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1.旅の終わりと始まり 聖なる森にて

聖ファレンシア王国。


この国は建国から千年の歴史を誇る大陸一の強国だ。緑豊かで水源も多く、金脈を有する鉱山を持つ資源豊かな国である。国内で需要と供給を全て賄える上に、軍事力も圧倒的なため他国との小競り合いもなく、周辺の小国とは長い間友好関係を保っている。


なぜ聖ファレンシア王国がこのように栄えているのか。


それは「聖なる泉」の存在だ。

王国の外れにある「聖なる森」のその奥深くに「聖なる泉」がある。聖なる泉は王国内の水源と繋がっていてその泉の水は生命力に溢れ、農作物は強く美味しくなり、草花は綺麗に育ち、人は病知らずとなり健康に過ごすことができた。

しかし聖なる泉は百年に一度邪気払いをして清めなければならず、精霊しか清めの儀式を行うことができないため、聖なる森の王である精霊王がその役割を担っていた。精霊王は払った邪気を己に取り込み浄化することができるのだが、浄化の際に邪気に当てられた魔物達がとんでもない量出現してしまう。攻撃の術を持たない精霊や森の動物達は次々と魔物の犠牲になっていたのだが、ここにちょうど現れたのが聖ファレンシア王国初代国王だった。彼はたまたま清めの儀式に遭遇し、随行していた兵士仲間と共に魔物達の討伐に尽力した。そして魔物達を全て討伐したあと精霊王は国王に感謝し、それからある約束を国王に持ちかけた。


『100年に一度「清めの儀式」の為に力を貸してほしい、その者達の助けになるように大いなる力を授けよう。力を貸してくれたならば王国の繁栄に力を貸そう』


そうやって精霊王と初代ファレンシア国王は秘密の約束を交わした。時は流れて二人が約束をしたときからちょうど100年後、聖ファレンシア王国にて不思議な力を持った娘が産まれる。プラチナブロンドの髪を持ち、透き通るような真っ青な瞳を持った少女は両手を翳すことで、治癒能力が使える能力者だった。国民は彼女のことを聖なる力を有する女性として「聖女」と呼び、彼女は国民全員から慕われた。聖ファレンシア王家は王族から一名、腕の立つ者を「勇者」として討伐隊を組織し、初代国王が精霊王と交わした約束を守るべく聖女を連れて聖なる森へと向かい誰一人犠牲者を出すことなく任務を終えた。

その後聖なる力を有する者は100年毎に一人産まれ、能力者全員がプラチナブロンドに真っ青な瞳を持っていた。彼等が産まれればその情報は王家へ報告がいき、時がくれば討伐隊へ召喚されて、聖なる森へ旅立つことになるのだ。

聖ファレンシア初代国王が崩御した後も次代の王へと約束は引き継がれ、そうして聖ファレンシア王国は繁栄し大陸一の強国になった。


という話を聞いたのが一年前。能力の存在を知ったのも一年前。髪の毛が急にプラチナブロンドになり瞳が真っ青になったのも一年前。

はい、俺は聖なる力を有する男「聖男」です。

豪奢な馬車で俺のことを迎えに来た兵士に半分拉致の形でファレンシア城に連れ去られて、神父様に聖水をかけられた俺の髪と目は色を変えた。経緯は知らないが何かしらのアクシデントが起きて俺の聖なる力とやらは封印されていたらしい。それなのにどうやって俺の存在を知ったのかは謎だ。さて本来の力を取り戻した俺は歴代の聖女様達と同様に治癒の力を使うことができるようになった。他に魔物達からの物理攻撃と魔法攻撃の両方に有効な結界を張ることもできた。討伐の旅に出る前にある程度戦えるようにした方がいいということで、剣術と体術も仕込まれてその基礎を作るためにと体力作りもこなすこと半年。聖男の俺リベインと聖ファレンシア王国最強の名を欲しいままにする第三王子ライケインを勇者として討伐隊は討伐の旅へ出立した。旅立ちからこれまた半年、俺達討伐達は一人の犠牲者を出すこともなく無事任務を終えた。


のが今。そう今なんです。あともう帰るだけなんです。なのになんでそんなことをおっしゃっているんですか!精霊王!


「あのー・・・すみません。よく理解できなかったのですが、もう一度お話いただけますか」


綿毛のような白い長い髭をたくわえたお爺ちゃんみたいなお茶目な見た目だが、千年以上生きている精霊王が俺の目の前でふわふわ浮きながら長い髭をさわさわしながら頷いた。


「うむ。お主と勇者の為に三人の子供を授けよう」


どういうこと?


「精霊王、何を言っているんだ」


俺が疑問に思ったのと同じタイミングで第三王子のライケインが誠に怪訝な顔で精霊王に突っ込んだ。そりゃそうだ、本当に何を言っているんだ。

精霊王は俺達からの困惑しきった視線など意に介さず、あいかわらずふわふわしながら言葉を続けた。


「まず、聖なる者よ。お主はこの先、二人の娘と良い感じになるが、持ち前の人の良さから恋愛の対象として見てもらえず、生涯一人で過ごすことになるじゃろう。ただ隣近所と仲が良いので寂しい思いはすることはないようじゃがな。して次に勇者よ、そなたは幼き頃に患ってしまった女性恐怖症により、生涯一人で過ごすことになるじゃろう。ただそなたのストイックで真面目な性格から後進等から慕われるので寂しい思いをすることはないようじゃがな。ということでじゃ、わしが一肌脱いでおぬしら二人に子供を授けよう」


「ということってどういうことですか」


「ええい、うるさい。そらっ」


「え、何?いたーーー、チクッとしたっ」


「っ」


精霊王の「そらっ」の後に人差し指に針で刺したような痛みが走って、焦って指を見るが刺された痕はない。ライケインをチラ見したが同じような状態になっているらしく、不思議そうに人差し指を眺めている。


