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追放

「城、追い出されちゃいましたね。」


「うん・・・まあしょうがないかな、勝手に講和したからね。」


「すまない、わしのせいだな。」


 アレフと俺と竜の神が並んでとぼとぼとノイエブルクの城下町を歩いている。竜の神は人型になって普通の服を着ているので気にする者はいない。


「あんたは悪くない。と、俺は思うぞ。まあ、全く悪くないわけじゃないが、あの石頭どもに較べればはるかにましだ。」


 後ろをついてくるガイラの顔は不満を表しているが、それは竜の神に対してではないようだ。


「いや、それでも謝意を示さないとわしの気がすまない。わしがこの世界を壊したのは事実だ。」


「それはまあそうだけどよ、操られていたんだからしょうがないだろう。それにもう魔物を恐れる必要はなくなった。それで十分だろう。」


「もういい、ガイラ。勝手に講和した俺が悪かったんだよ。」


 多分永久に終わりそうも無い会話に割って入った。


「でも陛下も薄情だわ、少しは弁護してくれてもいいじゃない。形式に拘って結果を認めようとしない連中の言いなりなんて陛下らしくないわ!」


「そうだ、魔物との約定など信用ならぬだの、これは時間稼ぎだの、ごちゃごちゃうるせえこと。ありゃあ、自分ならそうすると言ってるようなもんじゃねえか!」


 ガイラはあまり難しいことを考えないが、その口から出る言葉は本質を見極めていることは多い。ガイラの言う通り相手を疑う者は、自分を鏡に映してそれを疑っている。


「いや、あれでいいんだよ。下手に弁護したら陛下の立場がなくなる。平和が訪れたことは認めてくれたんじゃないかな?だから追い出されるだけで済んだ、そう思うとしよう。」


「でも私は納得できない。これまでの地位職責も功績も何もかも無かったことにされたのよ。」


 俺に関しては過去に遡って公式には存在していない。だから罪も存在しない。そういうことになった。10万Gの契約金のこともうやむやになったので、俺としてはほっとしている。


「マギー、俺の為に怒ってくれなくていいぞ。どちらかと言うと都合がいいと思っている。」


 俺の言葉にその場にいた全員の足が止まった。


「学者、もしかしてお前の計算通りか!」


「勘違いするな、結果論だ。まあアレフとガイラには悪いことをしたとは思っている。何の褒美も貰えなかったからな。」


「僕は褒美が欲しくてやったのではありません。だから謝らないで下さい。」


「そうだ、アレフの言う通りだ。結構楽しめたし、それに俺は二度命を助けられている。」


 アレフとガイラの返事は俺が予想通りだ、それだけに辛い。


「なんだ、褒美が欲しいのか?ならばわしが所有していた財宝を持っていくがよい。もうわしには不要なものだ。」


「そうか、悪いな。これで学者が俺達に引け目を感じることもなくなるってもんだ。俺もアレフも財宝をもらって富豪になるなり、どこかに旅に出るなりして好きに生きていける。」


 思わぬ言葉にガイラが嬉しそうに話した。本心とは思えない言葉だが悪くない。


「あんた達はそれでいいかもしれないけど、私のことはどうしてくれるのかしら?無期限の登城禁止なんですけど。」


「ゴメン。謝ってすむことじゃないけど、本当にゴメン。」


「冗談よ、別に怒ってないわ。でもこれからどうするの?城の連中はあんた達の功績を横取りして、平和を取り戻したことにするわよ。」


 マギーの表情が怒った顔から笑顔になり、今度は心配するような顔になった。


「平和になったら全てが元に戻る・・・か。もしそう思っている連中ばかりならお目出度いとしか言えないな。あいつ等はまだ知らないことがある。お前達も見ただろう、新たなる大地を、大海の向こうには無限の可能性がある。」


 俺の演説はアレフ達に竜の神の背中から見た新たなる世界を思い出させた。しばらく無言の時間が過ぎる。


「でもどうやって行くのよ。ある程度の人数を運ぶには船がないと無理なのよ。船を手に入れるにはある程度の財産と認可が必要になるわ。」


「そうだな・・・船を作る施設は城に押さえられていたな。今から施設を作っていたら間に合わない。新天地はある意味早い者勝ちだ、なるべく肥沃な地や鉱山を抑えないといけないな。どうしようか・・・そうだ、こっちには竜の神がいるじゃないか。」


「どういうことだ?償いになるなら幾らでもわしの力を使うといい。だが幾らわしでも大人数を運ぶことなど不可能だ。それにあまり目立つわけにはいかない。」


「人を運んでもらう必要はない。石を幾つか運んでもらうだけでいい。」


「「「「石?」」」」


 俺の意外な言葉に俺以外の全員が声を上げた。


「そう意外そうな顔するなよ。ラオフかヘンドラーの転移基準石を運んでもらえば、あとは転移の魔法で幾らでも運べる。」


「おっ・・・おおっ、なるほど、流石は学者、名案だ。」


「そうか、その程度なら簡単なことだ。」


「よし、決まりだ。後は移民希望者を募るだけだ。まあトロッケナーヴィントの流民が5万といることだし、声をかければついてくる者もいるだろう。」


 さて外の世界はどうなっているだろう。そこには生き物はいるのか?交流に値する文明はあるのか?できれば争うことなく治めることのできる地があるといい。空から条件の良さそうな場所を探すことにしよう。

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