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Honey3 ありがちな再会は何の始まり?


 ――さぁ、秘密……


 そんな風に彼が言った言葉は、私に興味を与えていた(たったひと時だけ)





  そして、翌朝……


 「よしっ! ヘアスタイルに服装に……笑顔もよし!」

 パンッと両頬を叩いて気合いを注入した後、お気に入りの鞄を持って家を出た。

 一人暮らしを始めたマンションは、高校に徒歩で通える程近かった。何年か前は学生として通っていたのが、今日からは教師としてこの道を歩くのだ。

 少し早めに出たのに、既に学生達が通学する姿を見掛ける。そういえば、私もちょっと早めに家を出ては静かな通学路を歩いた事があったような……そんな思い出に浸りつつも、私の足は懐かしい母校の校門を通過した。

 するとその瞬間、私は生徒達から見ると教師と認知されたのか校内に入ろうとする生徒達に声を掛けられ始めた。


 「おはようございま〜す」

 「お、おはよう」


 懐かしい制服に包まれた生徒達に、まだ慣れずぎこちない挨拶を笑顔でフォローしながら返す。これから毎日そんな朝を迎えるのだ。早く“先生”と呼ばれる事に慣れないと。


 ―――――


 「いやぁ。我が校出身の生徒が、こうして教師となって戻ってきてくれるのは嬉しいねぇ」

 「私も、今度は教師として校長先生のお世話になります」

 学校に着いてしばらくしてから、校長室に呼ばれた私とイリにニコニコと笑顔で言う校長。そんな校長に、私もつられて笑みを浮かべながら挨拶を返す。

 それにしても校長……私が生徒として在学していた時よりも、かなりハゲてきたわね。このハゲっぷりは、ルイくんから聞いて想像していた以上だわ。さっきから真面目な話しかしていないのに、つい視線がテカりを見せる頭に向いてしまう。話の内容が真面目なだけに、吹き出さないよう気をつけているのだけど……

 「一宮理事長は、まだいらしていないから始業式を終えてから改めてご紹介しますね」

 「はぁ……」

 校長の一言に、正直面倒だと思いながらも私とイリは気の抜けた返事をした。別に毎日来る訳じゃない理事長にまで挨拶しなくても……堅苦しい事が苦手な私は更なる面倒に気分を沈ませていた。



 「藍李〜。アンタが在学していた時からあのハゲ校長いたんだね〜」

 「いやぁ……僅かな間に見事に進んでいたから、笑いを堪えるのも必死だったわ」

 始業式まで少し時間があったので、私達はラウンジでコーヒーを飲みながら校長の話で盛り上がる。その間にルイくんにメールも送信……もちろん、校長と再会した感想だけど。

 「私達は二年の副担だって。最初からハードルを上げ過ぎだっつうの」

 そう言うと、イリはポーチから煙草とジッポを取り出す。そして、一本取り出して吸おうとするイリの腕を掴むと

 「一宮(ここ)は全館禁煙なのよ。先代の理事長からの決まり事」

 「う……そっ」

 テーブルに記されている禁煙マークを指してそう告げると、喫煙者には有り得ない事でショックを受けて指からポロッと煙草を落とすイリ。

 「冗談じゃ無いわよ! それじゃあ、私は勤務が終わるまで煙草を吸えないの?」

 バンッというテーブルを叩く大きな音と共に、イリはそう叫んでは立ち上がる。喫煙をしない私には解らない喫煙者(イリ)の気持ち……ただ頷くしか出来なかった。


 ―――――


 「それでは、ただ今より始業式を行います……」

 教頭の声で始まった始業式。体育館の中は、懐かしい制服を身に着けた全校生徒に数多の教師。そんな教師の中にも、私や奏とナオトが世話になった教師が数人残っていた。

 そんな彼らを見ると、どうも緊張してしまい校長の話を聞くどころでは無いわ。

 ふと隣りに立つイリを見ると、同じく緊張をしているのか視線に落ち着きが無かった。

 「今日は理事長がこの始業式の為に来て下さったので、理事長からお話を頂戴したいと思います」

 私が在校していた時には姿を見せた事が無かった理事長の来校の報せに、生徒達を始め教師陣も驚いてざわついていた。

 そんな周囲の様子に、私とイリも顔を合わせては眉をひそめる。

 「ねぇ、理事長ってそんなに謎っぽい人なの?」

 「私も会った事が無いのよ」

 ヒソヒソと小声で話し合っていた私達だったが、壇上に上がる足音を聞いてピタリと口を閉じる。


 カツ……カツカツ……


 ゆっくりと響く足音……だけど、その音一つだけでも場の雰囲気が一気に変わるのが解る。式を進行していた教頭を見ると、緊張から出る汗をハンカチで拭うというありがちな仕草を見せていた。校長はというと……あぁ、壇上で理事長が来るのをテカテカの頭で迎えてるよ。


 そんなに理事長っていうのは凄いのか……って……


 「ああぁっ!」


 張り詰めた緊張の中に響き渡る叫び声。一瞬で全ての視線がこちらへと向けられる。イリや生徒に教師陣、校長や教頭そして壇上に居る理事長にも……。

 そんな中、たった一人だけ私と同じく大きく目を開かせていた人物が居た。それは……


 黒いスーツに整った髪型にメガネを掛けた男性。それは、壇上で立ち尽くしては驚いたようにこちらを見る“理事長”として紹介された……昨夜の彼。





 こんにちは、山口です。『蜜恋』を読んで頂き、ありがとうございます。今回、昨夜の彼と意外な形で再会する事となった藍李ですが、その彼とこれからどのような展開を迎えるか……コミカル、時にはシリアスに展開させていきたいと思います。

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