1章
一節
契約の間。
蒼白く光る召喚台の上、円環のルーンが淡く脈動している。
その中央に立つのは、一人の青年、カズナ。
召喚器を手に、緊張の面持ちで呟いた。
「……お願いします……。」
使徒が静かに頷く。
「願いは受理されました。降臨、開始。」
ギィィィンッ!
天井にまで響く魔力のうねり。
白光が弾けるように奔り、空間が裂ける。
彼方より落ちる雷鳴のような一閃の中、姿を現したのは、紅きコートを羽織り、曲線の利いた腰に剣を背負う、褐色の肌の美女。
その金眼がカズナを見据えると、ふっと唇を歪めた。
「あたしはブレイド。あんたの剣だ。」
ブーツの爪先で軽く地を蹴るようにして一歩近づきながら、声を低く囁く。
「……あんたのためなら、どこへでもついていくよ。」
腰に手を当て、もう一歩踏み出す。
その距離、もはや息がかかるほど。
艶やかなまなざしで上目遣いに見上げる。
「さ、マスター。なんでも言ってくれ? 遺跡か? ベッドか? ……もうあたしは、あんたのものだ!」
ウィンク。
「……ぶっ……!!?」
瞬間、カズナの鼻から、鮮やかな血が見事に垂直噴出した。
「!? カズナ様!?」
使徒が驚いて前に出ようとするが、青年はただ、顔を手で覆って崩れ落ちた。
「……これ、夢か……?降誕って……こんな破壊力なのか……っ……。」
床に片膝をつきながら、カズナは天を仰ぐ。
頬を伝うのは汗か、鼻血か、あるいは感涙か。
そしてブレイドは、そんな彼を心底楽しそうに見下ろしながら、また言った。
「……ねえマスター。顔、赤いけど、戦う前に……もう一本、剣の練習でもする?」
その日、聖堂にいた世界樹の使徒は記録している。
「最も鼻血の飛距離が長かった初回召喚者」として、カズナの名が刻まれたのだと。
二節
白い空間。
鼓動のような振動と、遠くから聞こえる“誰かの声”。
(……あ、来た)
地面に円が描かれる感覚。魔力が膨れ上がり、力が満ちる。
それと同時に、心の奥に“誰か”の存在が差し込んでくる。
カズナ、という青年。
はじめまして、マスター。
白光を抜けたその先で、彼は立っていた。
まだ少年の面影を残したような整った顔立ち。
どこか影があるけど、誠実そうな瞳。
それを見た瞬間、心の奥でスイッチが入った。
(ああ、こりゃ……間違いない。いい男)
剣を背に、腰に手を当てながら一歩前に出る。
「あたしはブレイド。あんたの剣だ。」
最初は少しだけ不安だった。
でも、この人なら、裏切らない。
この人になら、全部を預けてもいいって、直感で思えた。
それなら、あたしのやり方で、印象を刻むまで。
「あんたのためなら、どこへでもついていくよ。」
少しだけ色っぽく。
でも、ふざけすぎず、本気で。
この一瞬で、自分が「特別な剣」だってわからせるように。
「さ、マスター。なんでも言ってくれ? 遺跡か? ベッドか?」
ウィンク。
その瞬間、彼の顔が真っ赤になった。
「ぶっ……!!?」
鼻から真上に血が噴き出す。
(……あ。やりすぎた)
ちょっとだけ後悔する。でも、後悔しながらも嬉しかった。
あたしを見て、ちゃんと動揺してくれて。
それが、この人が誠実な証拠だって、分かったから。
「……ふふっ」
こっそり笑ったその後ろで、世界樹の使徒が慌てて何か記録していた。
でもあたしの目は、もうずっとカズナだけを見ていた。
この人を守る。
この人を支える。
この人に、「自分の剣でよかった」って思わせてみせる。
だから、どうかマスター。
今はまだ未熟でも、あたしを信じて。
あたしはブレイド。
あんたの剣だよ。
関節
ここはノクティヴェイル。
霧の丘陵に風車が回り、石畳の街道には市の喧騒が満ちる。
城郭都市では鐘が鳴り、魔法の光と鍛冶の火花が交差する。
この世界には、異界から訪れし「転生者」と、精霊石より呼び出される「降臨者」が共に歩む。
剣を取り、呪文を紡ぎ、時に旅を共にし、時に別れを迎える。
すべては運命の糸が紡ぐ物語。
大図書館には世界樹の使徒が座し、来訪者に数多の物語を授けるという。
その物語に魅せられた者は「世界樹の部屋」へと導かれ、運命の石を掲げ、仲間となる降臨者を顕現させる。
誰が隣に立つのか。
誰が心を重ねるのか。
誰が最後にその手を取るのか。
すべては、このノクティヴェイルの中で紡がれる。
三節
ラピスラズリ大陸・サザンクロスベイ。
大図書館前。
白い大理石の階段を降りてきた風が、頬を優しく撫でる。
