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花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される  作者: アルケミスト


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 皇太后のもとを辞して回廊を行くと、佑鷹が心配そうに声をかけてきた。


「どうかなさいましたか。

 お顔の色が」


「毒にあてられた」


「は?

 ま、まさか、出された茶か何かに……!?」


「……警戒しすぎだ。

 肩の力を抜け。

 まあ、やりかねない女ではあるが、皇太后は」


 心配性の乳兄弟をねぎらってから、龍仁は低く命じる。


「瑞鳳宮で宴を開くことを了承させた、用意を頼む。

 ああ、父上と雅叡にも招きの使いを。

 出席者が多いほうがいろいろやりやすい」


 佑鷹にはそれで通じた。


 さつそく供回りの者たちを遠ざけて、低い声で確認事項を口にする。


 宴は口実。


 実祭には瑞鳳宮にこちらの手の者を入れるのが目的だ。


 そして衆目の前で事件を起こす。


 皇太后の動きを封じ込め、官たちの意思の統一を図るために。


 佑鷹が宴に同伴させる名目で、各妃候補や皇太后の身辺を話術巧みにさぐれそうな者の名をあげていく。


 そして少しためらいつつ、その後のことに対応できる者の名も。


「これを機に攻勢にでるのはいいとして、朱音は大丈夫でしょうか。

 見つかったら……」


「あれは端女だぞ。

 しかも会場は皇太后が手の者で固めた瑞鳳宮だ。

 宴にはでない」


 言いきってやったが、うなずく佑鷹の顔が暗い。


 皇太后の執拗な要請と本人の意思に負けて、母を瑞鳳宮へあげたばかりだからだ。


 朱音もそうなってはと心配しているのだろう。


 佑鷹の母で、龍仁の乳母だった黎己は、皇太子宮にいた頃から皇太后の求めに応じて後宮に出向くことが多々あった。


 だが完全に囲い込まれてしまったのは今回が初めてだ。


 しばらく黙って歩いていた佑鷹が、ぽつりと言った。


「朱音の手、大丈夫ですかね」


「いきなりどうした」


「いえ、邸で端女のもとへ行ったのですよ。

 どんな仕事をしてるか気になって。

 そしたらあかぎれだらけでしたよ。

 慣れた端女でもそうなんです。

 箱入りだった彼女にはつらいでしょうね」


「あれは女官だ。

 官婢よりましだろう」


「後宮の要など官婢と変わりませんよ、朝から晚まで働きづめで」


 蒼夫人も眉をひそめてましたよ、と釘を刺して、佑鷹が真顔になる。


「かわいそうです」


 軟膏でもとりよせて送ってやろうかなと佑鷹がもそもそ言っている。


 龍仁はため息をついた。


 わかっている、ひどいことをしていると。


 だが今の状況で彼女をもとに戻すことはできない。


 皇太后が朱音を求めるのはこちらを牽制するため。


 佑鷹たち側近たちはそう思っているようだ。


 だが今の皇太后の動きは執拗すぎる。


 まだ何かある、朱音を求める動機が。


(もしや朱音が花仙とあたりをつけたか……?)


 今でこそ花仙の力を使うなと言ってある朱音だが、最初に会った場所は後宮だ。


 あの時の朱音は無邪気に花仙の力を使っていた。


 他に目撃者がなかったとはいいきれない。


 朱音は自分の価値に気づいていない。


 朱音の父も野心のない男らしく、妻の力を使おうとはしなかった。


 だが、花仙とは権力者に狙われるものなのだ。


 その美しい姿かたちが魅力なだけではない。


 木々と心を交わす能力があれば、作物の出来を左右できる。


 作物が実らなければ民は飢える。


 花仙の力は国を富ませることができるのだ。


(だが皇太后がそういった理由で花仙を求めるとは思えんな)


 民の飢えなど皇太后にとっては些事にすぎない。


 花仙を不老長寿の妙薬のように考える者がいる。


 仙界へ出入りできるからだろう。


 道士や薬師をあつめる皇太后。


 権力を手にした者は次に永遠の生に執着するという。


 狙いはこちらか。


 ますます朱音を渡せない。


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