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第3話 勇者、魔王の仲間になる

魔王の前で勇者パーティーを全滅させた勇者

人類の希望と思われた勇者パーティーは、

それぞれが自分の野心に満ちた最低人間の集まりだった


パーティーを全滅させた勇者が魔王と直接対話に臨もうとするが…

勇者、魔王の仲間になる



仲間のパーティーに迫害を受けていた事を告白してきた勇者

人類を救うと期待されていた勇者パーティーは、

それぞれが心に魔物より恐ろしい闇を持った野心家の集まりだった


勇者パーティーを皆殺しにした勇者が魔王に近づいていった

幼い顔立ちの銀髪の少女が無表情で階段を昇っていく

魔王と直接対話をしたい様子だ


だが仲間を皆殺しにした勇者は危険人物に変わり無い

魔王の隣に控えていた悪魔大元帥ギガボロスが、

勇者と魔王の間に割って入り勇者の前に立ち塞がった



「喰らえ勇者!!闇鴉やみがらす!!」



悪魔大元帥ギガボロスがオーバーリアクションで魔法を唱えた

ギガボロスと勇者の身体をカラスの羽が無数に飛び交い包んだ

勇者の身体を包んだカラスの羽が闇より深い漆黒の霧に変わっていく


漆黒の霧が勇者の視界を奪う


銀髪の少女の身体が闇に包まれた事を確認してから、

ギガボロスが魔王に進言する



「さあ、魔王様!!今のウチに勇者に攻撃……いや、撤退を!!」



悪魔大元帥で魔族軍参謀のギガボロスは魔王に対して、

最初は闇に包まれた勇者への攻撃を申し出た

だが直ぐに撤退する様に百八十度発言を変えていた


ギガボロス本人は一度勇者パーティーに倒されている

その勇者パーティーを、

難なく一人で全滅させた勇者の強さに最大級の危機感を抱いていた


魔王が叫ぶ



「ギガボロス!!魔法を解け!!」



魔王の命令を無視して発動中の魔法に魔力を込めるギガボロス



「我はこれでも先代魔王様の時代から仕える身!!」


「この様な危険人物を魔王様に接触させる訳には行きません!!」


「た、たとえ我が身が犠牲になろうとも…」



ギガボロスが魔力を練りあげる

すると闇の霧が勇者シャルルの小さな身体を包みながら収縮していった


悪魔大元帥ギガボロスの使用している魔法は、

相手の視界を奪うだけでなく、

精神そのものに影響を及ぼす闇魔法


精神が闇に呑まれると廃人になってしまう

生きてはいるが思考は停止し、

自分で身体を動かす事も出来なくなる代物だ


闇の霧に包まれた勇者の少女は手足から力が抜けた



「クハハ!魔王様!!勇者の精神が闇に呑まれましたぞ!!」



ギガボロスは自分の闇魔法が勇者に効いて喜んだ

勇者の無力化に成功した事を魔王に報告した

しかしギガボロスが油断をした瞬間、

闇の霧の中から華奢な細い女の腕がズボッと伸びて来た


そのままギガボロスは首を掴まれてしまう



「が!?がはあ!?な、何故!?」


「ギガボロス!!」



勇者シャルルが小さく息を吐くと闇の霧は周囲に四散した

闇の中から戻った勇者は無傷だ