サザンクロスベイの空は青紫に染まり、黄昏と夜の境目が街の輪郭を柔らかくなぞっていた。
カズナは、大図書館の荘厳な扉を背に、そわそわと視線を泳がせていた。
「……ど、どこに行けばいいんだろうな……初期地点って、もっと分かりやすいのかと……」
ぶつぶつと独り言を漏らす彼の少し後ろを、ブレイドが歩く。
背中に大剣、軽装の鎧、表情は明るく、けれどその瞳は主を常に気にしていた。
「……なあ、マスター。今夜、あたしら、どこで寝る?」
冗談めかすように肩をすくめる。
「まあ、寝袋一個あれば、道端でも十分だぜ? それにあたし、夜目も利くし、獣よけもできるし、結構たくましいんだよな、こう見えて。」
にっと笑って見せた彼女に、カズナは少しだけ困ったように首を振った。
「いや、それはダメだ。……君に、そんな思いはさせたくない」
ブレイドの目が少し見開かれた。
「近くに……その、宿があった。図書館の案内所で教えてもらったんだ。ちょっと古いけど、20ゴールドで二人一部屋。屋根もあるし、ちゃんとベッドも……。」
言いながら、カズナは頬を赤く染め、視線を逸らす。
「も、もちろん!べ、別に変なことするわけじゃないから!ベッドも別々っていうか、あの、あっちに一つ、こっちに一つっていうか……!」
早口になっていく彼の様子を見て、ブレイドは思わず吹き出してしまった。
「ははっ、マスター、顔真っ赤だぞ?」
「う……うるさい……!」
けれどその頬の火照りには、まっすぐな優しさが宿っていた。
「でも、ありがとな。……そう言ってくれるの、嬉しいよ。」
ブレイドは、軽くカズナの肩を拳でとんとんと叩いた。
「安心しな。マスターが決めてくれた場所なら、どこだって……“安心できる場所”って思える。」
その言葉に、カズナは照れながらも、静かに頷いた。
二人の影が、だんだんと長くなる石畳の道。
まだぎこちない主従関係だけれど、風の匂いや足音のリズム、心の距離は少しずつ、寄り添い始めていた。
四節
サザンクロスベイ。
宿「アスターの小部屋」食堂。
木造の小さな食堂には、かすかにスパイスとパンの匂いが漂っていた。
夕暮れを受けて、オレンジ色の光が窓から差し込み、食堂全体を柔らかく染めている。
カズナは、質素ながらも清潔に整えられたテーブルに腰を下ろし、目の前の皿を見つめていた。
「……これが、5ゴールドの夕食か……意外と、ちゃんとしてるんだな……。」
皿の上には、焼き目のついた鶏肉と、香草で味付けされた豆の煮込み。
そして黒パンが二切れ、ちょっと固めだが香ばしい匂いを放っている。
向かいの席では、ブレイドが剣を椅子の横に立てかけながら、パンをちぎっていた。
「なーに驚いてんだよ。あたしなんて野草と乾いたビスケットで何日も凌いでたんだからな、これでも宴だぜ、宴!」
豪快に鶏肉にかぶりついた彼女を見て、カズナは思わず笑った。
「……はは。なんか、ブレイドって、ほんと頼もしいな。」
ブレイドは口をもごもごさせながら、少しだけ顔を赤らめる。
「そりゃあ、あたしはあんたの剣だからな。あんたを守るって決めたんだよ。腹ペコで倒れてたら、守れねぇだろ?」
「……そういうとこ、すごく好きだよ。」
ふと、言ってからカズナは自分の言葉に気づき、口元を押さえた。
「い、いや、好きっていうのはその、信頼してるって意味で……あの……ええと……。」
もごもごと視線を落とすカズナに、ブレイドはにっと笑って、パンをひとつ差し出した。
「わかってるよ、マスター。……でも、ありがとな。」
それは、いつもの軽口混じりの笑顔ではあったけれど、どこか、ほんの少しだけ照れたような、柔らかい微笑だった。
二人の皿からは、じきに料理がなくなり、温かな満足感だけが残った。
この夜が、たとえ小さな宿の食堂でも。
この時の二人にとっては、冒険のはじまりを照らす大きな食卓だった。
五節
食堂をあとにして、二人が案内されたのは、建物の奥、二階の突き当たりの角部屋だった。
女将の案内でドアを開ける。
「……あれ?」
先に部屋へ足を踏み入れたカズナの声が、一瞬固まった。
部屋は想像していたよりずっと広い。窓辺には小さなテーブルと椅子。ランタンの明かりが暖かく揺れている。
だが。
中央に、どんと鎮座するキングサイズのベッドが一台。
カズナは呆然と、それを見つめた。
ブレイドも、遅れて部屋に入り、ベッドを見て──一瞬だけ目を見開いた。
「……あー……なるほど、こう来たかぁ。」
「え、えっと……女将さん……たしか、“二人一部屋”って……!」
