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僕の姉はブラコンです  作者: 南条仁
僕の姉はブラコンです
14/24

第12話:弟とデートします♪

【SIDE:久谷真綾】


 夏休みに入って数日、その日はとても暑い日だった。

 朝から溶けそうな暑さにうなされながらベッドに寝転がる。

 クーラーは部屋に設置してるけど、電気代がかかるから扇風機で我慢中。

 うぅ、暑いのは嫌い~。

 

「真綾お姉ちゃん、アイス買ってきたけど食べる?」

 

 私の部屋に来た響ちゃんがスーパーの袋を見せる。

 中には私の好きなバニラアイスが入ってる。

 

「バニラアイス。真綾お姉ちゃんは好きだっただろ」

 

「うんっ。ありがとう」

 

 彼から受け取ると私はアイスクリームを食べようと蓋を開ける。

 白いバニラは私が子供の頃から好きな味。

 響ちゃんはチョコレート味のアイスを食べている。

 私が食べようと思って、スプーンですくったそのとき、

 

「ちょっと待った!!」

 

 私に声をかけたのは双葉だった。

 いつもと同じ元気な声、暑いのにすごいなぁ。

 

「あれ、双葉だ。いつ家に入ってきたの?」

 

「そこの弟に聞いてよ。ひどいのよ、私が遊びに来たらいきなり私を倉庫の部屋に押し込んだの。すぐに出てきたけど、この男、女の子にする事じゃないわ。最低よ」

 

「軽い冗談だろ。鍵をかけたわけじゃないし、そんなに目くじら立てることでもない」

 

「ムカつく、マジでムカつく……って、そうじゃない。真綾、そんなアイスは冷蔵庫に入れておいて。今日、遊びに来たのはコレを一緒に食べようと思って」

 

 双葉は何かが入ってるクーラーボックスを私たちの前に見せた。

 ……というわけで、私達はリビングの方へと移動する事にした。

 食べようとしたアイスは冷凍庫に入れて保存、また後で食べようっと。

 

「それでこの中には何が入ってるの?」

 

「じゃじゃーんっ。なんと、高級アイスクリームでーす」

 

「あっそぅ……何でも高級つければいいと思うなよ」

 

 響ちゃんの言葉に彼女は余裕な表情を見せ、鼻で笑う。

 

「はっ、アンタなんて、高級アイスなんて言えば300円のハーゲ●ダッツ程度しか思い浮かばないでしょ。普段、買うのは100円のアイス。そんな庶民の響には食べたくても食べられないくらいにすごいのよ」

 

「庶民をバカにするな金持ち娘。しかも、僕を馬鹿にするって事は真綾お姉ちゃんもけなしているのと同じだからな」

 

「アンタ、バカじゃん?私は別に庶民をバカにするほどお偉い身分なつもりはないわ。ねー、真綾。響が偏見で物事を語るんだけど、こういうのって感じ悪いよねぇ」

 

 あぁ、また二人の仲に亀裂が……これはこれで仲がいいのかな?

 

「さぁて、というわけで一緒に食べようと持ってきたのよ」

 

 自信満々にそう言うと彼女はクーラーボックスを開けた。

 中にはアイスクリームが3つ入っている。

 私達にそれを配ると彼女は説明を始める。

 

「はい、真綾。響、アンタもたまには本物の味っていうのを確認させてあげるわ。感謝しなさい。これは6個で3600円のアイスクリームなの。しかも、限定品で、1ヶ月の予約待ちしなくちゃ手に入らないんだ。すっごいでしょ?」

 

「ふわぁ、すごいね。1個600円もするんだ」

 

 見た目は普通のアイスクリームなのに。

 何でも厳選された牛乳を使用しているから数に限りがあるんだって。

 私はさっそく、そのアイスクリームを食べる事にする。

 

「いただきます」

 

 口に含んだ瞬間、ミルクの風味が口に広がる。

 とても甘くて、美味しい!

