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08 やったか!?

 迷宮は、その中とは裏腹に単調な構造だった。

 一番太い通路の他に、細い小道がいくつも分岐している。

 細い小道の先は外だ。

 恐らく無数の出口があって、その全てがこの道に接続されているのだ。

 一つ一つ魔物がいないのを確認するのも手間だが、放っておくと無防備な背後を攻められる。

 なので細い小道を虱潰しに崩して行き、魔物を倒しながら先に進む。

 迷宮と言うよりは、虫の巣穴だ。

 ここの主は蜘蛛型の魔物らしいから、尤もと言えば尤もなのだが。

 途中にある罠も、見えないところに巨大な蜘蛛の巣のようなものがあると言った程度だった。

 引っかかると、奥から大蜘蛛の魔物達が湧き出して来る。

 所謂、侵入者を知らせる鳴子のような役目なのだ。

 恐らく、ここの主人は僕たちの侵入にとっくに気付いている。

 気付いた上で待ち構えている。

 かなり不味い状況だ。


「全員止まって!」


 前方から虎姫の声が聞こえた。

 前には、ひらけた巨大な空洞が広がっている。

 恐らく、ここが迷宮の最深部。

 ここでこの迷宮の主を倒せれば、この辺りの地域一帯は解放される。


「全員、私が攻撃を放った後に突撃!」


 虎姫がそう言って剣を上段に構える。

 刀身に淡い光が集まり、その光が最高潮に達した時、彼女はそれを振り下ろした。

 直後、迷宮が揺れた。


「「やあああああ!」」


 それを合図に全員が武器を構えて突入する。

 直ぐに戦闘が始まった。

 待ち構えていた大蜘蛛の群れ相手に、女子達は加護の力で奮戦する。

 加護で身体能力が上がった女子達が、人よりも一回り大きい大蜘蛛を倒してゆく。


「……にしても何だこれ、動きにくっ!」

「足元だ、転ばないように気を付けろよ!」


 春信が叫ぶ。

 足元には粘着質な蜘蛛の糸が張り巡らされ、動けば動くほどに足に絡まって来る。

 僕は女子達と違って、身体能力向上の恩恵を受けていない。

 転んだらそこを襲われて、一巻の終わりになりかねない。

 大蜘蛛はそんな足場にもお構い無しに、鋭い足をうまく地面に突き立てて、こちらに向けて突撃して来る。

 しかしその大蜘蛛は、僕の元に辿り着く前に倒された。

 

「……二人とも、私の側を離れないで」

「ありがとう、霧野ちゃん。助かったよ」

「別にいい。私の役目だから」


 待ち構えていた大蜘蛛達は虎姫達の奮戦により、徐々にその数を減らして行った。

 けど、そんな事よりも重要な事がある。

 ボスだ。

 ボスを撃破しなければ、この巣穴は健在のままとなる。


「アレじゃねぇか?」


 春信が指差す。

 その先には、巨大な岩があった。

 否、岩じゃ無い。

 蜘蛛の外殻だ。


「何メートルあるんだよ、アレ」


 今まで戦っていたものよりも倍大きい。

 既に虎姫達がそれと向かい合っており、戦闘が始まろうとしていた。


「宇佐美さん、村上さん、足を止めて。私が頭を叩き潰すッ!」 

「「了解ッ!」」


 指示された二人が、振り下ろされる足に光の斬撃を放つ。

 しかし、今までのものとは格が違うらしく、それだけでは硬い外殻を砕けない。

 しかし、足は止まった。

 今は、それで充分。

 本命は頭だ、そこさえ潰せば命を絶てる。

 今まで犠牲になった三百人の命も報われる。


「はぁァァァッ!」


 ――ズンッ、と再び地面が揺れた。


「やったか!?」

「うさみん、それフラグや! やめい!」


 しかして、その結果は――。


「……勝った」


 大蜘蛛はその頭を潰されて、息絶えていた。

 虎姫の太刀も中央で折れている。

 虎姫の渾身の一撃が、硬い外殻を打ち砕いたのだ。


「勝ったぞぉぉぉ!」

「「おおおおおお!!」」


 虎姫が勝鬨を上げ、歓声が上がる。

 しかし、まだ終わっていない。

 まだ残党は残っているし、町に生きて帰らねば意味はない。


「……何とかなったな」


 きっと、嫌な予感は杞憂だったのだろう。

 何人か怪我をしているが、何とか攻略は出来た。

 彼女達だけでも何とかやっていける、それを確認できただけでも、この遠征に着いてきた甲斐があるというものだ。


「――へぶッ!」

「……え?」


 何か、変な声が聞こえた。

 確か宇佐美の声だ。

 さっき、フラグみたいな台詞を発してた人。

 見ると、彼女は潰れていた。

 動いている、死んでいるわけではない。

 だが、巨大な糸の塊が天井から降ってきて、彼女を地面に捕らえたのだ。

 糸の塊は一個ではない。

 雨粒が降って来るように、次々と天井から落ちて来る。


「みんな避けて、上に何体か残ってるっぽい!」


 誰かが悲鳴のような声を上げた。

 しかし、ここは真っ暗な洞窟の最奥。

 持っていた松明の火では、落ちて来る全てを把握するのは難しかった。

 何人かの女子がそれに囚われて、動きを封じ込められた。

 

「……なぁ、愛徒。上の奴なんだ思う?」


 春信が意味深に呟く。

 春信は、天井を見上げていた。

 僕もそれに釣られて、天井を見上げる。


「……何も見えねぇ」

「いやでもほら、微妙に光ってないか?」

「うーん……?」


 確かに、無数の赤い点のようなものが光っている。

 アレは何だ?

 そして、その中央。

 より大きな光の点が八つ、ぼんやりと辺りを照らしている。


「……デカいな。あれ、ボスだ」

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