慌てて振り返ったが、女将の姿はもうなかった。
きっと気を利かせたつもりなのだろう、ベッドは広く、ふかふかそうで、清潔感もある。
けれど、一つしかない。
「まぁ……キングサイズだし、寝返りうっても落っこちることはなさそうだな。」
あっけらかんとした様子でベッドに近づき、ぽんぽんと手で確かめながら、ブレイドが笑う。
「ど、どうする……?俺、床でもいいし、ブレイドが嫌なら、あの、椅子でも……。」
「ははっ、そんなことしたら、明日あたしが先にぶっ倒れちまうって。あんた、遺跡攻略するんだろ? 寝とけ寝とけ。あたしはもう慣れてる。」
言いながら、ブレイドはベッドの端に腰を下ろすと、片方の手でぽんぽんと空いた側を叩いた。
「……ちゃんと背中向けて寝るなら、許してやるよ?」
からかうようにウィンクする彼女に、カズナの顔は一気に真っ赤になった。
「~~っ、そ、そりゃもちろん、ちゃんと寝る、寝るだけです! 他意はないです! ほんとに!」
「ふふっ、わかってるって。……あたし、信じてるから。」
からかいの中にほんの少しだけ、本気の信頼が混じっていた。
剣のように強く、けれどあたたかい眼差しで、ブレイドはカズナの横顔を見つめた。
かくして、旅の初夜は、思った以上に心が忙しい夜となった。
六節
深夜。
真っ暗な天井に、何度も視線を向けては逸らす。
カズナの背中にぴったりと張りついたブレイドの体温が、じわりと彼の鼓動を早めていく。硬くなる喉。けれど隣の彼女の呼吸は静かで……それでいて、決して寝息ではなかった。
やがて……。
「なぁ、マスター……起きてるか?」
小さな囁きが耳元に届いた。わずかに身を起こしてカズナが頷くと、彼女の手がそっと彼の胸に置かれた。
「……はっきりさせときたいんだけど……。」
ブレイドの声は、普段の豪快さと違い、どこか不安げで、けれど熱がこもっていた。
「……あたし、あんたが好きだ。この気持ちは、絶対にこれからも変わらない。どんな場所でも、どんな時でも……あたしの一番は、あんただよ。」
言葉を重ねるたびに、指先が震えるのがわかった。
「……マスター。旅の途中で、やきもきしてるくらいなら……今夜だけでもいいから、あたしを、あんたの……」
それ以上は言葉にできず、彼女はカズナの手を取り、そっと、自らの胸元へと導いた。
触れた指先に伝わる、熱と、震え。
「……ブレイド、震えてる?」
問えば、返ってくる声は、か細く掠れていた。
「……初めて、なんだ。あたし。」
その言葉に、カズナも小さく笑った。
「俺もだよ……同じだ。……ありがとう、ブレイド。」
ふたりは、重なるように唇を寄せ、手を取り合いながら、そっと静かに、初めてを重ねていった。
ぎこちなさも、不器用さも、すべてが愛おしい。
互いの心を探るように、何度も確かめ合い、言葉より深く、熱より優しく、二人は繋がっていった。
夜が巡り、鋭い痛みがブレイドの下から全身へと走る。
最初は戸惑い、照れ、頬を赤らめながらも、ふたりの身体は次第に呼吸を合わせていった。
二度目、三度目、そして。
気付けば、四度目の静かな交わりが終わったあと。
カズナは彼女の髪をそっと撫でながら、ひとことだけ囁いた。
「愛してるよ、ブレイド。」
その言葉に、ブレイドはぎゅっとカズナの胸に顔をうずめた。
「……あたしも、マスターのものだよ。ずっと、ずっと、ずっと。」
窓の外では、かすかな朝の気配。
けれど、ベッドの中のふたりは、まだ夢の中にいるように、静かに眠りへと包まれていった。
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七節
夜明け前。
うっすらと差し込む朝の光が、薄いカーテンを透かして部屋に広がっていた。
ベッドの中、隣で静かに眠る彼の背中を、私はそっと指先でなぞる。
……ああ、ほんとに、現実なんだ。
カズナの心臓の音が、背中越しにかすかに聞こえる。
ぴったりと寄り添ったこの距離は、この夜、初めて自分から願って手にしたもの。
夢みたいだって思った。今も、ちょっと信じられてない。
「あたしを、あんたのものにしてくれないか?」
あの時、自分で言った言葉が頭の中でぐるぐると回る。
震えた。ほんとは怖かった。でも……それ以上に、あたしは、あんたと“繋がりたかった”。
旅の途中で置いていかれるかもしれないって不安も、他の誰かに目移りされるかもしれないって焦りも。
全部、あたしの中で溶けた。
……だって、マスターは言ってくれたから。