 高級感の漂うアイスの味に値段も納得できた。

 

「普通のアイスと全然違うわ。予約殺到なのも分かる気がする」

 

「でしょ。私も初めて、これを食べてからずっとファンなの。どう、響?美味しい?」

 

「僕はこれよりも100円のアイスが好きだな」

 

 響ちゃんはそう言いながらも食べ続けている。

 くどさも後に残らないからクセになる感じ。

 世の中には美味しいものがいっぱいあるんだぁ。

 

「アンタの味の好みなんて知らないわよ。真綾が私の方が美味しいっていうんだから、私の勝ちよ!ふんっ、アンタなんて私が本気を出せば簡単に潰せるんだから」

 

「コレが勝負のつもりだったのか。はい、僕の負けだ。好きにしてくれ」

 

「うわぁ、投げやりだよ。でも、勝者として気分はいいわ。……まぁ、その余裕もこれまでね。真綾、今日は暇かしら?」

 

「暇だけど?」

 

「それじゃ、私と一緒にデートしましょう」

 

 私が双葉からデートの誘いを受けるとすぐに響ちゃんが反応する。

 私と双葉の間に入り込むように移動すると、

 

「何を言ってるんだ、お前……デート?」

 

「世間的に言えば遊びに行く、と言ってもいいけど。私と真綾が遊びに行くのを響に止める権利はないわよね?それに今日は私の勝ちだし」

 

「それは関係ないだろ」

 

 響ちゃんを嘲笑う双葉。

 うぅ、姉としてそういうのはやめて欲しい。

 

「大ありよ。貴方は敗者として、黙って指をくわえてなさい。ほら、真綾。すぐに準備して。私、こんなの手に入れたんだ」

 

「これって、水族館のチケット?」

 

「そう。この間オープンしたばっかりなの。行きましょうよ」

 

 街の郊外にできたらしい新しい水族館のチケット。

 私は魚も好きだから二つ返事でOKする。

 

「うんっ、いいよ。私も行きたい」

 

「よしっ。それじゃ……って、あれ?携帯電話が鳴ってる?」

 

 双葉はバッグから携帯電話を取り出すと、

 

「はい?もしもし~。お父さん?どうしたの……?え?今日?嘘、私はそんなの聞いてないし……。嫌よ、そんなの。私は行かないからね」

 

 何やら双葉はお父さんと揉め事の様子。

 双葉は嫌そうな表情で応答している。

 

「は?来なかったら、勝手に決めるって?ふざけないでよっ!」

 

 今度は怒鳴り声、それを聞いた響ちゃんは苦笑気味に言う。

 

「ホント、口うるさい女だな。絶対、口から先に生まれてきたんだろ」

 

「響、アンタは後で覚えておけ。えっ、あ、ごめん。……うぅっ、分かったわよ。行けばいいんでしょう。無理やり決められても困るし」

 

 渋々と返事すると彼女は電話を切った。

 すっかりと沈んだ表情を見せる。

 

「何かあったの、双葉?」

 

「ごめん~っ。これから私、お見合いだって。親が勝手にお見合い相手と会う約束しちゃってた。もうっ、最悪!面倒だからそんなのしたくないのにーっ」

 

 愚痴る双葉、子供の頃からそういう話がちらほらとあって大変そうだ。

 お金持ちはそれなりに大変だってことだよね。

 

「……ごめんなさい、真綾。誘っておきながら、私はいけそうにない。……おい、響。これ、アンタにやるから私の代わりに真綾と一緒に行ってきて。それ、期限が今日しか使えないから。その代わり、変な事をしたらマジで百回殺す」

 

「……まぁ、そう言うことならあり難くいただくさ。サンキュー」

 

「くっ、敵に塩を送る形になるなんて不覚だわ。真綾、また私とお出かけしてよ?」

 

「もちろんだよ、双葉。このチケットはもらうね。響ちゃんとお出かけだぁ」

 

 

 

 

 ……そんな経緯があって、私達は今、この水族館にいるんだ。

 魚がいっぱい、水槽の中を泳いでいる。

 可愛くて小さなお魚もいれば怖い顔をしてるのもいる。

 魚の個性っていうのもここまで来るとすごいよねぇ。

 どうして魚はこんなにも種類がたくさんいるんだろう。

 私はふと、ある魚のいる水槽に立ち止まる。

 オレンジと黒の縞模様のお魚、有名な映画に出ていた魚だった。

 

「うわぁ、ねぇ、響ちゃん。見てみて、ニモがいるよ。あの映画のお魚~♪」

 

「カクレクマノミって言うんだ。サンゴ礁とかに生息してるんだけど、あの映画のせいで人気が高くなって絶滅しそうなんだってテレビで言ってたよ」

 

「そうなんだ……。こんなに可愛いのに、絶滅しちゃ嫌だな」

 

 人間のエゴは自然を滅ぼす。

 なんて事を考えながら、私達は他の水槽も見ていく。

 私は響ちゃんの腕に抱きついて歩く。

 今日は弟とのデートを楽しむつもり。

 せっかくのチャンス、アピールもしておきたいし。

 

「このお魚も可愛いなぁ。これは?」

 

「……ハコフグだけど、これ可愛い?」

 

「可愛いよ。だって、こんなに目が大きいんだから」

 

 ハリセンボンに似たお魚っていうか同じ種類?

