オレは絶望したんだ。
「殺すぞ!!!」
と、マラ宮は今度はオレのみぞおち目掛けて前蹴りを突き出す。
オレは二度目は堪えきれずにその体勢のまま背中から床に倒れこんでしまう。
「テメェ……!!?」と、マラ宮はオレの様子を見てさらに怒りを増幅させる。
「≪避けないで、なおかつファイティングポーズを取り続けるって、ガチか?≫ガチで、俺に挑んでんのかァッ?」
と、マラ宮が言う。
「上等だッツ!!≪屋上タイマン≫やってやんよォオ!!??」
(いやだからたいまんとかまじできないしかえってぺぷしのんでにこなまみたい)
などと混乱した頭で呆然と目を見開くことしかできないオレ。
そこに、騒ぎを聞きつけた体育教師の肉山先生がやってくる。
「マラ宮、それに馬路吉、お前ら授業中になにしてんだ!やめろ!」
と、肉山はマラ宮を後ろから羽交い絞めにする。
こいつが先に喧嘩うってきたんだよ!、などといいながらマラ宮が暴れている。
その隙にオレはズボンをなんとか必死に脇を閉めたまま履く。
とうとう他のクラスから同級生の野次馬がどんどん集まって、教室を囲んでしまった。
「こらーっ!お前ら、授業が終わってないだろ、教室へ帰れ!」
などと数人の先生が後ろの方で叫んでいる。
「お前ら二人、ちょっと職員室へ来い!」
と、肉山は叫び、同級生をかきわけてマラ宮とオレを廊下に引っ張り出す。
オレは混乱の中で、密かに胸をなでおろす。
とんでもない騒ぎになってしまったが、ラムリエの活動はばれなかった。
このまま脇を閉めたまま、あとで落ち着いてからブラはどっかに捨ててこよう。
説教ならいくらでもしてくれ、と、胸をなでおろしていたのもつかの間。
「お前ら喧嘩なんかしやがって、えらく血が出てるじゃないか。二人ともここで学ランを脱げ、凶器かなんかもってないか見せろ!!」
と、肉山が最悪のタイミング、廊下での身体検査を言い放った。
(馬鹿か、学ランの下にはウンナナクール・ノンワイヤーブラが入ってるんだよ、こんな大勢の前で脱げるか―――)とオレは絶望する。