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カノン  作者: 朱咲カホル
3/6

act.3 ちょっとピンチ?

 数日後。教室の出入り口をそうっとうかがう花音の姿がそこにあった。

 実はあの日の翌日、花音はここで響に呼び出されたのだ。

 いったいなにを言われるのか……と内心怯えていると、彼は開口一番に「バンドのボーカルをやってほしい」と言ってきたのだった。

 突然のことに大きな目をさらに大きくする花音。びっくりしすぎて固まってしまった花音の耳には、以降の響の言葉が入ってこなくて。

 けれど、咄嗟に出たのは「ごめんなさい」という言葉だった。

 響の誘いはうれしかったけれど、自信がなくて。

 きらびやかなステージで歌っている自分を思い描くことができなくて。

 地味で、言いたいことの半分も言えないような自分なんかより、もっといい人がいる。

 そう思った。

 だから断ったのだけれど、そんな簡単に終わらなかった。

 それから毎日、響の姿を見ない日はなくて。そのたびに「入れ」「ごめんなさい」の押し問答が繰り広げられるようになったのだった。

「花音ちゃん」

 響の姿がないか注意深く見ている花音に、親友であり、幼なじみの彼女でもある雪乃が声をかけてきた。

「あ、雪乃ちゃん。響先輩に私のこと聞かれたら、私は早退したって――」

 ふり返って――絶句した。

「ほう、そんなに俺に会いたくないのか」

 ぐっと眉間にしわを寄せ、腕組みをしている響がそこにいた。

 パクパクと口を動かす花音。

 そんな彼女に、響の後ろから雪乃が申しわけなさそうに手を合わせている。その隣には花音の幼なじみで、雪乃の彼氏でもあり、響のバンド仲間でもある洸もいた。

 これはちょっとピンチ?

 そう理解した瞬間、

「待て、こら!」

 見事なスタートダッシュを決めた花音と、そんな彼女を追いかける響。

 ここ数日ですっかり恒例となった追いかけっこが始まった。

 と、雪乃が首をかしげる。

「花音ちゃん、どうしてそこまでいやがるのかしら?」

 先輩のこと、大好きなくせに。

 そうつぶやく雪乃の隣で、洸は「女心はわかんねー」とぼやいたのだった。

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