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花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される  作者: アルケミスト


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「あれからどうなの、白白。

 妃候補のお嬢様たち、しつこくあなたをいじめにきてるけど」


 緑の眼の持ち主とばれてからは、朱音は会う令嬢、会う令嬢に眼の仇にされる。


 特に香凜とその侍女たちがひどい。


 調子にのって毎日いじめにくるからたまらない。


 彼女たちが朱音に絡んでいる間は他の端女たちも平伏していなくてはならず、清掃が進まない。


 困った女官長が朱音を裏方勤務にしようとしたら、待ったがかかった。


 そして朱音の勤務予定表をだすように言ってきた。


 理由はいつでも好きな時にいじめにいけるようにだそうだ。


 なんだそれはとつっこみたくなる。


 一連の騒ぎがすごかったので、香凜の取り巻きでない妃候補たちも、香凜を恐れて朱音に手をださなくなった。


 それだけが救いといえば救いだ。


「白白、私のせいでその眼の色がばれてしまったのよね……」


「わ、泣かないで杏佳さん、平気だから。

 それにこの頃、あの人たちに会う回数へったの」


「ああ、位の選考にさしさわるって皆隠してるけど、病がはやってるの。

 それでよ」


 杏佳が病に倒れたのはあそこの令嬢にどこそこの令嬢にと、指折り教えてくれる。


 妃候補たちが暮らす殿舎が清掃分担の杏佳だから知りえた秘密の情報だそうだ。


 杏佳があげた名の中には首に糸が巻きついていたあの令嬢もいた。


 やはり寝付いていたのかと朱音は心配になる。


「お嬢様育ちで慣れない環境に体調を崩したのかもね。

 夜になるとつかれがでるのか、高熱にうなされるそうよ」


「でもお嬢様育ち筆頭の香凜様は今朝もお元気だったけど」


「あの方の場合、病のほうが恐れて近づかないんじやない?」


 皆が小声で笑う。


 なぐさめてくれているのだとわかる。


「というかその病のことあまり大声で話さないほうがいいわよ、あぶないから」


「どうして?」


「だって倒れた方々って香凜様たちに対抗して上の位を狙えそうな方ばかりなの。

 強力な競争相手ってことでしょ?

 誰かが呪詛をかけたとか、妙な薬を盛ったとかありえるじゃない」


 そんな考え方もあるのか。


 怖い。


 さすがは後宮だ。


「となると上位の妃候補で病に倒れてない人があやしいってこと?」


「ちょっとそれじゃ香凜様の仕業になっちゃうじゃない。

 あの方の取り巻きってそういえば皆、ぴんぴんしておられるし。

 でもそれはないわ。

 皇太后推薦の香凜様がそんな危険なことをして、わざわざ自分の足場を崩すなんて考えられないもの」


 端女たちが互いに仕入れた噂話を交換して推理しあっている。


 後宮の隅々にまで散らばって清掃をするから、侍女や女官の立ち話を聞いたりと、最新の噂を仕入れやすいらしい。


 ただの噂と侮るなかれ。


 かしましく囀られる中には真実だって紛れこんでいる。


 妃候補たちをさぐるべく潜入している朱音にとってこれは貴重な情報だ。


 熱心に聞いて、ふと思う。


(呪詛とか薬を盛ったりとか聞くと怖いけど、それってそんなことをしてまで龍仁様の妃になりたいってことよね?)


 それは愛情の裏返しといえなくもない。


 皇后になるということは、夫婦になるということ。


 なら龍仁を心から慕ってくれる人がいい。


 龍仁は朱音には意地悪だけど他の人には優しいし、幸せになる資格はあると思うから。


 きゅっと胸がかじかむような感触がして、朱音ははっとする。


(ど、どうして私がそんなこと考えなきゃいけないのよっ。

 とにかく今は清掃の時間なの、密偵業務は一時お休みっ)


 ぶんぶん顔をふる。


 朱音ではなく、龍仁の妃なのだし、赤の他人がやきもきすることはない。


 朱音がむきになって石畳をがっしゅがっしゅと磨いていると、小走りに年輩の女官がやってきた。


 たどり着くなり、あわてたように口を開く。


「清掃を急いでくださいな、今日は急ですけど、陛下のお渡りが決まりましたから。

 朝賀が終わられてからになるでしょうから、それまでにすませて裏へ戻りなさい」


 突然の指示に、端女たちは顔を見合わせる。


 一人がぽつりと言った。


「とうして陛下が後宮にお渡りになるの?

 妃候補にはしばらくふれないのが慣例ではなかった?」


 崔国の後宮には準備期間がある。


 集められた妃候補の処女性は調べられているが、念のため他の男の胤を持ち込んでいないか、皇帝が入城する前に後宮に入って期間をおき、確認するのが慣例だ。


 その間に妃たちは後宮生活に慣れ、それぞれの階位をもらう。


「慣例で宮規じゃないけど。

 皇太后様がせっつかれたのかな。

 早く階位を決めなさいって」


「でももう、各階位は決まってるでしょう?

 皇太后様のおすすめの方で」


「え、そうなの?」


「やだ、知らないの?

 だって香凜様が皇后になるのは確実だし、香凜様の取り巻きの令嬢たちの父君って皇太后様と懇意の方ばかりよ。

 上の位はとっくにあの方たちで決定してるわよ。

 女官たちも正式通達の後の部屋割りをどうしようって話してたし」


 朱音の床を磨く手が止まった。


 顔がこわばっていくのが自分でもわかる。


 ただの噂、よね?


 噂には真実も混じっているけど、人の口を通すと主観も入るし、希望も混じるから……。


 心臓がばくばくと脈打ちはじめる。


 皆、まだ話しているけど、朱音の耳には入らない。


 龍仁は自分で妃を選ぶと言っていた。


 だから自分はここにいるのではないの?


 もう決まっているなんて聞いてない。

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