七話 憑依 修正済み
幽霊といえばで色々考えた結果『憑依』とかあるなと思いついた。
もし憑依できれば俺が代わりに動いて川に浸かった女の子をとりあえず陸に上げられるんじゃないか?と思いついたのでやってみたら上手くできた。
少しの抵抗があった後、川に浸かった女の子の視点に切り替わったのだ。
濡れていて寒い......。
急いで木を集めて魔法で火をつけてようやくほっと一息ついたところで気が付く。
「というか全身痛えな!おい!腹も減ってるし!」
女の子の声でがっつり男っぽく叫んでしまったが、気が付けば全身がくそ痛かった。
そりゃああんだけ傷だらけだったのだから当たり前といえば当たり前なんだが、マジで痛い。
幽霊になってからは痛みなんて、謎の水をかけられてちょっとひりひりする程度でしか感じたことがなかったので久しぶりの肉体の痛みだ。
それに痛みに隠れてはいるが空腹感も酷い。
結構長いことまともなものを食べれていないのかもしれない。
憑依直後は女の子を助けることに一生懸命だったうえに、体の動きが所々思ったように動かなかったりしたので気が付かなかったんだな...。
火で身体を温めながら、気を紛らわせるために憑依ってどれだけ続くのか?を考え始めた。
すぐに憑依状態が解けるなら危険なので相当注意していなければならない。
それにこの森は結構危険だ。下手をすれば俺の時の二の舞になる可能性が高い。
半袖半パンラフスケルトンの近所に、ぼろ布スケルトンが追加される可能性がある。
女の子は傷だらけなので、血の匂いで動物を呼び寄せる可能性も高い。
それに着ているものも服とは言えない襤褸切れで匂いからして衛生的ではない。
放っておけば動物から助かっても病気になりそうである。
...課題が多いな。
なんとかするために俺は痛む身体を強引に動かし、行動を始めた。
まずは女の子の安全を確保しなければならない。
異世界の森は動物に盗賊にと危険がいっぱいだ。
まあ盗賊に関していえば俺が原因でほぼ絶滅危惧種くらい見なくなったので、気を付けるのは動物だけである。
とはいえ魔法を使うような変わった動物もいるので危険は危険だ。
だが俺はこの森を散策しつくしたといっても過言ではない。
いくつか安全そうな場所に心当たりがあったので、とりあえず俺の死体から一番近く、川からも離れすぎていない大きな木のうろを仮拠点にした。
次に戦闘...これは基本的に逃げる隠れるが最良だろう。
幽霊の時に練習した魔法は、女の子の体に憑依した現在も使用できるが、若干威力が落ちている。
それでも小型中型の動物くらいなら倒せそうな威力は出たが、大型になれば分からない。
そもそも俺は今まで攻撃を避ける必要がなかったので、当たれば死ぬこの状況は結構懐かしくそして危うい。
自分ならまだしも他人の死体を作ってしまうのは気が引ける。
そして食べて飲まなければ死ぬということでもあるので、水は川の近所なのでともかくとして、食料の確保は最優先事項の一つだ。
ただ運よく角の生えた兎が茂みから現れたので速攻で火魔法で仕留める。
ご飯を食べるという生物にとって当たり前の行動だが、幽霊になってからはできていなかったので俺にとっては久しぶりの食事。
多分、今俺が憑依しているこの子自身も久しぶりの食事なんだろう。
涎が止まらない。
しばらく食べていなかった少女の体にいきなり肉はどうなんだ?とも一瞬思ったが、スープとかお粥とか作れる道具もなければ状況でもないし、そもそも体が食いたがっている。
こだわれるような状況でもないし、そこら辺の細かいことは気にしないことにした。
ただ焼いただけの兎肉に勢いよくかぶりつくと...幸せを感じた。
美味い!美味すぎる!
味つけはなにもしていないが、それでも十分すぎる程美味しかった。
俺は女の子を助けるために問題解決しつつ、生きていたころの懐かしい感覚を楽しんだ。
ドレイン 敵の生命力を吸収し、自身の生命力へと変換する。
復讐 自身に攻撃してきた敵に対する攻撃の効果が1.5倍になる。
物理無効 物理攻撃を無効化する。
マナドレイン 敵の魔力を吸収し、自身の魔力へと変換する、
火魔法 火の魔法を扱えるようになる。練度と想像力によって威力が上昇する。
高速移動 移動系スキル。高速で移動する。
憑依 対象に憑りつき操る。