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闇に抱かれた後宮の苑に、一つ、また一つと、紅の灯りがともる。
しっとりとした甘い夜気に、酔いを誘う酒の香がまじり、そこかしこに置かれた銀の香炉からは芳しい香がたちのぼる。
舞姫たちの袖がゆらめき、歌姫たちの朗々たる声が興をそえる。
華やかな後宮の宴のはじまりだ。
瑞鳳宮は数えきれない灯で照らしだされ、まるでそこにだけ陽が昇ったかのようだ。
今夜ばかりは我が物顔にのさばる陰の気もなりをひそめている。
そして宴の会場となった広間の開け放った扉の外、ともすれば闇に沈みそうな階の下では、朱音が地面に散らばった料理と皿の破片を片づけていた。
端女である朱音は今夜、瑞鳳宮に近づく予定などなかった。
なのにここにいるのは、房に戻っていたところを呼びだされたからだ。
料理を運ぶ女官が皿を落とした。
瑞鳳宮のお高い女官たちが外は私たちの管轄ではないからと汚れ仕事を端女に押しつけたらしい。
同僚の端女たちは外陣に出ていて、食欲がなく一人で房に残っていた朱音が、さがしにきた長に始末を命じられた。
与えられた仕事が嬉しいような怖いような。
そっと眼をやる開いた扉からは、ひときわ明るい主賓の席に数人の男女が座っているのが見える。
なつかしい龍仁だ。
久しぶりに姿を見れたのに、顔は遠すぎてよくわからない。
隣に座っている男は先帝で、小柄な少年は皇太子の雅叡、華やかな緋牡丹のような色合いの衣は皇太后か。
そして皇太后の配慮か、香凜の席だけは他の妃候補と違って段上にあるようだ。
遠くからでも香凜が龍仁の盃に酒を注いでいるのが見える。
それを龍仁が口にするのも。
むかむかと腹立ちが込みあげた。
(龍仁様ってば、私がお酒を注いだら毒見はすんだのかとか、下手とか絶対文句を言うのに。
私の注ぎ方と香凜様の注ぎ方とどう違うっていうのよ?)
腹がたつのは誰に対してだろう。
龍仁にしなだれかかる香凜?
それともその体をおしやったりしない龍仁?
満足そうに見ている皇太后?
違う。
一番腹がたつのは、こんなところで怒りを燃やしている自分だ。
別に龍仁が誰といちゃつこうが関係ない。
だから平然と無視していればいいのに、つい見てしまう自分にむかむかする。
一瞬、彼がこちらを見たような気がした。
そんなことを思った自分にあきれた。
これだけ距離があれば外に誰がいるかなんてわからない。
彼が段上の皆に話しかけている。
雅叡を見ながらなのは、もう夜も更けてきたからそろそろ宮に戻ったほうがよいとでも言っているのだろうか。
彼は弟想いだから。
それから彼は香凜のほうを見た。
「香凜殿、よければ一緒にきていただけるか」
とでも言ったようだ。
香凜が淑やかに皇太后と先帝に許しを求めている。
先帝の声援を背に受けて、龍仁が香凜と雅叡、二人の手を引いて宴の席を抜けだすのが見えた。
思わず朱音は立ちあがっていた。
顔を伏せてやみくもに歩きだそうとしたら、どんと、誰かにぶつかった。
「ちょっと痛いじゃないっ、って、あら、あの猫じゃない。
どうしてこんなところにいるの?」
妃候補に仕えている侍女たちだ。
嫌な相手に見つかってしまった。
朱音は一礼して逃れようとした。
でも、