精神的なダメージも負っていなかった


勇者シャルルは無表情のままに今度はギガボロスに接近した

身長差があるのに悪魔大元帥の身体が地面から浮いていく

シャルルが少し力を入れただけでギガボロスの首に指がめり込んだ



「あがが!!ぐあ!!……なんて力だ!!……」



首を掴まれた紫肌の悪魔ギガボロスが苦しみ悶えている

シャルルの腕を両手で掴み振り外そうとするが微塵も動かない

華奢な細い腕の何処にこれだけの力があるのだろう…

このままではギガボロスの首が潰されかねない

足をバタつかせる大柄の悪魔大元帥の身体が宙に浮いていく


するとそこへ魔王が手を伸ばしてきた

ギガボロスの首を掴んでいる勇者の腕を魔王が掴む



「やめろ!勇者!!」



魔王は勇者の腕を骨ごと潰すつもりで握った

だが勇者は無表情のままだ

歴代最強魔王が本気で握っているにも関わらずシャルルの腕は健在だった


シャルルが魔王に振り向いて質問する



「魔王…この子、必要?」


「ああ…必要だ!!余の参謀だぞ!?」


「そう。」



魔王の回答を聞いた勇者は悪魔大元帥ギガボロスを床に降ろした

ギガボロスの首を摑んでいた腕を外した

膝を床に屈して首を押さえ激しく咳こむギガボロス


咳こむギガボロスをよそに勇者が魔王と対面で向かい合う


歴代最強魔王と人類最強の勇者の対面


本来なら世界の命運を決める一触即発の場面だ


しかし勇者シャルルが魔王に対して発した言葉は、

ある意味世界の命運を決めるモノだったが、

血なまぐさい戦闘行為の始まりの合図では無かった


無表情だが、あどけない少女の顔で魔王に質問する



「魔王、さっき言った事は本当?」



勇者シャルルは首を斜めにしながら、

魔王に先程の発言の確認をした

仲間を皆殺しにする前に魔王が勇者に対して提案した発言の事だ


魔王が答える



「ああ、世界を半分やる、だったか…」


「しかし余は未だに世界を手にしておらん!!」 


「現時点で世界の半分だから貴様に渡すのは世界の4分の1になるが…」


「違う!!」



魔王の提案を即座に否定する銀髪のハーフエルフの勇者シャルル

無表情だったシャルルの顔が少し不機嫌になった

約束を違えた事に焦る魔王

このままでは勇者と戦闘になりかねないと考えた

ここまでの勇者の戦闘を見て自分と同格だと言う考えに至った魔王


もし戦闘になれば損害は大きく自身も無事では済まない

城下に迫る人類諸国連合軍を退ける事も困難になる

魔王はどうにかして勇者シャルルとの戦闘を避けたかった



「まあ待て!!貴様が余の仲間になれば世界征服も容易い!!」


「うん!ソレ!!」



勇者シャルルの不機嫌な顔が治まり無表情に戻った

明るい声から予想してたぶん喜んでいる

よほど世界の半分が欲しいのだろう


魔王が念の為に、勇者の要望には時間が掛かる事を伝えた



「そうか、世界の半分を待ってくれるか?」


「違う!!」



即座に否定の言葉を発し再び勇者の顔が不機嫌になった

世界の半分が今すぐ欲しいのだろうか?