「―――――――――」


俺がライケインをチラ見してる間に急に精霊王が呪文を唱えだした。

周囲一帯が光に包まれて周囲の森も精霊王も白い光に包まれていく。すると身体が勝手に動き出して吸い寄せられるようにライケインに近付いていく。抵抗しようと試みるが全く止まる様子はなく正面を見ればライケインもこちらに近付いてくるのが見えた。もともと遠くに居た訳でもない俺達はあっという間にスイカ一個分の距離を空けて正面で向き合った。


「そいや」


精霊王のなんというか間の抜けた声が聞こえた瞬間に俺達の間に淡いピンク色に発光する球体が三つ現れた。


「男、男、女じゃ。人間と精霊のハーフじゃからな、成長スピードは人間のそれより早いぞい。しっかり育てるのじゃぞ」


「ちょ、精霊王!」


球体が徐々に赤ん坊の形になっていくのを見て、俺は慌てて宙に浮かんでいる手前の二つを抱き寄せた。ライケインも無表情で手前の球体を一つ抱き寄せている。


「そうじゃった、言い忘れておった。お主達二人は今回の旅で真実の絆を結ぶことができた稀有な存在じゃ。魂の波動から見ても、相性抜群の二人じゃぞ」


「なに、なんです「真実の絆」って!?」


「幸せになるんじゃぞ」


ばちんっとウインクを飛ばして精霊王は白い光に溶けるように消えていった。精霊王が霞のように消えていくと白い光も消えていき、俺達の目の前には先程と変わらず森が広がっている。

ただ一つ変わったものといえば、俺の腕の中にある眩しいくらいのブロンドの赤ん坊二人と、ライケインの腕の中にあるキラキラ輝くピンクブロンドの赤ん坊の存在だった。

呆然と見つめることしかできなくて、じっと赤ん坊の様子を見ていると二人が同時に身動いで閉じていた瞼を開いた。俺と同じ色だが潤み具合が全然違うその瞳と目が合う。


「「ママ」」


天使のように愛らしいが、ママじゃない。どちらかというとパパだよ。


「じゃないよ!どうするライケイン!」


あまりのことに困惑してセルフ突っ込みをかましてしまったじゃないか!

一応ライケインに助けを求めてみるが。


「俺も困惑している、どうするリベイン」


「いや、こっちが聞いているんだよ」


ライケインも困惑していた。


「リベイン、腕の中の赤ん坊が俺をパパと呼んだ」


「いやなんでお前はパパ呼びされてんだよ」


「知らん」


「「ママ」」


腕の中の二人がハモって俺のことを見た。


「いや、どちらかというと「パパ」」


「「ママ」」


「頑なだな」


俺のことを絶対にママと呼ぶぞという強い意志を二人から感じる。そんな二人に感心したかのようにライケインがぼそっと呟いたのが聞こえた。お前は本当にこの状況をどうにかしようと思っているのか。何だか楽しそうに見えるのは俺の気のせいですか?王子様?


「とりあえず帰ろう、リベイン」


「どうすんのこれから」


「城に帰る」


「この子らのこと何て言うか考えてんのかって聞いてんの」


「俺とお前の子供」


「はあああああ」


そうだよ、ライケインは戦うことに全力を振り切った男だった。こいつは本当に言うぞ、王様と王妃様の前でこの三人の赤ん坊を、俺との間に出来た子供ですって。そんなことになったら・・・考えただけで恐ろしい。絶対信じてもらえる訳ないじゃん。


―――――


「ライケイン、リベイン、そして討伐隊の諸君、大変難儀であったろうが皆無事で帰ってきてくれてとてもありがたい。討伐隊として任務を果たしてくれたこと、国王として感謝する。褒美をそれぞれ用意しているので皆きちんと受け取るように」


「私達の愛おしい子、ライケイン、そして愛すべき聖男、リベイン。二人ともよくやりましたね。二人の婚姻と精霊王から授かった貴方たちの愛し子達の幸せを願って、国を挙げてお祝いをしましょう」


―――――


「聖ファレンシア王国第三王子、ライケイン・ルオーツ・グラハム・セイリアス・ファレンシアはリベイン・フィアーズを生涯の伴侶とし、お互いを尊重し良き家庭を築いていけるように努力することをここに誓います」


「リベイン・フィアーズはライケイン・ルオーツ・グラハム・セイリアス・ファレンシアを生涯の伴侶とし、お互いを尊重し良き家庭を築いていけるように努力することをここに誓います」


「では、誓いのキスを」


「あの、神父様、手の甲にキスでも大丈夫ですか?」


「はい大丈夫です」


「ライケイン、手の甲で」


「わかった。リベイン、手を」


「頼む」


ライケインの唇の感触を知る日が来るとは思いもしなかった。


―――――


「ただいま」


「お帰りー」


「「「お帰りなさい!!!」」」




討伐から城に戻った俺達は精霊王から祝福された二人として国中からお祝いされ、三人の子供も正式にライケインと俺の子として王家に名を連ねることになった。俺もあれよあれよという間になぜかライケインと結婚することになって、王家の一員になっている。正直に言うと俺とライケインは恋人関係ではないし、どちらかというと同じ目標に向かって戦った「仲間」という意識が強いのだが精霊王が言った未来が本当だとするとこんな家族の形も有りなのかもなと思っていたりする。



予期せず始まった新婚生活だけど俺もライケインも、もちろん子供達も案外楽しんで過ごしているから、きっと「幸せ」の一つの形であることは間違いないだろう。


ここまでお読み下さりありがとうございます。成長した子供達やライケインとリベインの今後の関係など、まだ書きたいことがあるのでもうちょっと続く予定です。

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