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僕の姉はブラコンです  作者: 南条仁
僕の姉はブラコンです
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第4話:弟の好きな女の子って誰?

【SIDE:久谷真綾】


 お姉ちゃんは見た!

 こっそりと物陰に隠れて、弟とクラスメイトの女の子が一緒にいる所を目撃していた。

 気になる話の内容はなんと愛の告白!?

 ふにゃぁ……こんな展開、想像してなかったんだもんっ。

 一体どうなっちゃうの!?

 

「私と付き合ってください」

 

 可愛い女の子が響ちゃんに告白する。

 鮮やかな色を見せる夕焼けの輝き。

 淡いオレンジの光に照らされて、ふたりは寄り添うようにして語っている。

 

「前から久谷君のことが気になっていたんだ。この前、私とのデートを受けてくれたよね。その時から告白する機会をずっと待っていたの」

 

「デート、ね……」

 

 この前のデートって何、何なのよ?

 ていうか、この女、私の響ちゃんに何をマジで告白してるわけ?

 どういう関係で……好きなんて言ってるのよ。

 ダメだ、お姉ちゃんは弟を守ってあげるのが役目なのに混乱してどうにもできない。

 

「……久谷君、答えてよ。私のこと、好き?」

 

「何で僕なんだ?……他にも君の周りにはいい人がいるじゃないか」

 

「私がその中でも気に入ったのが貴方だから。それが答えじゃいけないの?」

 

 うわぁ、何なのよ、この女……。

 顔が唇に触れそうなくらいに近くて、そんな光景を見ていられない。

 邪魔してしまいたいけど、したら響ちゃんに怒られちゃうし。

 だからといって、このまま黙ってる事だってできないの。

 

「岸川さん、キミと付き合えたら確かに僕は幸せだと思うよ。頭もよければ、顔もいい、まさに理想の女性だし。……でも、僕の答えはごめんなさい、だ」

 

 響ちゃんは彼女からグッと身体を離してそう言った。

 やった……彼女の告白を断ったの?

 不謹慎ながらも喜んでしまう。

 

「……こう見えても私、告白して振られるのは初めてなのよ。理由くらい教えてくれるかな?どうして、私じゃダメなのか答えてよ」

 

 プライドが高いタイプのようで、彼女は納得いかないとばかりに声を荒げる。

 ……こういう性格の人は1度、傷つけられるとあとで引きずるんだよね。

 

「岸川さんには問題ないよ。とても魅力的だと思ってる。キミとデートしても、とてもよかった。だけど、致命的なことがあるとしたら……それは僕の気持ちだ。残念ながら僕には好きな人がいるんだよ。それも、ずっと前から好きな人が……」

 

 ……お姉ちゃん、再び、ショック!!

 一難去ってまた一難、響ちゃんからの爆弾発言に私の脳内は沸騰寸前。

 響ちゃんに好きな人がいるなんて初耳だよ!?

 

「そうなんだ。好きな人がいるの……。それはどんな人?私よりもいい人かしら?」

 

「僕はそう思ってる。純粋で、可愛くて、どこかほっとけない人なんだ。キミは僕がいなくても大丈夫なタイプだけど、彼女は僕がいないとダメだから。岸川さんの告白を僕は受け入れられない」

 

 はっきりとそう言い切って、彼は彼女に別れを告げた。

 ……カッコいいなぁ、響ちゃん。

 でも、お姉ちゃんの心はハートブレイクでクラクラです。

 ぐすんっ、部屋に帰って枕を涙で濡らすことにしよう。

 

「僕は彼女が大好きなんだ。どうしてもそれを他の人で補う事はできないくらいに」

 

「その人と貴方は両思いなの?」

 

「どうだろうね。僕の片思いかもしれない。彼女も僕を好きでいて欲しい気持ちはあるけれども。実際にそうだという確信はないから。恋愛ってそういうものだろ」

 

 好きな人がいるって堂々と宣言しちゃうとは、弟の成長にびっくり!

 昔は私に好きっていうのだって、可愛くモジモジして言ってたのに。

 

『真綾お姉ちゃん、あのね……す、好きだよ』

 

 今思い出しても萌える思い出のひとつ。

 あの頃の響ちゃんはピュアで可愛かったなぁ……。

 あっ、今でも十分に可愛いけどね。

 ……って、話をそらしちゃいけない、今は大事な場面なのに。

 

「残念ね。久谷君となら上手く付き合えると思ったのに。まぁ、いいわ……。そういう理由なら仕方ないし。月並みだけど、これからも友人でいてもいいかな?」

 

「それをキミが望むのなら」

 

「ありがとう」

 

 そして、そのまま女の子の方は寮へと帰っていったみたい。

 ……何だろう、せっかくふたりの間が上手くいかなかったことにホッとしてるのに。

 私の心は以前よりもモヤモヤしてる。

 さて、いつまでもここにいてもしょうがない。

 彼にバレる前に私は身を翻して帰ろうとする。

 

「……待って。どこにいくつもりなのかな、真綾お姉ちゃん」

 

 ギクッ、何でバレたの!?

 

「……え、あの、その」

 

 彼は私のいる場所へ真っ直ぐにやってくる。

 うにゃー、どうしよう、どうしよう!?

 私は慌てふためいてばかりで、どうしようもできない。

 

「こういう場面、覗いたりするのは反則でしょ。違う?」

 

 私が振り返るとにっこりと意地悪い微笑みを見せる響ちゃん。

 どうして私が隠れている事に気づいたの?