 風船ような身体に大きな目が特徴な魚。

 

「響ちゃんはどういうお魚が好き?」

 

「僕はそうだな……あれなんてどう?カッコよくて良いと思うけど」

 

 彼が指差したのは大型水槽、近づいてみるとたくさんの魚が泳いでる。

 その中でも変わったサメが目立つように存在を示していた。

 

「変わったサメだね。顔がハンマーみたい」

 

「見たまんま、ハンマーヘッドシャーク。こういうのは男は好きだよ」

 

「ふぅん……。私は怖いのは苦手だな。でも、見てるとなんだか落ち着くよね」

 

 今日みたいな暑い日だと水の青い色は涼しさを与えてくれる。

 見ているだけで和むし、響ちゃんと楽しいデートだし。

 私はこういう時間が楽しくてしょうがない。

 

「あっ、この水族館ってペンギンとかいるみたい。見に行こうよっ」

 

「ホント、真綾お姉ちゃんって子供みたいで可愛いよね」

 

「それは私が子供っぽいってこと?」

 

「そうじゃなくて……子供みたいに純粋だってことだよ。真綾お姉ちゃんのそういうところ、僕は好きだな」

 

 “好き”って、彼から言われて私はドキッとする。

 きゃーっ、どんな形でも好きって言われると嬉しいよぅ。

 

「……何かそう言うこと言われると照れる」

 

「そういう所が良いんだ。お姉ちゃんにはずっとピュアでいて欲しい。そう願うのは僕の我がままかな?」

 

 響ちゃんが私の手を握り返してくれて、二人の距離が近くなる。

 もしも、彼と恋人になれたら今以上に幸せになれるの……?

 弟でも幸せなのに関係がさらに発展したらどうなるんだろう。

 大きな期待もあるけど……少しの不安もあったり。

 テンションの上がった状態で私達はペンギンショーも見物する。

 ペンギンは短い足でペタペタと地面を歩く姿が愛らしい。

 

「ああいうの、一匹ぐらい家で飼いたいかも」

 

「……世話するの、大変そうだけどね。見た目よりも乱暴そうだ」

 

「でも、ペット用のペンギンっているんでしょう。200万円くらいするらしいけど」

 

 可愛さだけじゃなくて芸もするんだからすごい。

 私に手が出せない値段の高さだけど、飼う人もいるんだろうな。

 

「また、こういう所へ見に来ればいいさ。今度は僕が誘うから……」

 

「えへへっ。ありがとう、響ちゃん。楽しみにしてるよ」

 

 私は最初から最後まで感動するくらいに水族館を楽しんでいた。

 響ちゃんも私に付き合ってくれて、少しは楽しめたかな?

 最後にお土産屋でペンギンのストラップを購入する。

 すぐに携帯電話にとりつけて、私は彼に見せる。

 

「ほら、可愛いでしょう。ペンギンのストラップ、買っちゃった」

 

「もう1個、買っていたけどそれは?」

 

「これは双葉へのおみやげ。せっかく、チケットをくれたんだからこれくらいはしないと。……これ、気に入ってくれるといいな」

 

「はぁ。真綾お姉ちゃんがそうやって甘やかすから、双葉が調子に乗るんだって」

 

 響ちゃんの溜息に私はくすっと笑いながら、

 

「だって、大事な幼馴染だもん。そうだ、響ちゃん。双葉とはもう少し仲良くできない?私はふたりが喧嘩するのをみたくないから」

 

「それは無理だな。僕たちは性格が違うし、何ていったってライバルですから」

 

 そう言って私の頬を彼は触れると、耳元に囁く。

 

「……あんまりアイツに良い顔しないでね。僕だけのお姉ちゃんでいて欲しい」

 

「ふにゃぁ……」

 

 弟と過ごす夏休みは幸せいっぱいで楽しいの。

 でも、私は幸せなのに……どこか心だけが満たされないでいたんだ。

 

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