しかし魔族軍は現在進行形で、

魔王の居城がある首都のヴァグダードを人類側連合軍に攻められている所

今も絶えず城下から戦いの音や声が聞こえて来ている

ここから態勢を立て直し巻き返しを計り世界征服するには時間が掛かる


途方にくれる魔王に今度は勇者が話かけた



「世界なんていらない!!」


「なんだと!?では何が望みだ!?やはり余の命か!?」


「違う!!」



勇者シャルルは口数が少ないせいで、

求めている物が何か分からない

シャルルの態度に痺れを切らした魔王が強い口調で質問した



「小娘!!では一体何が欲しいのだ!?」


「仲間が欲しい!」


「はい!?」



勇者の発言に魔王ダガスが驚いた

咳こんでいた悪魔大元帥ギガボロスも驚いた

勇者シャルルが話続ける



「魔王はさっき『余の仲間になるなら世界の半分をやろう』と言った。」


「う、ウム……」


「世界の半分なんていらない……」 


「なっ!?ウム………」


「わたし、魔王の仲間になる!!」


「はあ!?…、お、オウ!!」



勇者シャルルが求めていたのは魔王の仲間になる事だった

無表情だが胸の前で両手拳を握りしめ、

これから仕事を頑張る様な仕草をしている


悪魔大元帥ギガボロスは勇者シャルルの発言に腰を抜かす



「は!?勇者が魔王様の、我々の仲間になる??」


「そう。魔族は人からはみ出した種族を迎え入れている。」


「ですが、魔族にも差別はありますよ?」


「人族よりはマシ。」


「それに人族に復讐したい!!家族の仇!!殺す!!」



勇者シャルルは世界の半分より魔王の仲間になる事を希望した

確かに魔族側は人類側から溢れた種族を迎え入れている

ギガボロスが指摘する様に魔族側にも差別はあるが、

人類種至上主義を掲げてた種族を排斥する聖教よりはかなりマシだ

何より勇者シャルルは家族の仇を撃てると思い機嫌が良くなった


体操の様に身体を動かして強いアピールをしている

発する声も明るくなった


顔は無表情のままだが…


勇者を仲間に加える事に魔王は即答を避けた

非常に強い戦力ではあるが、

危険人物には違い無い


魔王は勇者を仲間に誘った事を少し後悔していた

まさか勇者が本気で仲間を裏切り、

魔族側に加わると言い出すなんて想定外だ


だが魔王に選択肢が無いのは変わらない


魔族サイドは目下首都を攻められている最中なのだ

勇者パーティーが全滅した事で戦力は低下した

しかし魔王が勇者と戦った後に人類サイドを駆逐出来る保証は無い


悩む魔王


魔王が勇者シャルルの仲間の加入に頭を悩ませていると、

シャルルが魔王に詰め寄って、

渋っている魔王の襟首を掴んで声を掛けた


立派な脅しだ



「魔王!私仲間になる!役に立つから!!」


「う、ウム。そうだな…」



魔王は渋りながら勇者シャルルの魔族軍加入を認めた

魔王の言質を取った銀髪の少女は喜んだ

無表情の顔に僅かに笑みを浮かべた


魔王と勇者が手を組んだタイミングで玉座の間に二人の人物が現れた

メイド服を着た赤髪ツインテールの人間に似た女魔族と、

メイド服を着た青髪ローツインテールの人間に似た女魔族だ


赤髪と青髪の二人の容姿はソックリだ

違いは髪の色とツインテールの位置ぐらい

人間に似ているが頭に小さな角が二人共生えていた


二人のメイドは玉座の間の惨状を見ると勇者に向かって魔法を打った


青髪ローツインテールのメイド服の女性が言う



「ファイ姉さま!魔王様とギガボロス大元帥様が!?」


「了解よアイス!!勇者を攻撃するわ!!」



玉座の間の床の上には勇者パーティーの残骸が転がっている

広い玉座の間の床の半分ほどが真っ赤に染まっていた

勇者パーティーの残骸の一部と床が焦げている場所がある


あきらかに戦闘行為が行われた後に見える


更に悪魔大元帥ギガボロスは四つん這いの格好で咳こんでいて、

魔王は勇者に詰め寄られ、

誰が見ても魔王のピンチに見えた


魔法の詠唱を始める双子メイド



「我が氷の刃よ、敵を穿け!アイスショット!!」


「魔王様から離れなさい!ファイヤキャノン!!」



玉座の間に駆け付けたメイド服を着た双子の女魔族は、

勇者に向かって魔法を放った

双子の魔族に恫喝を入れるギガボロス



