ルームメイトが怖すぎる
なろうラジオ大賞6参加作品です。現実恋愛。
「……(ぶつぶつ)」
「……」
ルームメイトが今日も独り言を呟きながら土人形をいじっている。
「……くん。今日も元気ね。くすくす」
マジこえー。
低いトーンなのがより怖い。
宿題に全く集中できない。
「くすくす。やだー」
ちなみに俺は男。ルームメイトは女だ。
なんの手違いか同室になった。
思春期真っ只中の高校生。ドギマギしたが、そこにいたのはこれだ。
「もっとこっち見てよ!」
「っ!」
ドンッ! と机を叩く音。
思わず体がビクッとなる。
「ねえ!」
「うおっ!」
急に振り向いて話し掛けてきた。
「……お風呂入ってくる」
「あ、はい。どうぞ」
ボサボサの頭。長い前髪。学校でもそうだ。
異性のルームメイトに期待した俺がバカだった。
と、思っていたのに。
「ふう」
「っ!」
サラツヤの髪をなびかせて風呂から戻ってきたのは超絶美少女だった。
大きな猫目。スベスベの肌。桜色の唇。
「ていっ」
「お、おい。ベッドに飛び込むなよ」
おまけに出る所が出てやがる。もちろん腹ではない。
見事な谷間がこぼれそうなのだ。
「見なければいいだろ」
無理言うな。
「あ!」
「うおっ!」
と思っていたら飛び起きて机に向かう。
「……くん。ただいま」
これがなければ優良物件なのに。
「な、なあ」
「……あん?」
目と口の部分をへこませただけの土人形との会話を邪魔すると途端に不機嫌になる。
「それ、なんなんだ?」
「……好きな人の、髪の毛入ってる」
「へ?」
「その人だと思って愛でれば、いつか両思いになれる」
「そ、そうか」
いや、こえーわ。
でも理由が意外と乙女だった。
「……くーん」
いつも名前が聞き取れない。
正直気になる。
「勇太!」
「はいっ!」
突然に名前を呼ばれる。
なぜ下の名前なのか。
「……ご飯」
「あ、はい。俺も行きます」
怖すぎてなぜか敬語に。
俺はこんなのと一年間一緒に暮らせるのだろうか。
「ゆうたくーん。お留守番しててねー」
「っ!?」
その時、初めて土人形の名前を聞いた。
「あっ!」
慌てて口元を抑えている。
どうやら声のトーンを間違えたらしい。
「……聞いたか?」
真っ赤な顔。
正直、可愛い。
「……いえ、聞いてません」
「ホントか?」
「ホントです」
「……ほっ」
可愛い。なんかもう、可愛い。
「ご、ご飯いこーぜ」
「あ、うん」
二人で部屋を出る。土人形の勇太くんはお留守番だ。
「ホントーに。ホントーに聞いてないんだな?」
「ホ、ホントだってばっ」
俺はホントにこんなのと、一年間まともに一緒に暮らしていけるのだろうか。