエレベーターに押し込んだ。

 一階まで着くと、来た時にはなかったワンボックスの車が停まっていて、父はその車の後部ドアをがらっと開けた。少々乱暴に草哉を座席に放り投げた。

「とりあえずここに寝かせておけばいいだろう。ニカちゃんは、こっちに座らせてやりなさい」

「あ、ああ」

 なんとか体を車体に乗せて、引っ張る形でニカ子も席に収まらせた。

「よし、じゃあみんな、とりあえず、乗れ」

 晶も真紀緒も何も言わないまま、後ろの空いた座席に乗り込む。

必然的に俺は、助手席に座る事になった。

 すばやく車は動きだし、いまさっきまでの日常と断絶されたような空間から、休日で賑わう観光地、秋葉原へと戻って来た。

 わざとなのか、誰も話そうとしないまま、暫くは自宅へと向かう幹線道路を進んでいた。いても立ってもいられず、俺は口を割る。 

「なんで父さんがいるんだ? 仕事はどうしたよ」

 まっすぐ前を見て運転を続ける父は、顔のどの筋肉も動かさず黙っていた。俺は構わず、シートベルトで動きづらい体を精一杯後ろに向けて、聞いた。

「晶さん、この人来た時、なんて言いました? 代表って言いませんでした? あれ、どういう意味ですか?」

 いつもは歯切れのいい晶が、目をそらした。

「それは……」

「真紀緒さんも、何か知ってるんですよねえ? いい加減、何が起きてるのか少しくらい教えてくれてもいいんじゃないですか?」

「雪広!」

 耳元で大きな声が叫ぶ。

「その二人を問いつめるな。答えたくとも答えられないんだ。知ってるだろう」

 変わらずに前を見たままの父は、顔色一つ変わっていない。

「じゃあ、父さんは何か知ってるっていうのかよ。この子達を連れてきておいて、それっきり家に顔もださないで、今までどこで何して……ちょっと待てよ?」

 急に事が読めて来た。

 元を正せばこの二人をうちに招き入れたのは、この父だ。もしかして、知り合いの娘という話も、元々嘘だと分かっていて、この二人が未来から来たという事も、みんな知っていて……。父は、全てはじめっから知っていたと? 

「知ってたの……? 父さん」

 横顔を見つめる俺の目線に、父の喉が小さく動いたのが見えた。

「知ってたんだろう? 知っててこの二人は家に来たんだろう?」

 大きな公園の前の道を通っている時だった。父はゆっくりと車を測道に止め、ハザードを焚く。降りるのではないと、すぐ分かった。

 期待した事とは違う事を、父は話しだす。

「これから話す事は、お前にとって理解することが難しいことだと思う。しかし全部本当のことで、事実だと言う事をまず最初に分かってもらいたい」

「なんの話だよ。俺はもう、この二人がどこから来たのかも、何をしに来たのかも、とっくに知ってるよ。っていうか、教えられたんだけど」

「そこから先の話なんだ、雪広」

 久しぶりに近くで見る父の顔は、月曜の朝よりも、さらに疲れているように映った。しかし、その顔は、どこまでも真剣そのものだった。

「そこから先って、何の事だよ。俺が聞いてもいい事なの?」

「代表」

 それまで黙っていた真紀緒が口を出す。

「よろしいのですか? 許可はお取りで?」

 俺に向けるそれとは全く違った優しい目で、真紀緒に振り返る。

「大丈夫だ、真紀緒ちゃん。二〇八五年代表と相談をした上で、先ほど組合で許可がおりたところだ」

「安心しました」

 なんの話だかさっぱり分からない。それも、父には通じているのがまた謎を深める。

「いいから、説明してくれよ。もう頭がハテナマークだらけだよ」

 父はシートベルトを外し、体を緩めてからゆっくり話しだした。 

「この二人がやってきた経緯は聞いたな?」

「うん、俺の取材だって。二〇八五年のテレビ局から来たって。やっぱりそれも嘘なの?」

 父は首を静かに横に振る。 

「それは嘘なんかじゃない。本当に彼らは二〇八五年から、お前を題材にしたテレビ番組を作る為に来てくれたんだよ」

 晶も真紀緒も、黙ってその話を聞いている。

「それじゃあ、その先の話っていうのは? その前になんで父さんがそんな事を知ってるの?」

「よく聞いてくれ、雪広」

 ここで話を一旦切り、クッションを入れて進めた。 

「父さんの本当の仕事は、商社マンじゃない。時空管理組合という組織の、この年代の代表をしている」

「時空……管理組合?」

 晶も、真紀緒も父を代表と呼んでいた。父が代表? 

