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花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される  作者: アルケミスト


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 黙りこんだままの朱音にじれたのか、龍仁が重ねて問いかけてくる。


「お前は玉を持つ俺から離れられないが、同じ皇城内だ。

 それくらいの距離なら離れて暮らしても大丈夫だろう?」


 玉の範囲としては大丈夫だけど、大丈夫じゃない。


 悔しくて悔しくてたまらない。


 彼が朱音を玩具と思っていたのなら、今まで努力を聞いたらまた笑うのだろうか。


 玩具の癖に何を無駄なことをしていたんだと馬鹿にするの?


(絶対、そんなことさせない)


 そんなの寂しすぎる。


 かといって悔しいから実力行使で玉を取り戻してやりたくても、彼から引き離されたら何もできない。


 雲竜宮と後宮に住まいがわかれたら、そこで自分は終わりだ。


 朱音は顔をあげた。


 彼を真っすぐに見て、勢い込んで言う。


「嫌です。

 私、あなたの傍にいたいんですからっ」


 一気に言うと、龍仁がちょっと眼を見開いた。


 そして妙に真剣な顔で聞いてくる。


「何故?」


「え?

 な、何故って」


「理由もなく傍にいたいと言われても説得力がない」


 龍仁が圧力をかけるように顔を近づける。


 噓は見逃さないというのか、迫力ある彼の顔に息をのむ。


 龍仁が長榻の背に手を置いた。


 長榻がぎしりと鳴って、朱音の背筋に痺れが走る。


 大人の男の香が濃く漂ってきて酔いそうだ。


 そんな真っ直ぐにこちらを見つめてこないで。


 その気もないのに誤解しそうになる。


(もうっ、ちょっとは自分の魅力っていうか、自分が男だってこと自覚してよっ)


 無自覚に男の色気をまき散らさないでほしい。


 はた迷惑だ。


 朱音は怒りをかきたてて気をまぎらわせると、彼をおしのけた。


「は、離れてください、そんなに近づかなくても声は聞こえます。

 まず私を後宮に入れる理由を話してください。

 でないと納得できませんっ」


 思いっきりかみつくと、龍仁が少しためらった。


 柄にもなく眼を泳がせる。


「……お前はいちおう、花仙だ」


「だからそれが何ですか」


「珍しい。

 狙われてはまずい。

 だから警護の厳重な後宮に入っておけ」


「後宮は金蔵ですか!

 納得できません。

 私のことはあなたしか知らないのですから狙われるわけないじゃないですか。

 さらわれるかもと心配してくださつているということなら、そもそも私、あなたのもとにもさらわれてきたわけで、不本意なんですけどっ」


「何?

 これだけ大事にしてやっているのに不本意とは何だ、不本意とは。

 さっき傍にいたいと言ったではないか」


「この扱いのどこが大事にしているですか!

 私があなたの傍にいたいのは認めてほしかったから……ではなくて、玉を取り戻したかったからです!

 ただそれだけです!」


「それだけ?」


 みるみる龍仁の機嫌が悪くなった。


「ほう、四年もの間面倒を見てやった俺をつかまえて、それだけ、か。

 言っておくが俺はお前を手放す気はないぞ。

 一生、飼い殺しにしてやるからそのつもりでいろ」


「一生って!?

 どうして私にそんなに固執なさるんですか!」


「それは」


 ちょっと言いよどんでから、龍仁がふんと鼻を鳴らした。


「皇帝のたしなみだ。

 珍しいものを集める力をもつことを内外に知らしめるのも、国の頂点に立つ者の義務だからな」


 は?


 そんな理由で今までずっと私を閉じ込めてきたの?


「念のため言っておくが、花仙の力は後宮では使うなよ?

 この邸内ならごまかせるが、あちらは人目も多い。

 万が一お前が花仙とばれては困る。

 平和に過ごしている母親を脅かしたくはないだろう?」


 強迫か、今度は。


 裏切られた、そんな気持ちになった。


 思った以上に衝撃で、今までの自分はさんざん悪態をつきながらも、ある程度は龍仁を信用していたのだと知った。


 いろいろ意地悪をしてくるけれど、根っこの部分では長年つきあっている女嬬に愛着をもつてくれていると思っていたのに。


 だから反抗的な態度も許してくれていると信じていたのに。


 でもそれはすべて身の程知らずな思い込み。


 彼はこちらを少しも対等な人間と思っていなかったのだ。


 朱音は血の気の引いた手をそっと袖の内に隠した。


 今の気分を龍仁にだけは知られたくない。


 気づかれないように深く息を吸って、呼吸をととのえる。


 そして平然とした顔をつくって言った。


「そんな理由でしたらわざわざ皇城にあがらなくてもいいのでは。

 この邸第はしばらく手元におかれるのでしょう?

 私、このまま残ってますけど」


「駄目だ。

 ここは人が手薄になる。

 心配だ。

 だいたい皇城から遠すぎるだろう。

 今のように毎日会うわけにはいかないのだぞ。

 そんな長く玉から離れて平気なのか?」


「だった玉を返してください!」


「それは却下だと何度も言った。

 正式な妃の階位を決めるのはまだ先だから、とりあえず妃候補として後宮に入れ。

 わからないことがあれば蒼夫人に聞くといい」


「嫌だって言っています!」


「何故嫌がる。

 妃候補はここの暮らしより楽だぞ。

 何もせず、遊んでいればいいのだから。

 侍女もつけてやる」


 そういう問題ではない。


 自分でもうまく言えないけれど、それならまだ女嬬としてこき使われたほうがましだ。


 朱音が黙っていると、龍仁がさらに言った。


「支度のことを気にしているのか?

 安心しろ、見劣りしないだけのものはそろえてやる」


 違う。


 そんなことに悩んでいるのじゃない。


 もどかしい。


 自分でも何がほしいのか、何が足りないのか、言葉にできない。


 だから一つだけ、やっと思いついたものを口にだす。


「仕事をください」


「何?」


「私、いくら玉をにぎられていても、龍仁様の所有物ではありません。

 施しをうけるのなんかまっぴらです!

 きちんと仕事ください!」


 もどかしい胸の内は形にならない。


 これが本当に自分の欲しているものかもわからない。


 だけど朱音は必死に言いつのった。


「私はちゃんと働きたいんですっ。

 後宮になんか入りませんっ」


「……何故そんなに仕事にこだわる」


「とにかく妃候補なんて嫌です。

 他の人をあたってください」


「な、他の人だと、馬鹿、誰がお前を本気で妃候補にすると言った、それは仮の姿、ちゃんと仕事を与える気でいる。

 お前にやらせるのは……、そう、妃候補の情報あつめだ!」

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