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後身の来訪

「で、何で君達がここにいるのだ?」


 いつもの宰相執務室にいつもとは違う客が来ている。現在ノイエブルク近衛騎士で末席に位置しているゴルトベルガーとオスマイヤーの両者なのだが、渡された紹介状とは氏が違う。


「この度ノイエブルク国務大臣付き特務大使に任命されましたファイエルクリンゲです。以後お見知りおきを。」


「同じくドナスピアです。先の特務隊士殿に会えて光栄です。」


 なんだその大仰な家名は?ファイエル=火、クリンゲ=刃、ドナ=雷、スピア=槍、つまり炎の剣に雷の槍、はてさて誰に対する牽制なのか疑問である。


「その役職は抹消されたもので、わざわざ紹介される筋合いはない。どうせならシュミットに挨拶するべきじゃないかな。」


「シュミット殿は何処に行かれたのか全く分からないのです。見事な身の隠しようですね。」


 いたく感心したのかオスマイヤーの口から賞賛の言葉が出た。シュミットのことだ、どうせエグザイルか連合王国か何処かの女の所に飛んだのだろう。今回はこき使ったのでしばらくは好きにさせてやる。


「そう言えば私も彼の行方は知らないな。どうしても居場所を知りたいのなら先のノイエブルク国王陛下にでも聞くといいだろう。」


「いえ必要ありません。今回の顔合わせは宰相殿を目的としています。今後はシュタウフェン公との直接の対話は我々を通してするよう言われています。」


 実に微妙な表現だ。国務大臣とは言わずにシュタウフェン公と言った。紹介状にある印にも国務大臣の印はない。つまり非公式な使者として使うと表明していた。


「よく分かりました。シュタウフェン公によろしく伝えておいて下さい。」


 そう話を締めくくった・・・つもりだったが目の前の二人は退室しようとしない。


「まだ何か?」


「まだ特務隊士としての心得を聞いていません。要人の護衛、情報の収集と処理、司法権限の使い方など教えて頂ければ幸いです。」


「答えてやる義務はないと思うが・・・まあいいでしょう。情報を大事にすること、その一言に尽きます。それさえできれば護衛も司法権限の使用も自信を持ってできるはずです。」


「・・・・・・・・・。」


 意味が理解できなかったのか、二人とも複雑な表情で黙している。


「情報を集めれば誰が誰を害するか分かるはずです。それと司法権限を有効に使いたいなら全ての法を頭に入れておきなさい。法の条項や過去の判例を用いて相手を言い負かすのです。武力を使うのはその後でいいでしょう。」


「まさかその全てを覚えておられるのですか?宰相殿が特務隊士であったのは一年に満たなかったはずですが・・・。」


「あれは実益を兼ねた趣味だ。任命されて一ヶ月、とくにやることもなかったから一日の半分は図書館にいた。そのおかげで一生の宝を手に入れることもできたけどね。」


「一生の宝?・・・痛っ!何するんだよ。」


 これまた意味が分からなかったのかファイエルクリンゲこと元ゴルトベルガーが呟く。察したドナスピアが肘で突つき相方を黙らせ、まじめな顔をしてこちらに向き直った。


「ではもう一つお願いがあります、宰相殿が持っている遺失魔法を教えて頂けませんか?」


 その瞬間、今まで無関心に聞いていたドゥーマンがかっと目を見開いた。


「やはり目当てはそれか。そう簡単に教えると思いますか?」


「思ってはいません。ですが両国の友好の為にお教え頂けると確信しております。」


「友好の為ね。もし教えたとしてローザラインに何の得があるか、教えてほしいな。」


「シュタウフェン公には敵がいます。もし国務大臣が代わるようなことがあったら、おそらくローザラインの得になることはないでしょう。」


「なるほど少々無理はあるが一応説得力がある。結構、なら一部だが私の知っている遺失魔法を教えるが、その前に誓約書に署名が欲しい。誓約の内容は伝授した魔法は一代のみで、絶対に他に漏らさぬこと。これに反した場合は命をもって償うこと、この二つだ。理解したのならここに署名と血の捺印を押してくれ。」


 手元の白紙に同じことを書いて渡す。書かれている内容と俺の言ったことが一致することを理解したのか、唾と飲み込む音が執務室に響いた。しばらくして意を決した二人が署名と血の捺印をした。思わずため息が漏れた。


「実に残念だ。不用心にもほどがある。そう簡単に署名するものじゃないよ。王家の秘術血の契約、あれが失われたとでも思っているのか?」


「まさか・・・?」


 一瞬で二人の顔色が悪くなった。ドナスピアことオスマイヤーが魔法の詠唱の為に集中する。ドゥーマンが咎めようとしたが手でそれを制した。過去の話を聞いているなら使う魔法は一つ、明かりの魔法しかない。


「・・・・・何も書かれていない?宰相殿、悪い冗談は止めて下さい。」


「冗談じゃないさ。そこには記されていないがその可能性は疑ってかかるべきだった。こちらにはその秘術を知る者がいる。」


「ご教授ありがとうございます。また一つ、特務隊士としての心得を教えて頂きました。」


 ドナスピアが丁寧に頭を下げる。隣のファイエルクリンゲはまだ怒っているようだが、隣に倣って頭を下げた。


「よろしい。ではまず今知っているであろう魔法の応用、転移の魔法の座標指定を教える。ただしノイエラント内に限らせてもらう。他国に行くには今まで通り我が国の転移所を使ってくれ。」


「他の魔法は教えて頂けないのですか?」


「今日は昼からメタルマに行く。それまでにやるべきことをやらないといけないから時間がない。またの機会にしてくれ。」


 これは本当である。ゴルトベルクとの契約を果たす為、マギーをノイエブルクに行かせる。その間のブリッツのお守りをしに行かなくてはならない。ブリッツの魔力を封じることのできるのはマギーと俺だけ、それというのも他の者に魔力を封じられるとその効果が消えるまで泣き喚く。例外としてシャッテンベルクにもできるようになったとも聞いているが、そのシャッテンベルクもノイエブルクにいる。だから俺がメタルマに行くしかないのだ。


「分かりました。それだけでも当面は十分です。」


「ではまず基本の術式を・・・・・・・・。」


 久しぶりに魔法講座をした。どうやらドナスピアは魔法に長けているようで、乾いた砂が水を吸い込むように教えたことを覚えていった。もう一人はしきりと首を捻ってはいるが頭には入りきっていないようだった。


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