「そうだ。時空移動が可能になった二〇四一年に設立された組織で、各年代ごとに一人、時空移動をする際の窓口になる役目の人間が選ばれている。そして、この年代が、父さんだ」

「窓口って、どっかの年代から、その時空移動をして来た人を受け入れたり、送り返したりとかするの?」

「そんなとこだ。この時代で勝手な事をしていないか、何か悪さをしてないかをチェックするのも仕事の一つだ。監視員ってとこかな。世界中に来客が来るもんだから、家にはなかなか帰れない。悪いとは思っているんだがな。おい、これ母さんには内緒だぞ?」

 なんだか、スケールのでっかい話と、ものすごく身内の話がごっちゃになっているが、かえってそれが真実味を増した。

「言わないよ。言ったって聞きゃしないさ、そんな話」

「その通りだな」

 はっはっはと父は笑った。固かった車内の雰囲気が少し軽くなった。

「じゃあ、父さんも未来に行った事があるの……?」

「まあな。定期的に年代ごとの代表者が集まって、報告会というのを開くんだ。いついつ誰がどんな理由で来ましたよ、とか、今度こんな予定があるから、気をつけてくださいね、とかな。町内会みたいなもんさ、やってる事はな」

「なんだか、父さんの話聞いてると、たいした事じゃないような気がしてくるよ、ほんと……」

 そこに、真紀緒が入って来た。

「でも、代表のお話は、とても要領をとらえた、分かりやすい内容だと思います」

「ありがとう、真紀緒ちゃん」

 父は嬉しそうだ。母同様、父も娘が欲しかったのだろうか、明らかに俺に対する態度とは違うのだが。

「うん。まあそれでだ。その報告会ってのが、実は昨日あってな、そこで悪い噂を聞いたんだ。それで急いで帰ってきたら、お前達がまさにその最中だったって事で、先ほどに至る」

 終わり、みたいな満ち足りた表情をしているが、全くわからない。

「全然説明が足りないよ。もっと詳しく話して」

「お前も知りたがりだなあ。まあ、その為に組合に情報開示許可をもらってきたんだ、ちゃんと話すから、そう慌てるな」

「なんか、代表とユキ君の会話聞いてると面白い」

 晶はクスクスと笑い出した。

「晶D、笑ったりしたら失礼です」

 と、言ってる真紀緒も面白そうだ。

「詳しく、な。はいはい。いつの時代も便利な物が発明されると、それを利用して悪いことをしでかそうとする輩はいるもんだ。しかも、得てして悪さをしようとする奴らは、ずる賢い頭を持っている。そうだろう?」

 日々伝えられるニュースの中で、詐欺事件や犯罪集団の手口を聞くと、そんな巧みな手口を思いつくくらいなら、その頭脳を真っ当な仕事に反映させればいいのに、と思う事がよくある。そういう事だろうか。

「そう言われれば、そうかも。それで?」

「歴史の改ざんだ」

「歴史の……改ざん?」

「分かりやすく言えば、過去を変えてしまう、という事だ。時代を行き来する事を利用して、過去を自分の都合のいいように変えて、未来に生きる自分に有利にしていくって訳だ」

「そんな。ずりい」

 つい、あまり綺麗でない言葉が口をつく。だって、そんな事が出来るなら俺だって、やり直したいことは山ほどある。

「そうだな、ずりいな」

 父は口の端だけ上げて笑った。

「父さん達のいる組合では、移動に関して色々決まり事を作ってるんだ。そのほとんど全ては、歴史を侵さない為のものだ」

「未来の事を過去の人に話さない、とか?」

 父は頷く。

「そうだ。時は絶え間なく流れ、そして決して戻って来ないもの。これは自然の摂理だ。しかし、それをあえて乱すのが、時空移動という行為。そのリスクを十分理解し、最低限のダメージで元いる時代に戻ってくる為だ。しかし、今回、それを大幅に乱す行為を行っている年代が見つかった」

「年代? ってことは、その時代の代表の人もぐるで歴史の改ざんをしようとしてるの?」

「どこの年代です? そんな馬鹿げた行為をするのは」

 真紀緒だった。

「真紀緒さん達も知らないんですか? この事は」

「うん、今初耳」

 晶も驚いている。

「昨日発覚したんだ、年代は二〇四五年。そして、その首謀者は、お前達がさっき見た、シュウという女だ」

「ええええ!」

 先ほど見た、フリフリ衣装に、どこまでも高い声。オタク心をくすぐる甘ったれたしゃべり方は、正直知性のかけらも感じられなかった。あのシュウというアイドルが? 