「愛してるよ、ブレイド」って。
あの瞬間、心の奥で何かがじわっと溢れて、涙が出そうになった。
今まで、誰にも言われたことがなかった。
強がって笑ってばかりの自分に、真っ直ぐ、温かく、まっすぐぶつけてくれた言葉。
「……ふふっ……なんだよ、あたしらしくねぇな……。」
頬を指でこすって、苦笑い。
でも、いいんだ。あんたの前だけは、ちょっとくらい甘えたって。
そう思って、私は彼の胸にそっと額を預ける。
カズナが、寝息の中で微かに眉を動かす。大丈夫、まだ眠ってる。
あたしは、あんたの剣だ。
けど、もしあんたが望むなら、あたしは盾にもなる。
命を張って、どこまでも、何があっても、あんたを守るって……もう、決めたんだ。
「……あたしのマスター。」
ふっと、口元に笑みが浮かんだ。
しっかりと彼の手を握る。
さあ、今日からあたしは、あんたの隣を歩く。
恋人として。仲間として。
この世界で、たったひとつの、剣として。
八節
朝。まだ、旅が始まる前。
香ばしいパンの焼ける匂いに、思わず鼻をひくつかせる。
湯気の立つスープ。薄いベーコンの塩気。
まさか自分に、こんなに“ちゃんとした”朝ごはんを、誰かと並んで食られる日が来るとは。
「……熱いから、気をつけろよ。」
斜め向かいに座るカズナが、スプーンを差し出しながら、そう言った。
なんでもない仕草。けど、なんか……くすぐったい。
「ん。ありがと、マスター。」
自然と笑みがこぼれる。昨夜のことを思い出すと、顔が少し火照ってしまうけど、嫌じゃない。
むしろ、あったかい。胸の奥が、ほんわかする。
カズナはと言えば、私と目が合うたびにそっぽを向いて、パンをかじるふりをしてる。
……可愛い。
へへ、やっぱり照れてる。あんたも、同じ気持ちだったんだな。
「なぁ、マスター。」
「……ん?」
「今日も一日、よろしく頼むな。」
私は、手のひらをそっと彼の上に重ねる。
その一瞬だけ、彼の目がまっすぐこっちを見て、そして……うなずいてくれた!
「……ああ。俺も、よろしくな。ブレイド。」
その返事が嬉しくて、私は黙ってパンをかじった。
しょっぱいはずの味が、どこか甘く感じたのは……。
たぶん、あたしのせいじゃない。
きっと、この人のせいだ。
九節
朝食を済ませた後、二人は宿を後にして街を歩き出した。
ぎこちない足取りながらも、どこか嬉しげに並んで歩く姿は、まるで“旅人”だった。
「で、マスター。転生者ギルドってのはどこにあんだ?」
「えっと……確か、“フクロウカフェ”って店の奥にあるって、最初に聞いてた。」
商店街の外れにある小さなカフェ。その木の看板には、ふくふくしたフクロウの絵が描かれていた。
店内に入ると、客の誰もが冒険者風の風貌をしており、にぎやかに地図やクエストについて語り合っている。
カズナが無言で召喚器を見せると、店長はコーヒーポットの手を止め、無言で奥の扉を指さした。
その先。召喚器をかざすと、鈍い音と共に重厚な扉が開いた。
「……なんか、秘密基地って感じだな。」
ブレイドが口元を綻ばせた。
中は二階まで吹き抜けの広々とした酒場のような空間だった。
転生者とその降臨者たちが、まるで現実の都市のように、真剣に情報を交わし、戦果を語り合っている。
奥のカウンターには、バーテンダー風の格好をした受付嬢が立っていた。
カズナが近づくと、彼女は軽く会釈をして言った。
「転生者様ですね。ようこそ、ラピスラズリ大陸の転生者ギルドへ。こちらが本日の初心者向けクエストと、無料のウェルカムドリンクになります。」
渡されたのは、シトラス香る炭酸の入った小瓶と、革張りの小さな依頼帳。
ブレイドがそれを受け取りながら、横目でカズナを見た。
「なあ、マスター。あたしら……ようやくスタート地点に立った感じ、だな。」
「……うん。ここから、ようやく“俺たち”の旅が始まるんだ。」
二人は並んで、掲示板に目を向けた。
そこには、まだ誰も知らない、けれど確かに刻まれるだろう“ふたりの物語”の空白が、静かに待っていた。
十節
転生者ギルド、掲示板前。
ギルド受付で初心者用クエストの案内を受けたカズナとブレイドは、掲示板前に立っていた。そこには多くの紙片が貼られ、剣の柄のようなマークが刻まれた「初級」カテゴリの欄に、手書きの依頼が並んでいる。
「どれにする、マスター?」
ブレイドが気軽に尋ねる。けれどカズナは、やや真剣な表情で一枚の紙を見つめていた。
『【初心者向け討伐依頼】
ゴブリンの群れを駆逐せよ。
