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先輩、業務委託入札説明中

 殺人業務委託は電子入札システムで行うから説明するよ。我々は直接に殺人できないからね。

 ちょっと大変だと思うけどメモしながら頑張ろう。大丈夫、事務自体はただの入力作業だからね。


 一通りデータ入力してみたら全部消してね。で、本番では初めから一人で入力してもらって、最後で一緒に確認しようね。

 

 まずは、ここに入札予定価格を入力、そう、ここが税抜価格。後は自動で税額計算してくれる。この価格を決めるのを設計というんだけど、後で数字を入れ替えたりして練習してみてね。役所にとって、この設計した価格が正確さの売り所というか、世間一般的な人件費や労務費その他等の費用を算出するんだ。入札された価格と設計額の乖離が激しいと、あの町は不適正な金額で民間を働かせているって言われちゃうんだ。低い金額で入札が決まると「役所は不正に低価格で入札を行った」って言われちゃう。逆に高い金額でも「役所は余分に業務委託した、癒着では?」って責められてしまう。ここが一番準備で面倒なところだね。前年度を参考にしていると分かりやすいよ。何を数値の根拠にしたか分かりやすくまとめてあるから。


 次に、入札指名者を設定していくんだけど、最近はここでソートをかけられるようになったんだ。基本的に町内業者を設定するよ。それから昨年の実績順に並べ替えて……指名者数は入札予定価格に併せて変わるから注意してね。今年は、新規の業者や廃業したところもないから前年度と一緒の認定許可業者になる。毎年、問題なくやってくれている会社ばかりだから安心だね。他に価格と別で総合的判断をする入札もあるけど、それは別の業務だからその時に説明するね。ここの上から4業者の社長は、社長自身が人を殺した経験もあるし、後任の育成も評判が良いよ。この業務は経験が生きるからね、実際に人を殺した社長は海千山千って感じで頼れる人だよ。


 そうしたら、ここをクリックすると指名者に一斉通知が届く。入札は公平な業務だから、仕様書や画像と合わせて一気に送らないと駄目なんだね。仕様書については後で読み込んでもらうけど概要だけ伝えるよ。まず殺す方法は、銃殺と絞殺の二通りね。何が非人道的かはわからないけど、とにかくこの2つは即効性があると認められたらしい。それから対象人物の調査方法は町内公認探偵。これは自社探偵にすると殺害する理由を捏造できちゃうから他社ね。その次が装備品や所有する車両の欄ね、ちゃんと殺人できますっていう能力を示してくださいねってこと。後、最後の文章は「ここに定めがないことは別途協議する」っていう文言を入れるよ。これは不測の事態が起きた時に勝手な判断をされないように互いを縛る言葉だね。便利だから覚えておこう。


 今までの例外はそうだなぁ……身辺調査を担当していた探偵の人が殺人対象になっちゃったことはあるかな。探偵社を急遽変更すための要件が増えた時だね。


 1回休憩しようか。何か聞きたいことはあるかい?


 ……そもそも町単位の入札ではないっていう疑問は確かに生まれるよね。それについては議会でも答弁したけど、ざっくり言うと国が「地域に密着した判断を下すには市町村単位が適当である」って回答しているんだ。調査結果が十分で殺していいっていう証拠しかなくても、地域の住民なら本当に殺した方が良い人間かどうか判断できるのではって考え方もあるね。実際に調査を終えてから、本人と直接面談をして心療内科に通ってもらったケースもある。その人は、とても穏やかな性格になって今でも生きているよ。人生で一時、荒れて荒れて人の恨みを買ってしまっただけで、本来は十分に社会生活を営める人だったんだね。


 ちょっとまとめようか。入札は設計額が重要、仕様書で業務内容を提示、この業務は身辺調査でとても時間がかかる、って感じかな。


 あ、これは最初に説明した方が良かったな。入札はスケジュールも大事だよ。業者の方々も毎年のこととは言え、指名通知されて急に入札価格を提示しろって言われても困るよね。だから通常は通知し終わってから1週間以上の期間を空けて入札執行する。この期間がね、あんまり長いと業者の談合を招く可能性があるから一ヵ月とかは設定しないね。談合ってのは「今年は俺がこの仕事を請け負うから、お前らは手を引けー」とか会議されちゃうこと。補足すると、「来年のこの時期に入札します!」って触れ回るのも駄目だよ。

 

 取り敢えずこんなところかな……全部終わったら、ここで設定内容を保存する、今日はしない。あれ、まだタイトル入れてなかったか。


 殺人業務委託料の正式名称は、ええと、何だったかな。

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