「だから、あのアニメにあんなものが?」

「あんなもの?」

 それはあの部屋で、晶と真紀緒が必死に中断させようとした事に繋がっていた。

「先ほどのアニメには、非常に高度な技術で作成されたサブリミナル効果のあるメッセージが挿入されていました」

「サブリミナルって、テレビとかで目に見えない短い時間の画像を何度も見せるってやつですか?」

「そうです。この時代では、ほとんどその効果が上げられるものはないはずですが、近代、人間の潜在意識に直接働きかける、効力の強い手法が見つかっています。法律でも禁止されたのが、確か二〇三八年。四五年の人達なら、違法である事ももちろん知っているはずなのに」

「あれを見たから、ニカちゃんも草哉もこんな事に?」

 真紀緒は頷く。

「間違いないでしょう。特に御門さんは、繰り返しこのアニメを見させられていたのではないでしょうか。かなり、精神的構築部分を壊されているようです」

 ニカ子は今は寝てしまっているようだが、草哉は未だに瞼を閉められず、時折ガクガクと震えだしたりしている。確かに症状は重そうだ。

「でも、あのアニメなら、俺も少しは観てたし、それに晶さんと真紀緒さんはなんで平気だったんですか?」

 今度は晶が答える。

「多分、ユキ君はちゃんと画面を見ていなかったんじゃない? そうでなければ、たぶん引っかかってると思う。だって、あれ、かなり精巧に仕組まれていたもの、プロの仕業だと思う。私たちは、学校でその訓練を受けるの。動体視力を極限まで鍛えて、そういった映像を意識下に持って来れる。だから、見てすぐに分かった。サブリミナルだって事も、その内容も」

 そういえば、始まってすぐに、草哉を探す為に画面そっちのけできょろきょろしていた。そのお陰だったのか。

「その内容って、どんな内容だったの?」

「『クールガムを食べよう』じゃなかったかい?」

 突然父が言う。

「ええ、その通りでした、代表」

「ガム? クールガムって、普通に売ってるあのガムとは違うの?」

 父は、いいや、と言ってから続ける。

「その、ガムの事だ。彼らは、すでにそのガムに、ある物質を含ませているという情報がある。その物質を取り込ませたいが為に、わざわざサブリミナルまで利用して、ガムを食べさせようとしている」

「あ」

 そう言えば、ここのところずっと草哉が食べているのが、そのクールガムだった。

「どんなものが入ってるの? 草哉、最近いっつもそれ食べてたよ。ヤバいもの? 毒とかじゃないよね?」

 父の顔は穏やかで、その表情からすれば、命に関わるものではないと暗に感じた。

「基本的に毒物ではない。しかし、外的症状等が全くない分、より悪質なものだと言えるかもしれない」

「それは、どんなものなのです?」

 真紀緒も予想ができない、といった様子だ。

「脳内麻薬物質。好きな事をしていたり、楽しいと思うときに気分がとても良くなり、その状態を維持したいと感じる、人間が元々もっているものだ。あのガムに含まれている量では、もしも一般の人が一日に二〜三箱食べたところで、いつもより多少趣味に心が踊るくらいだが、この物質が多くなればなるほど、好きな事をしたい、もっとしたい、してない時間が我慢できないという、いわゆる禁断症状に似た状態になってしまう。多分あのサブリミナルには、それ以上を摂取したくなる反応が出てしまうだろう。もしも、継続的に多量の脳内麻薬物質を増やせば、麻薬と同じように、精神的に異常をきたす。わかるか?」

「わかるけど、目的がわからない。そんなものをわざわざオタクを集めて食べさせて、一体なにをしたいの?」

 父は珍しく俺の頭をなでた。

「なかなかいい質問だ」

 俺は照れ隠しもあり、手を払いのけた。

「いいから、それで?」

 わざとおどけた顔をして、その手を引っ込めた。

「そっちの二人には分かると思うけど……」

 後ろの座席へ前置きをしてから、父は続きを始めた。

「さっきの部屋にいたのは、世間で『オタク』って言われてる人達だろう。なぜ彼らがオタクを相手にこんな手の込んだ事を、しかも時代を超えてまでしたいと思うのか」

 俺には、先がさっぱり読めなかった。しかし、晶と真紀緒には、そこまで聞いただけでなるほど、という事らしかった。

「雪広。よく聞け。これを聞いてお前の将来を決めて欲しくはないんだが、未来の事実でもある。実は、未来では、オタクが世界を握っているからだ」

「……はあ?」

 何を言っているんだ。ここまではなんとか気を確かに聞いていたが、さすがにだめだ。冗談でないなら、ばかにされてるとしか思えない。

「オタクが世界を握っているだああ?」

「本当なんです、田中さん」

「ユキ君、嘘じゃないんだよ」

 真顔で話されても困る。まずは頭を整理しないとその先の話が耳から脳に入ってこない。

「分かる様に簡単に言ってやる。今でもそうだが、この世の中、マルティメディアが蔓延して、インターネットや電子機器がなければ成り立たないだろう? 未来は、これがもっと加速している。朝起きてから、夜寝るまで、もっと言えば、おぎゃーと産まれてから、命の消えるその瞬間、いやその後も、全てがコンピューターの手を借り、なければ成り立たないという世界になっている」