依頼主:サザンクロス・ベイ警備隊
報酬:500G+戦利品換算(換金可)
備考:洞窟に潜伏中、位置情報あり。徒歩一日、地図配布中。』
「……これが良さそうだな。距離も近いし、戦利品も換金できるってさ。」
「おっ、王道クエストってやつか。腕慣らしにはちょうどいいな。」
そう言ってブレイドは得意げに笑った。昨夜の柔らかな笑顔とはまた違う、男としての表情がそこにあった。
ふたりは受付へ戻り、依頼票を差し出す。
「ゴブリン退治、受けます。」
カズナの声に受付嬢が頷く。
「確認しました。報酬は500ゴールド、戦利品の換金は帰還後の査定になります。あとは……はい、こちら。」
そう言って差し出されたのは、地図と呼ぶには少し粗めな、羊皮紙に描かれた簡易な案内図だった。山のふもとに点を打ったように記された「ゴブリン洞穴」の文字が、かえって緊張を煽る。
「徒歩でおよそ半日。道中に小さな野営地もありますが、ゴブリンの見張りがいることもあるそうです。お気をつけて」
「おう。サンキュ、姐さん。」
ブレイドが親しげに礼を言うと、受付嬢もにっこりと笑った。
「健闘を祈ります。おふたりならきっと、大丈夫ですよ。」
小さくうなずいて、カズナとブレイドはギルドを後にした。
新たな冒険のはじまりを、ひとつの地図が導く。
陽の高まる空の下、ふたりの歩幅が重なる。
道の先には、剣を試す機会と、新たな絆の物語が待っていた。
十一節
ゴブリンの洞窟。
湿った空気が喉にまとわりつく。かび臭い岩肌の間を、血の臭いと獣の唸り声が満ちていた。
「こっちは三体確認! 来るぞ、マスター!」
ブレイドの叫びとともに、洞窟内に金属音が響く。
振り下ろされる剣。唸りながら飛びかかるゴブリンの腕を斬り落とし、そのまま一体を突き刺して地面に押し倒す。
戦士の瞳は、迷いがない。
だが、敵は数で攻めてくる。ブレイドが三体を相手にしている間にも、別方向からさらに三体が襲いかかってきた。
「マスター、下がれッ!」
ブレイドが叫ぶも、カズナの背後にも一体が迫っていた。
剣を持たないカズナは咄嗟に足元の岩陰に転がっていた鉄のハンマーを掴み、恐怖で震える手でそれを振り上げる。
「うおぉおおッッ!!」
鈍い音と共に、ゴブリンの頭が陥没し、その場に崩れ落ちた。
息を切らせたまま立ち尽くすカズナ。
その背に血飛沫を浴びながら、ブレイドが息を荒げて振り返る。
「カズナ……やったのか、今の……。」
震える彼の手には、血に濡れたハンマー。
「う、うん……今の、俺……。」
「……すごいじゃねぇか、マスター。」
そう言って、彼女はふらりと寄ってきて、迷いもなく抱きしめた。
剣を振るってきたのは自分だ。
けれど今、命を救われたのは、間違いなくあたしの方だった。
「……ありがと。……ほんとに、ありがと。」
その言葉に、カズナはただ頷くしかなかった。
戦闘を終えた洞窟の奥には、旅人らしき犠牲者たちの荷物が散乱していた。
その中から、ブレイドが破れた布袋を手に取る。
「おい、これ見てみろ。……全部で、500ゴールドはあるぜ……!」
中には、割れた金貨袋や巻物、指輪。
そして、封筒に入った紙。
「……船のチケット? “ローマリア行き”、二枚?」
カズナとブレイドは顔を見合わせる。
サザンクロスベイからは南西、海を越えた聖王国の都。チケットには“二泊三日の航路”と書かれていた。
「行ってみるか、マスター。せっかくなら……ふたりで。」
「……ああ。行ってみよう、ブレイドと一緒に。」
旅の終わりではなく、旅の始まり。
ふたりの視線は、洞窟の奥から漏れる夕焼けに向けられていた。
歩いて半日。
翌日、転生者ギルドに戻ると、クエストの報告はすぐに終わった。
受付嬢はふたりの報告書を読み、静かに頷く。
「……ご無事で何よりです。報酬は……こちら、500ゴールド。ご苦労様でした。」
ふたりは揃って礼を言い、その足で市場通りへと向かう。
「船旅だろ? 着替えくらいは買っておいた方がいいよな。」
「へへ、マスター、あたしにドレス買ってくれるのか?」
「い、いや、それはちょっと……。」
「冗談だよ、冗談!」
笑いながら手を取り合い、夕暮れの市場を歩くふたり。
旅の続きは、まだ始まったばかりだ。
十二節
二泊三日の船旅は、想像していたよりもずっと静かだった。
ローマリア行きの小型商船は、数人の旅客を乗せ、サザンクロスベイの港を後にした。風は穏やかで、波も優しい。けれど、その穏やかさは──ブレイドの胸の奥に静かに巣食う、ある「不安」を取り去るには、少し物足りなかった。
