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Honey1 ありえない所でやって来る、それが出会い


 この回から登場する入江乃亜のニックネームは、ブログ等でお世話になっておりますイリ先生からお借りさせて頂きました。イリ先生、本当にありがとうございます。



 ――そして五年後



 「それじゃあ、皆の新たな出発にかんぱ〜い!」


 親友のイリの掛け声に続いて、お互い持っていたジョッキを高く上げては乾杯と言いながらガチンと音を立てながら当てる。


 仲間四人で今夜こうして集まったのは、今月からメンバー全員が新たな生活が始まるので、そんなお互いを祝う為からだった。

 その中でも特に明日から新しい生活が始まるメンバーもいるので、それでは今夜に……という事でこうして楽しい時間が始まった。


 そして私、浅倉藍李(アサクラアイリ)もその内の一人だった。

 私とその隣りで笑って話している親友のイリこと入江乃亜イリエノアは、偶然にも二人仲良く同じ高校に教師として赴任する。私は英語教諭、イリは数学教諭として……。


 「それにしてもさぁ、藍李とイリが同じ高校に赴任って! どこまでお前らは仲が良いのか」


 同じく友人の滝野弘樹タキノヒロキがビールを豪快に飲んだ後、口に残った泡を拭いながら言う。そんな弘樹に、私とイリは互いに肩を組んでは

 「そうよ〜。それくらい、アタシたちは仲がいいのです」

 「ねぇ〜! だから僻むんじゃねぇよ!」


 そう言って私の後に続くイリと笑みを見せ合う。そんな私達に、弘樹と柴田奏シバタカナデもハイハイと笑いながら答えていた。


 「でもさ〜。まさか俺達の母校である一宮に二人が教師として戻るとはねぇ」


 盛り上がっていた私達の元にそう言いながらテーブルに料理を持って来たのは、私達と同じ大学出身の友人でもありこの店のオーナーでもある宇佐美直人。彼と私と奏は、偶然にも今回の赴任先である一宮高校の卒業生だった。


 「そういや、ナオトの弟もそこに通ってなかった?」

 「俺ですか? 俺は今年の三月でちゃんと卒業しましたよ」


 奏の問いに、たまたま店の手伝いで来ていたナオトの弟であるルイくんがカウンターでグラスを片付けながら答える。

 ルイくんは、高校卒業したばかりだと言うのにモデルをしているせいかとても大人びた性格をしていて、スタイルを含めて……もちろん顔も好みだった。

 「ルイくん! 仕事なんてしないで、お姉さん達と飲みましょうよ〜」

 「ありがたいけど、まだ未成年なもので……」


 イリの誘いを、ごく当たり前の理由でやんわりと断るルイくん。そんなルイくんにフラれて落ち込むイリを、笑いながら叩いてからかう私と弘樹。しかし、いつの間にかやって来たルイくんがイリの肩に手を置くと

 「こっちのお相手は出来ませんが、別のお相手ならいつでも」

 「是非!」

 ルイくんの冗談を混じらせた言葉に、彼の手をしっかり握っては真剣になって食いつくイリ。あまりにもの必死さに、ナオトもやって来ては笑っていた。


 バカみたいにお酒を飲んで、バカみたいに騒ぎまくる……こんな風に子供みたいに過ごせるのは、今日が最後。明日からは、その子供達の手本となるべき任務が待ち受けているから、今日だけはこんな風に……バカでいたい。


 ―――――


 「あ〜、飲んだらその分出さなきゃっと……」

 「藍李〜、トイレ? 間違って男子トイレ入るなよ〜!」

 「って言うか、トイレで出すんだぞ〜」

 飲み始めてから数時間後、ピッチが早かったのか少々酔いが回って来た。そして、飲み過ぎたせいでトイレに向かう私を同じく酔ってきていた奏たちがからかってくる。


 ……


 「あ〜、かなりスッキリした……ってアレ? ねぇ、ここにあった私のグラスは〜?」

 フラフラとした足取りでトイレから戻って来た私が座ると、そこにはある筈の私のグラスが無くなっていた。いや……グラスというか、受け皿もお箸も無い。

 無いどころか、テーブルは見事に片付けられていて先ほどまでの散らかり様が嘘みたいだった。

 そんな状況に一瞬だけ呆気に取られたが、酔っている為そんなに思考能力が働かない私は既に関心も薄れていた。


 「ねぇねぇ、私のお箸無い〜!」

 そう言って隣りに座っていた弘樹の肩を揺するが、そんな私に傍にあった新しいお箸を持って振り返ったのは……


 「弘樹……じゃない」


 自分が知っている人物では無く居る筈のない初対面の人物を見て呆然としている私に、彼はお箸を渡してくると自分が食べていたものまでわざわざご丁寧に私の目の前に差し出してくる。

 それでも、まだどうしたらいいか解らない私を見て彼は笑みを浮かべていた。


 「えっと……どちら様ですか?」


 当たり前だけど、今は本当にそんな言葉しか思い付かなかった。


 酔いに全てを任せて、僅かな判断すら出来ない状況……

 でも、この素敵とは一切言えないきっかけでも、やがてそれは……


 大きく開花するもの……




 主人公よりも先に名前が登場したイリこと入江乃亜ですが、彼女の名前はイリさまの本名とはまったく関係はございません。あくまで、ニックネームとしてお借りさせて頂いております。お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、この話に出てきた宇佐美兄弟は『これ恋シリーズ』のナオトと琉依です。別の話にもしっかり登場させてしまいました。

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