一話 すぐ死んだ 修正済み
少しずつ手直ししつつ、情報を整理しながら物語を書いていきます。
異世界転生に異世界転移。
ライトノベルで流行っているジャンルだ。
一時期よりも落ち着いたとはいえ、今でも人気があるし、俺も好んでよくこのジャンルは読んでいた。
だから本当に異世界に迷い込んだときは驚いたしワクワクした。
竜だろう生き物が遠くの空を飛んでいたり、羽と角が生えた兎が三匹ほど茂みから飛び出してきたり、透き通った花が咲いていたり...幻想的な景色が広がっていた。
見るものすべてが珍しく、俺は久しく忘れていたワクワクを全開にしながら異世界を探索した。
ただ......よかったのは最初だけだった。
最初は変わった植物やファンタジーな生き物を見て感動していた。
だが転移したのががっつり森の中だったのですぐに遭難した。
二時間も歩いて森から抜け出せないので確定だろう。
だが遭難した時は焦ってはいけない。
俺はとあるサバイバル動画にハマり一時期狂ったように視聴していたので、慌てないように心掛ける。
まず冷静に持っているものを確認する。
ただコンビニ帰りだったので碌なものを持っていなかった。
コンビニ袋にペットボトルのお茶とアイス、スマホ。
恰好も部屋着そのままなので半袖半パンサンダル...と森を舐めてるとしか思えない恰好だ。
アイスは溶け始めたので早々に食べてしまったので食料はない。
アイスを食料にカテゴライズしていいのかは疑問が残るが...。
お茶はそんなに飲んでいないのでまだ余裕がある。
スマホは当然圏外で、充電は七十パーセント...微妙なラインだ。
現状ただの懐中電灯である。
次第に辺りが暗くなってくる。
異世界だからといって魔法的な何かが作用して夜が明るかったりとかはない。
日が暮れた異世界の森は恐ろしいほどに無音...漆黒の闇だった。
懐中電灯と化したスマホを片手に、時々聞こえるガサッという物音にびくつきながら、安全に眠れるような場所を探す。
だがどこもかしこも安全な気がしない。
常に見られているような嫌な感覚がまとわりつき、体を落ち着かせようとしたらガサッと音が鳴る。
何がいるかも分からない漆黒の暗闇の中での音は、どんな音でも怪物が忍び寄ってきているような気さえする。
音がするたびに逃げて、睡魔とも戦いながら落ち着ける場所を探し続ける。
そうこうしているうちに空が白んできていることに気が付いた。
結局一睡もできなかったのか......。
触れるとかゆくなる草でもあったのか、半パンでむき出しの足がかゆくてたまらない上に、眠気がすごい。
ただ何がいるか分からない森で眠る気にはなれなかった。
食べれそうなものも分からないので下手に食べれず、お茶をちびちび飲んで飢えを誤魔化す。
座っては歩き座っては歩きを繰り返し繰り返し.....。
多分三日は眠っていないだろう。
眠いは眠いのだが逆に冴えてきているような気さえする。
ひゃははは!
なんだか笑いが自然と湧いてくる。
たまに走ってみたりもする。
回ってみたり大声で歌ってみたり。
落ちてるスーパーキ○コみたいな色合いのキノコもなんだかいけそうな気がする。
いけそうな気がしてきた!!!
......チャレンジした結果、腹を壊した。
激痛で眠気とハイテンションは吹っ飛び、痛みで冷静になる。
それと同時に冷や汗もでる。
大事に飲んできたお茶も、腹を壊したせいで消費が一気に進みあっという間に無くなった。
野糞する羽目になってしまったが、緊急事態故に致し方なかった。
一日は転げまわっていたような気がする。
ただ匂いのするものの近くは危ないとどこかで見た気がするので移動はやめない...というか今更やめれない。
ただお茶が無くなったので目的はできた。
水だ。
人は水がなければ三日間しか生きられないと何かで見た気がする。
生憎、今は痛みで紛れているが、腹も減っている。
食べていなければ七日間しか生きれない。
水と食料だ。
異世界とはいえ、川くらい俺の知ってるような状態であるだろう。
何が食えるか分からないが、一回キノコで腹を壊したんだ。
適当に食べれそうなものを食っていこう。
そんな決心をし、なんとか二日かけて川を発見した直後......俺は小さい獣の群れに襲われて死んでしまった。
川を見つけたせいで警戒が緩んだんだろう。
たまたま同じタイミングで茂みから顔を出した小さい犬みたいな動物?の群れに襲い掛かられ、抵抗むなしく死んだ。
睡眠不足もあって戦うことも逃げることも満足にできなかった。
だが一つ、不思議なことがある。
俺は今、自分の死体を食らっている獣の群れを見下ろしているという点である。
自分の身体を見ると透けていて、ふわふわと浮いて獣の群れを見下ろしているのだ。
......どうやら俺は幽霊になったらしい。
感想などいただければ小躍りします。