「よし、節約モードでいこう。ほら、これ……朝市で買った保存食、まだあるし。」
甲板に腰を下ろしながら、カズナがそう言って乾いたパンと干し肉を取り出す。
赤く染まりはじめた水平線の夕日を背に、彼はどこか楽しそうに、そして照れくさそうに微笑んだ。
その笑顔が……痛かった。
「……ありがと。いただくね、マスター、」
ブレイドも笑ってみせた。でも、目は笑っていなかった。
風に靡く髪の奥で、彼女の心は静かに沈んでいく。
あたしは……あたしは、一般降臨者。
俗に、コモンと呼ばれる存在。
それは、村の娘と同じ、ただの「その他大勢」。
どんな物語でも、主役になれない、背景にいるだけの存在。
カズナは、知らない。
この世界では、レアリティがすべてだということを。
神話、伝説、希少……そしてその中の、4つあるカーストの中の、最も下にある、ただの「一般」。
あたしには、特別な過去も、失った記憶もない。
誰かの血筋でもなければ、神に選ばれた存在でもない。
剣の技だって、昨日のゴブリン退治が精一杯だった。
「……でも、あたしは、あんたの剣でいたいって思ったんだ。」
その言葉が、喉の奥から今にも溢れてしまいそうで、ブレイドはそっと唇を噛みしめた。
隣で、何も知らないマスターは、夕日を見つめながら干し肉をかじっている。
優しい目をしてる。あたしの話を、ちゃんと聞いてくれる人だ。
だけど。
だからこそ……言えない。
旅が続けば、きっと他の降臨者と出会う。
その中には、あたしより強くて、綺麗で、才能があって、記憶も物語もあるような人が……。
そうなった時、あたしは……この人の隣に、いてもいいのかな……。
「……」
気づけば、涙が滲んでいた。
自分でも気づかないうちに、頬を伝って落ちていく。
「……ブレイド? どうしたの……?」
カズナの声が、驚きと優しさを含んで響いた。
だめだ、言葉にしたくない。
この想いを言葉にしてしまったら、全部壊れてしまいそうで……。だから、ブレイドは答えの代わりに、彼の手を取り、そっと体を寄せた。
「……んっ……。」
驚くカズナの唇に、自分の唇を重ねる。
それは、熱くて、泣きたくなるほど、切ないキスだった。
頬を濡らした涙を、そっと指で拭いながら、彼女はぽつりとつぶやく。
「……あたしを、愛してくれる……?」
風が吹いた。船が、波をわけて進んでいく。
沈む夕陽が、ふたりを金色に染め上げる中。
カズナは、彼女の手をぎゅっと握りしめた。
「……もちろんだよ。ブレイド。ずっと、ずっと、俺のそばにいてほしい。」
その言葉に、ブレイドの涙がまた溢れた。
でも今度は、悲しみじゃなかった。
胸の奥が、温かくて、震えるほど嬉しくて。
彼女は初めて、心から微笑んだ。
十三節
夜の海に、船の揺らぎは静かだった。
一般船室の小さな寝具。壁にかけられた魔法照明が、淡く優しい光を灯している。
カズナは、そっと彼女の耳元に口を寄せる。
「……ブレイド、愛してるよ。」
その声は、熱を帯びながらも、まるで祈るように柔らかだった。
ブレイドは一瞬きゅっと目を閉じ、そして、潤んだ瞳で彼を見上げる。
「……マスター……。」
声にならない想いを、そっと微笑みに込めた。
けれど、その瞳の奥には、こぼれそうな涙の光。
それでも彼女は、優しく微笑みながら、カズナの唇に自らの唇を重ねる。
その口づけは、確かな愛の証。
「……お願い、今だけは……このままでいさせて」
同時に、心の奥で叫ぶように、ブレイドは願っていた。
たとえ自分が、“一般”と呼ばれる最低ランクの降臨者だったとしても。
たとえ、いずれ彼がもっと強く美しい誰かを手にしたとしても。
それでも、いまだけは。
今だけは、この愛が本物であると信じたかった。
「……マスター。」
カズナの腕に抱き寄せられた彼女は、そっと髪を撫でられる。
温もりが、優しく背中を伝うたびに、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
どうか、この瞬間が永遠に続いてくれたら……。
けれど、それが叶わぬ夢だと知っているからこそ、ブレイドは目を閉じ、そっと彼の体に身を預けた。
夜の静寂に溶けるように、ふたりの影がひとつになっていく。
重なる体温。
熱を帯びた息遣い。
互いの輪郭が曖昧になってゆくたびに、想いは深く、絡み合う。
「……あたし、全部あんたにあげる。心も、身体も、名前さえも……。」