「そうだったとしても、それとオタクがどう関係するの?」

「それは、ある一人のパソコンオタクが、画期的な生活オペレーションシステムのLOPと言うプログラムを考えたところから始まる。しかし、そのプログラムもシステムも、あまりに複雑すぎて、携われる人間はやはり同じくオタクでないと出来ないものだった。それ程の知識を持ち、お互い理解できるのがオタクだけだったんだ。しかしすぐに、そのシステムが世界基準になってしまった。とても、優れたシステムだからだったからなんだが、それを発端として、徐々にオタクであることがステータスになっていったんだ。まずはパソコンオタクから波及し、今まで日陰でくすぶっていた、各種の分野に膨大な知識をもつ彼らはもてはやされ、実際それがかっこいいとされるようになった。オタクと呼ばれる趣味に、みんな走ったんだ」

「……冗談だろ?」

「冗談なんかじゃない。今でも少しづつその傾向はあるだろう。秋葉原はどんどん再開発がすすめられ、それを文化とするオタク達が世界中に飛び火し、オタクに関わる産業がうなぎ上りで急成長している。理解できないというならば、世界中が秋葉原になったと考えてみるといい」

 世界中が秋葉原……。

 楽しそう! ってそうじゃない。あの一風かわった街が、世界に広がったなら、オタクが世界の中心だ。なるほど。そんな世界なら、晶や真紀緒のような普通の女の子がゲームに詳しかったり、大学でアニメの勉強をしていたりする理由がわかるというものだ。

「そして、さっきのシュウという女とその仲間は、その流れの元である、この時代のオタクに目を付けた。将来必ず世界の中心となる彼らを、今から自分達の好きに動かせるようにマインドコントロールを始めたんだろうと、組合では話をしている」

「……聞けば聞く程、むかついて来た。父さん、さっさと捕まえて四五年でも何年でもいいから、送り返してやってよ」

「うん、任せてくれ。と、言う事で、雪広、悪いけどシュウってのを捕まえて父さんのとこ、連れて来てくれ」

「んな! なんで俺がっ!」

「お前テレビの取材来てるんだから、いいところ見せるチャンスじゃないか、ねえ? 晶ちゃん、欲しいでしょ? そういう映像」

 晶の目が光る。前にみた営業スマイルが復活している。これは仕事モードに変わったという印だ。

「そりゃーもう。実は、昨日、初回の放送があったんです。ただのユキ君の日常をまとめたものだったんですけど、番組史上最高視聴率だったんです」

 溢れんばかりの笑顔だ。真紀緒は小さく拍手までしている。

 呆れている俺に、父は声を落として言い出した。

「冗談はさておき」

「冗談だったのかよ」

「そういう意味じゃない。まじめな話だが、っていう意味だ。父さんは、この件で問題の四五年代表を探し出さないといけない。彼は他の時代に移動はしていないという情報だから、父さんが四五年に赴かなければならない。ここにいられないんだ」

「まじで……? 本当に俺が探すの?」

 嘘だろう。いつのまにか、本当に事件に巻き込まれている。でも、俺なんかの関わる事件に、解決なんて期待できないぞ。

「お前しかできないだろう。晶ちゃんも、真紀緒ちゃんも彼らの意思では行動できないのだから」

 そうだった。行動力のありそうな晶も、知識の泉のような真紀緒も、俺の代わりにはならないのだ。

 どんどん肩も背中も丸まっていく俺に、追い打ちをかけてきたのは、真紀緒だった。

「ニカ子さんは、少し休まれれば大丈夫だと思いますが、多分、御門さんは度重なるサブリミナル効果と、ガムに含まれている物質での体内汚染が、かなり深いと思われます。サブリミナルは観るのをやめれば、効果は薄れるかもしれませんが、悪質な麻薬物質に関しては、分解できる解毒物質の投与がなくては、目が冷めた後の草哉さんは、次第に苦しまれるでしょう。しかし、今のままでは、何を与えれば快方に向かうのか知る事が出来ません。彼らに直接聞き出さなくては。草哉さんの為にも、そして、他の被害者の方の為にも、田中さん、お願いします」

「それに、市場に出回っているガムにどうやって麻薬物質を混入しているのかも突き止めないと、被害を止められない」 

「と、言う訳だ。やれるな? 雪広」 

 

 再び家へと向かい始めた車から見る太陽は、色をオレンジから紺へと変えながらゆっくり暮れていく。でも、俺の気持ちはそれとは比べ物にならない程の勢いで、下へ下へと沈んでいった。


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