 

「先に帰ったんじゃなかったっけ?真綾お姉ちゃん、どうしてここに?」

 

「それは……。だ、だって気になったんだもんっ!しょうがないでしょ、あんな場所で意味深な言葉で立ち去られたら誰だって気になるし!」

 

「……だからと言ってこういうのはよくないと思わない?弟のプライバシーを覗くのってひどいなぁ。お姉ちゃんはこういう事しないって思ってたのに」

 

「ごめんなさい。まさか告白シーンに出くわすとは思ってなかったの」

 

 こんな事になるならついてこなければよかったぁ。

 響ちゃんに説教されて私はシュンっとうな垂れる。

 彼が怒るのは当たり前、悪いのは私だから。

 

「……ふぅ、別に怒ってるわけじゃないからそんなに落ち込まないで」

 

「でも、お姉ちゃんはルール違反したもん。悪いのは私なんだもんっ」

 

 響ちゃんの顔を見る事が出来ずに視線を俯かせる。

 

「どうして私がいるのに気づいたの?うまく隠れてたのに」

 

「それ以前の問題。ここに来る前に真綾お姉ちゃん、2回くらい転んだよね。荷物をフェンスに引っ掛けたりして。それで気づかない方がおかしい。で、僕のあとをついてきているのを気づきながらも、しょうがないから待ち合わせ場所に向かったわけ」

 

 ……初歩的なミスでした、私は探偵や忍者にはなれそうにもない。

 別に“くの一”とかに憧れたりしてたわけじゃないけど残念。

 響ちゃんは私の頭をふっと手を置いた。

 怒られるっ……と身構えた私の予想に反して、彼は私の頭を撫でてくれた。

 

「……でも、嬉しかったよ。何だかんだ言っても僕の事を心配してくれたんだろ」

 

「うんっ。響ちゃんの様子が気になったの。だけど、もうこんな真似はしないから」

 

「それがいいね。それじゃ、そろそろ帰ろうか」

 

 響ちゃんは私を強く怒らないでくれた。

 こういう所を彼が私の事、妹みたいだって思うんだろう。

 結局、私達は気まずい雰囲気にならずに一緒に帰る。

 優しい弟がいてくれる、私に笑ってくれる。

 それだけでお姉ちゃんは嬉しい。

 ……この気持ち、まさしく“愛”そのものだと思うんだ。

 

 

 

 

 私はお風呂を出てから寝る間際に本を読んでいた。

 恋愛系の少女小説、私の恋のバイブルなのです。

 今、読んでいるのは弟に恋したお兄さんのお話、こういうのが大好きなんだ。

 それはさておき、目の前には私のベッドを占領している美鳥の姿が。

 私は今日のデートの報告を彼女にする、相談と言った方が正しい。

 

「それで、アンタは弟が他の女に告白されるのを黙ってみていたわけ?」

 

「そうなるわね。もう、すっごく心臓がドキドキしたわよ。どうなるかって、冷や冷やしたんだから。でも、はっきり断ったのはカッコよかったなぁ」

 

「……やっぱり、マーヤはお子様よね。そんな非現実的な少年同士の絡みをリアルに描写している小説なんか読んでないで、もう少し普通の恋愛を勉強しなさい」

 

 美鳥は寝転がったまま私にそう言い放つ。

 失礼な、BLは乙女のロマンなのに。

 

「マーヤ、アンタは弟の優しい態度に騙されて、肝心な事を忘れてるじゃない……」

 

「肝心な事って何よ?」

 

「浮かれてそんな事も忘れたの?……響君、結局、誰が好きなわけ?」

 

「……ふにゃ?」

 

 美鳥の追及に私は読んでいた本を思わず床に落としてしまう。

 ちょうど、絡みのシーンの挿絵が開いた状態になる、いやーん。

 

「ふにゃって、何語よ。それと妙な描写の絵を私に見せるな!こほんっ……彼は言ったんでしょ、好きな子がいるからダメだって。その子は誰なの?心当たりとかないの?」

 

 そうなんだ、忘れた事にしていたけど、大切な事を聞けずにいた。

 そういえば、響ちゃんは誰が好きなの?

 昔から仲のよかった子は……ひとり、ふたり……ダメだ、思い当たりすぎる。

 地元でも響ちゃんは女の子に囲まれてモテモテだったから。

 それを必死にお姉ちゃんは守っていたのです。

 私が高校進学でいなくなった去年は彼に近づく女の子は二桁を超えたって噂で聞いた。

 

「……ん、ずっとって事はもしかして、私も該当する?ということは、響ちゃんの好きな人ってまさか私ってこと!?えーっ、どうしよ、どうしよう。困っちゃう~」

 

 そんな……私と響ちゃんが両想いだったなんて、嬉しいよぅ。

 

「いや、そう決まったわけじゃないでしょ。勘違いしすぎだし」

 

「ねぇ、美鳥。その……“勝負下着”ってやっぱり黒色がいいの?」

 

「こらぁ!そんな先の心配する前に、マーヤは恋愛の基礎を勉強しなさい!」

 

 だって、響ちゃんが私のことを好きだって言うんだから、覚悟くらい決めないと。

 溜息をつきながら美鳥に呆れられても、私は浮かれた気分で気にしない。

 でも、私のこの勘違いが後にとんでもない事件を引き起こすなんて……。

 ……って、え?何かまた事件が起きちゃうの!?

 お姉ちゃん大ピンチなんて、そんなの嫌ーっ!

 

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