ブレイドの囁きが、揺れるカーテンのように優しく空間を染めた。
そして。
何度も確かめ合うように、ふたりはひとつになり、夜明けまでその愛を交わし続けた。
吐息と鼓動と涙の混ざった夜。
ブレイドの胸の中で、ただ一つの願いが繰り返される。
……時よ、とまれ。汝は、美しい。
十四節
朝。
静かに、波が船体を撫でていた。魔法照明の光が消え、薄明るい空の光が、狭い船室のカーテンを透かして差し込んでくる。
私は、起き上がれずにいた。
カズナの胸に頬を寄せたまま、昨夜の熱の残るその胸のぬくもりを、まだ手放したくなかった。
……あんなに求め合って、何度も名前を呼び合って、言葉より深く、想いを交わして……私は、あなたに全てを捧げた。
身体も、心も、たぶん、未来も。
「……ふふ。ばっかみたい、あたし。」
囁く声が、ちょっとだけ震えた。
だけど泣くのは違うと思った。
だって彼は、知らない。
私が“ただの一般降臨者”で、何の特別な力も、記憶もないってこと。
そしていつか、その事実が彼を遠ざけてしまうかもしれないことも。
「……けど、いまだけは……いまだけは、いいよな。」
涙が溢れそうになるのを、私はぎゅっと飲み込んだ。
手の甲で目元を拭う。
起こそう。いつまでも弱さに沈んでたら、きっと彼が気づいてしまうから。
私は、そっとカズナの頬に手を添えて、ゆっくりと揺らす。
「……マスター。朝だぞ。そろそろ起きろって。」
眠そうに眉をひそめた彼が、ゆっくりと目を開ける。
「ん……ブレイド……。」
「おはよう、マスター。」
笑った。涙の跡を見せないように、いつもの調子で。
彼はまだ夢の中にいるみたいな顔で、私を見ていた。
その目に映る私は、今も“彼のもの”でいられるのかなって思いながら。
私は、剣のように凛として、恋人のように優しく、
その朝を迎えた。
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十五節
夕方。
ロマーリア港に、潮風とともに旅人のざわめきが押し寄せていた。
空は茜色に染まり、海面はその光を受けて黄金に輝いている。
ゆっくりと船を降りたカズナとブレイドは、手をつないだまま、港の石畳を踏みしめた。
「……すごいな、この街。あっちもこっちも灯りがともってる」
ブレイドが目を見張る。
大通りの入り口には、青白い魔法灯が等間隔に並び、道ゆく人々の足元をやさしく照らしていた。
露店からは焼いた貝の香ばしい匂いが漂い、楽団が奏でる音楽が路地から聞こえてくる。
「……都会だな。ラピスラズリとは、また違う賑わいだ」
そう言ったカズナの声には、どこか緊張が混じっていた。
新しい土地、新しい出会い。
そして、もしかしたら新しい別れ。
ブレイドはそっとカズナの手を握り直す。
彼の手はあたたかく、優しく、確かだった。
「マスター、宿どうする? あたし、別に野宿でも。」
「ダメ。」
カズナはすぐに言った。
その声に、愛しさがにじんでいた。
「疲れてるだろ? ゆっくり休める場所を探そう。……昨日、ずっと起きてたしな、俺たち。」
「……へへ。そうだな」
ちょっとだけ照れながら、ブレイドは頬を染めた。
二人は港から続く商業区を歩き、ほどなくして見つけた宿の看板に目を留めた。
《海鳴り亭》。
青い木製の扉と、小さなランタンの灯りが目印の、こぢんまりとした旅人向けの宿。
「……一泊、ふたりで30ゴールドって書いてあるな。夕食と朝食つき……どうだ?」
「十分すぎるよ。あたし、屋根があって、あんたの隣で寝られれば、それでいい。」
笑うブレイドに、カズナも自然と笑みを返す。
ふたりの影が、港の灯りの中で重なった。
こうして、彼らのロマーリアでの夜が、またひとつ、始まった。
十六節
宿の一階、食堂の片隅。
木のぬくもりを感じるテーブルには、香ばしく焼かれた魚のプレートと、野菜の煮込みスープ、薄いパンとバターが並んでいた。
「……これで30ゴールド、悪くないな。」
パンをかじりながら、カズナは天井の梁をぼんやりと見上げた。
けれど、その瞳はどこか不安げ。
静かにナイフとフォークを動かしていたブレイドが、それに気づいたようにそっと訊いた。
「……マスター、心配ごとか?」
「ちょっとな。……船代とか、道具の補充とか、旅費が思ったよりかさみそうでさ。俺……金のやりくりとか、正直得意じゃないから。」
肩を落とす彼に、ブレイドはパンのかけらを手でちぎりながら、にっこりと笑った。