「やめないか!勇者は我らの仲間になったのだぞ!!」 


「へっ?」


「えっ!?」



悪魔大元帥ギガボロスに恫喝された双子のメイド姉妹は、

発言の意味が直ぐに理解出来なかった

勇者が魔族側に着くと言う前代未聞の出来事だ、戸惑うのも仕方が無い


勇者の背後に向けて二つの魔法が近づく


双子の妹、青髪ローツインテールが放った氷の刃と、

姉の赤髪ツインテールが放った炎を纏った弾丸がシャルルに迫る


どちらの魔法も強力でメイドの双子が魔将クラスに強い事を示していた

双子は悪魔大元帥ギガボロスに叱られ魔力を遮断するも、

一度放たれた魔法は性質上、消える事は無く飛び続けた


炎と氷の魔法が勇者シャルルを捉える


シャルルが小さく呟く



「反射。」



するとシャルルに当たった魔法が術者へと跳ね返っていった

しかも氷魔法が得意とする青髪へ炎魔法が、

炎魔法を得意とする赤髪へ氷魔法が跳ね返った



「きゃあ!ぐぬぬぬ!私達の魔法を跳ね返すなんて!!」 


「さすが勇者ですね!!ぐぐぐ!!」



双子姉妹がお互いに跳ね返された苦手な魔法の対処に苦戦をしている

勇者を倒す気で放った魔法だ

姉妹同士で練習を試合う時の魔力量とは桁外れに強かった


苦手魔法の押さえ込みに苦戦をする


それを見ていた魔王ダガスが指をパチンと鳴らした

魔王が指を鳴らした直後、

双子の姉妹が押さえ込みに必死になっていた魔法が掻き消された


さすが歴代最強と言われる魔王だけの事はある


魔法が消えて玉座の間の入口付近の床に、

ペタンと座り込むメイド服を着た魔族の双子姉妹


魔王に助けられた格好だ


自分の渾身の魔法を跳ね返された悔しさから歯を噛み締める姉のファイ

もう少し遅ければ身体を焼かれていたかもしれない恐怖で泣き出すアイス


対照的な反応をする二人をギガボロスが慰めにいった

どうやらツインテールの双子姉妹は、

魔王城のギガボロス配下の戦闘メイドらしい


双子姉妹の説得に成功した悪魔ギガボロスは、

魔王と勇者の下へ双子を案内した

魔王へは忠誠心を示すが勇者シャルルに対しては反応がバラけた


妹のアイスは勇者シャルルに怯えギガボロスの背後に隠れて様子を伺う

姉のファイはシャルルに対して敵意を剥き出しにして睨んでいた


魔王が話を纏める



「…と言う理由で勇者シャルルは、これから余達の仲間ぞ?」


「無闇に争うな!!」



仲間になった経緯を話された勇者シャルルは、

自己紹介を含めて双子に挨拶をした

握手を求め双子のメイドに片手を差し出す



「名前はシャルル。よろしく。」



シャルルの態度にメイドの双子の妹のアイスは、

恐る恐るシャルルの手を取り握手を交わした



「よ、よろしくお願いします。あ、アイスと言います。」



姉のファイは堂々とシャルルの手を握った



「魔王城のメイド、ファイよ!!」



ファイはシャルルの手を握力の限り握るがシャルルは平然としていた

自分の力が及ばない事を悟ったファイは勝手に落ち込んだ

力の違いを見せつけられたファイは、

取り敢えずシャルルの魔族軍加入を認める事にした


こうして勇者シャルルは正式に魔王の仲間に加わった


魔王、悪魔大元帥、双子の戦闘メイド、勇者が集まる玉座の間に、

今度は群れたコウモリが無数に現れ、

コウモリが集まって人の形に変わっていった


さすが魔族の本拠地、魔王城


人の形に変わったソレは城下の戦況を魔王に報告して来た



「魔王様!!悪魔大元帥様!!それに、そちらの人間は?」


「お前は気にせずとも良い!!それで戦況はどうだ?」


「はっ!!お伝え難いのですが…我が軍劣勢にあります!!」



魔族軍劣勢の報告を聞いた歴代最強魔王ザガスと勇者シャルル

人類側は二人の最高戦力が手を組んだ事をまだ知らない

ここから魔族軍が怒涛の逆進撃を人類に開始するのだった

今話はごちゃごちゃと魔族側の人物が現れて来ました

まあ魔王城は魔族の本拠地ですし、

登場人物が多くなってしまいますよね(汗


誤解を解き魔王の仲間になった勇者シャルル

歴代最強魔王と勇者、最強の二人が手を組んじゃいました

人類側に希望は残されているのでしょうか?

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