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四話 狩りの対象 修正済み

 



 動ける範囲がだいぶ増えた俺は、動ける範囲を散策していた。

 そんな感じで散策していると森の中に道があるのを見つけた。

 草が剥げて、藪は開かれ、整えられていることが分かる。


 初めて人の痕跡に少しワクワクしながら、道沿いを散策する。


 そんな時だった。

 初めて異世界の人間を発見したのは。

 思いっきり戦闘の最中だったので、ファーストコンタクトどころではなさそうだ。


 数台の馬車が襲われ、その馬車を守っていたであろう護衛っぽい方々とそれを襲っている盗賊という構図での戦いっぽかった。

 戦力は見た感じ盗賊の方が多く、護衛っぽい方々は次々に倒れていっている。


 明らかに非戦闘員っぽい人まで引きずり降ろされてるし、胸糞悪い場面に出くわしちまったな。


 だが俺は日本人である。

 小さい頃からヒーローが身近にある国の者として明らかな悪党は見過ごしておけない。

 助太刀致す!


 と、某将軍をイメージしながら盗賊に襲い掛かった。

 とりあえず俺は盗賊集団に一回ずつドレインを入れて回った。

 ドレインをすると生命力が吸われる影響なのか、動きが鈍るので一種のデバフも兼ねている。


 突然、原因不明の脱力感に襲われた盗賊たちは困惑気味だ。

 馬車の護衛の方々も急に戦いやすくなったことに不思議そうにしながらもこれ幸いと盗賊を押し返す。

 これで戦力差は少々マシになったはずだ。


 戻りざまに触れる距離にいる盗賊たちにドレインしさらに追加で弱らせ、俺は非戦闘員っぽい女の子を引きずり降ろしていた盗賊をターゲッティングしドレインラッシュ。


 オラオラオラオラ!!!なに女の子に手上げてんだこの野郎。

 見る見るうちに弱っていく盗賊。

 どんどん加速していく俺の拳。


 ラッシュを終え盗賊の一人が息絶えたと同時に、俺の胸にまたあの熱い感覚が来て、全身に()()()奔った。


 それはなんだか今までとは少し違うような感覚だった。

 強烈なまでの熱は全身に奔った後もしばらく消えず、奇妙な高揚感を俺に植え付けた。


「ひぃっ!?」


 盗賊に襲われていた女の子が小さく悲鳴を上げる。

 どうやら俺が見えているっぽいが...テンションが上がった俺は何故?とか考えることはなかった。


 とりあえず悪い奴をぶっ○す!そんな勢いのまま残りの盗賊たちに飛びかかっていった。


 今度は盗賊たちからも姿を視認されていたようで武器での迎撃を図ってくるが、俺には効かない。

 幽霊だから物理攻撃が効かないのだ。


 片っ端から盗賊に襲い掛かった俺はドレインラッシュを絶えず繰り出していく。

 近い盗賊から順番に襲い掛かる様子は、完全に魔物にしか見えないだろうな。


 もはや戦闘というよりは、一方的な狩りになりつつあった。

 なにせ攻撃は俺に通じず、俺の攻撃は防ぎようがない。


 盗賊にとっては理不尽にも程があるんだろうが...まあ先に理不尽なことをやったのはそちら側なので因果応報とでも思いやがれ。

 逃げだそうにも護衛との戦いもあるので簡単には逃げ出せず、俺が触れれば弱って衰弱死するか、弱った隙に護衛に倒されるかしている。


 最終的にすべての盗賊を倒し終えた俺は少しの間をおいて冷静になり、後ろを見る。

 そこには洋画などでエイリアンを前にした外人部隊の顔つきの異世界人たちがいた。

 襲われていた馬車の人々とその護衛たちである。


 盗賊たちとの戦闘が終わった今、警戒の目は俺に集まる。

 ...何人かは俺の姿が見えていないのか見当違いの方向を向いていたりするが、中には見えている者もいるようでばっちり目が合っている。


 最初に助けた女の子もその中にはいた。


 そりゃあ自分たちに味方してくれた形になったとはいえ、はたから見れば理不尽極まりない恐ろしい魔物である。

 何故姿が見えるようになったのか?そんな疑問も湧いてくるが、ぶっちゃけそれは問題ではない。


 俺の声はどうも聞こえていないらしく、話そうにも話せなかった。


 どうしようもないので、とりあえず俺は元来た道を戻って帰ってみた。

 警戒はされていたものの、特に邪魔されることなく俺は森の中へと去ることができた。


 そして本体が転がっている辺りまで帰ってくる。


 そこで俺は今日のことを考える。

 盗賊を一人倒した時、胸が熱くなって全身に奔る感覚が強烈にあった。

 その直後から俺の姿は見える者には見えるような感じになっていた。


 そして俺は完全にあの場にいた人間から魔物扱いされていただろう。


 俺の今の状態は普通ではなく、生命を吸収し生き物を弱らせて祟り殺す。

 完全に不死系の魔物でしかないな...。


 それよりも気になるのは盗賊を倒したときのあの感覚だ。


 全身熱が奔る現象は盗賊を倒した時に短い頻度で発生し、動物を狩るよりも強烈な感覚があった。

 レベルアップしていると考えると盗賊の経験値的なものが美味しかったんだろう。


 これまでは死体に群がってきた動物を倒していたが、最近はレベルアップ現象の頻度は落ちていた。

 にもかかわらず盗賊を狩りまくったらあの短い時間で滅茶苦茶レベルアップした。


 効率を考えれば人間を狩るのが最高効率ということだろう。

 ただ闇雲に人間を狩りまくるのはそれはもはやただの魔物だし、俺は見ず知らずの一般人にいきなり攻撃できるほど外道に成り下がったつもりもない。


 ......決めた。

 今回みたいに明らかに悪い奴を見つけたら狩る方針で行こう。

 高効率に経験値稼ぎできて、あの道を通る人は安全に進めるからな。


 ......さして人間を狩ることに抵抗がない時点で結構魔物なのかもしれないなと思いつつ、俺は異世界の夜空を見上げるのだった。




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