「じゃあ、稼ごう!あたしら、いいコンビだろ? 転生者ギルドでクエスト見て、どんどん行こうよ。そしたら、屋根のある宿に毎晩泊まれて、あんたの手料理も食べられるかも。」
「手料理はおまえのがうまいだろ」と苦笑しながら、カズナはそのまなざしに救われる。
ブレイドの言葉はいつも真っ直ぐで、何気ない一言が、胸にあたたかく沁みた。
「……ありがとう、ブレイド。ほんとに、おまえに出会えてよかったよ。」
「ふふ。あたしもさ。マスターと一緒じゃなきゃ……きっと、こんな笑顔になれなかった。」
そう言って、彼女はテーブルの下で、そっと彼の手を握った。
そのぬくもりに、二人の心が静かに繋がっていく。
その夜。
二人は宿の二階の部屋へと戻った。
窓の外では波の音。
カーテンの隙間から、魔法灯のやわらかな光が差し込んでいる。
ベッドはひとつ。
昨日の船室よりも少し広く、枕も二つ置かれていた。
「おやすみ、マスター。」
そう囁いたブレイドが、ベッドの端に腰かけるカズナの肩に、そっと頭を預ける。
「……あのさ、ブレイド。」
「ん?」
「今日一日、ありがとう。俺、ほんとにおまえがいてくれて……嬉しい。」
その言葉だけで、胸がいっぱいになった。
ブレイドは、ゆっくりと顔を上げ、彼の瞳を見つめた。
「……じゃあさ、今夜も……おやすみの、キスしてくれる?」
カズナは照れながらも微笑み、彼女の唇に、そっと自分の唇を重ねた。
ひとつのキスが、ふたつ、みっつ。
やがて、指が絡まり、身体が重なり、熱がふたりのあいだに立ちのぼってゆく。
「……マスター……好きだよ。あたし、あんたのものになれて、幸せだ。」
頬を染め、囁くブレイドの声は震えていたが、確かに甘やかで。
その夜、ふたりはまたひとつ、おたがいを深く知り合った。
愛しさと、優しさと、ほんの少しの切なさ。
それらを抱きしめながら、ふたりは夜の中に、静かに溶けていった。
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-十七節
翌朝。
港町ロマーリアの空は清々しく、大神殿の尖塔が朝日を浴びて金色に光っていた。
宿を出たカズナとブレイドは、すぐに目的の場所を見つけた。
ロマーリアでもっとも栄えた一角。大神殿の参道を挟んだ、石畳の広場の正面。
そこにそびえていたのは、石造りの二階建ての建物。
入り口には銀の装飾が施され、堂々たる紋章が掲げられている。
それは、転生者にだけ許された特別な場所、《転生者ギルド》だった。
「……あれだな、間違いない。」
カズナがぽつりと呟く。
昨夜は小さな宿の一室で静かな夜を過ごしたが、こうして日が昇れば、再び現実がふたりを旅へと駆り立てる。
その手には、黒革のベルトにつけた“召喚器”。
懐中時計ほどの大きさで、時計ではない。
それは彼がこの世界に来た時から身につけていた、いわば、転生者の証明。
「じゃあ、いくぞ。」
カズナが懐中電灯のようにそれを掲げ、建物の前にある魔法刻印の台座へと差し出す。
「照合確認──完了。」
無機質な声とともに、ギルドの扉が静かにスライドして開いた。
扉の内側からは、微かに魔力のきらめきが流れてくる。まるで、異界と現実の境界を超える瞬間のようだった。
「なんか、神殿っぽいのに……この入り口だけやたら近未来的だな。」
「へへ、カズナってたまに言うよな。そういう、例え。」
ブレイドが楽しげに笑うと、カズナも照れくさそうに小さく肩をすくめる。
「ま、あたしらだけが入れる場所だ。……いいよな、ちょっと特別な感じがして。」
彼女がそう言って、扉の向こうへ一歩足を踏み入れる。
カズナも続いた。
中は、冒険者ギルドとは違う落ち着きと洗練が漂う空間だった。
壁面に掲げられたギルドの理念や古文書の魔導的意匠。魔法の光がゆったりと天井を照らし、足元には淡いブルーの絨毯が敷かれている。
ホールの正面には、トレード申請、クエスト紹介、情報交換と書かれたカウンターが並び、すでに数人の転生者たちが集まっていた。
その背後には、降臨者たちもちらほら。
それぞれの主を支えるように控えている。
ブレイドは、それを見て少しだけ背筋を伸ばす。
あたしも、マスターの隣にいる“誇れるパートナー”でありたい。
あの夜、そう思った誓いを、今日も胸に秘めて。
「……よし、今日からロマーリアでの冒険、始めようぜ、マスター。」
ブレイドがにっこりと笑う。
カズナは、その瞳にまっすぐ応えるようにうなずいた。




