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第11話 魔都東側の戦い

魔族の首都の南側で勝利をした勇者と隠密娘は、

いまだに戦闘が激しい東側に移動した

魔都の東側では魔族の首都防衛軍本隊と人類軍五万が、

一進一退の攻防を続けていたのだが…

魔都東側の戦い 前編



魔族の首都ヴァグダードの東側は見渡す限りの大平原が広がっていた

視界に映る百八十度すべてが平野部だ


だから街の発展も自然と東部に集中する

現在進行形で新しい町並みが築かれ、

簡易の城壁の外にまで家々が建ち並ぶ

魔王城がある中央区と違い区画整理もされていた

道幅も広く商業施設も軒を連ねる


その東部地区が今は戦場へと変わっていた 


人類種諸国連合軍は東部に一番多く兵力を投入していた

草原が広がる大平原を人類軍が埋め尽くしている

平面から見ても上空から見ても人類軍の兵士が魔都の東側に溢れていた


しかし兵力の内容はお粗末だった


東から魔都に攻め入る人類軍は傭兵や冒険者や一般人を搔き集めた混成部隊

数こそ多いが練度が他の部隊より低かった

実は東側に集められた人類軍の兵士は、

魔族の首都を南から攻める聖教軍と北から進軍する正規軍の陽動だった

人類軍は陽動の為に一番多く兵力を搔き集めていた


この時代に万単位の兵士の数を把握する手立ては少ない

目視で人類軍の兵力が一番多い東側に、

魔族側は首都防衛の本隊を当てたのは必然であった


簡易城壁の内側の大通りに面した商店に司令部を置く魔族軍

三階建ての商家の一階に魔族軍が出入りする



「デレレンゲ様!人間共が再び攻勢を掛けて来ています!!」


「これで七回目の攻勢ですな…」


「東門が突破される恐れがありますぞ!?」


「先程の地揺れで一部城壁が崩れてもいます!!」


「どう対処しましょう?デレレンゲ様!!」



魔族の司令部に絶え間なく戦況報告が届く

防衛隊の幹部達も机の上に置かれた魔族の頼りない地図を囲み、

慌ただしく戦況の把握に努めていた


鎧を着た魔族の兵士の出入りが激しさを増す

人類側の攻勢が開始された様子だ

魔族の幹部達が首都防衛隊を指揮するデレレンゲに注目する


商家の一階の広めの部屋の机の上に置かれた地図や、

壁に貼られた戦況の報告書に目を通した、

首都防衛隊長の灰色大ネズミのデレレンゲが、

部下達の兵士や防衛隊の幹部達に今の状況を詳しく聞く



「デゲ!城壁外の住民の避難は完了したゲな?」


「住民の避難は完了しています!!」 


「民兵達も下げたゲ?」


「民兵達は壁外の街に点在し、抵抗を続けています!!」


「バリケードは持ちそうゲか?」


「各地に設置したバリケードのおかげで人類軍の侵攻速度が落ちています」



魔族の首都防衛部隊の本隊の数はおよそ三千人

対する人類側の兵数は約五万人

とても真正面から戦える兵力差では無かった


そこでデレレンゲは魔族の住民から有志を募り兵力差を補っていた


デレレンゲの徴兵に応えた住民は約七千人

首都防衛隊と合わせれば一万人ぐらい

それでも人類軍との兵力差は五体一と劣勢


デレレンゲは集めた民兵と共に首都防衛隊による、

壁外の街中でゲリラ戦を展開していた

吸血気姫の部隊が北の戦場に移動した後、

デレレンゲはゲリラ戦で人類軍の侵攻を幾度となく耐えていた


人より大きな灰色ネズミのデレレンゲが指示を出す



「デゲ!バリケードが健在なら城門を開き敵を壁内へ誘い入れる!!」


「敵の補給路が伸びきった所で城門を魔法で爆破!!」


「街中に閉じ込めた敵を屋根の上から弓矢と魔法で狙うデゲ!!」


「街中の敵を掃討しつつ、一隊は地揺れで崩れた壁外へ出撃!!」


「人類軍の先鋒を強襲した後に反転!!」


「壁外の民兵を回収しつつ壁内に撤退すりデゲ!!」


「はは!!」


「オラも出る!!皆続くデゲ!!」


「了解であります!!デレレンゲ指令!!」



デレレンゲは口調に似合わず大胆な作戦指揮をしていた

首都防衛隊は魔王の直属部隊

士気と練度は高く強者揃いだった


デレレンゲが動き出すと部下達も一斉に動き出す

首都防衛隊はデレレンゲ司令官を信頼していた

口調と格好は弱々しく見えるがデレレンゲは頭が良く何より強かった


防衛隊がデレレンゲの立案した作戦通りに行動を開始する


街の一番外側の城門が開かれると人類軍が街中に入って来た

人類側の兵士達は寄せ集め集団

城門が魔族側の作戦でわざと開かれたのに、

何の疑いも無く壁内に入って来た


人類側は纏める者が居ないのか壁門をくぐり街中に入ると、

散り散りになって自分勝手に進みだした


しかし彼らの行く手には魔族の民兵により築かれたバリケードが待ち受ける

バリケードに行く手を阻まれた人類側は各地で魔族の強襲を受けていた

バリケードの向こう側から弓矢や投石や魔法が飛んで来る

魔族の民家の屋根の上からも弓矢や魔法が飛んで来た


数で勝る人類側が思わぬ苦戦を強いられている



「街中にもバリケードだと!?ぐはあ!!」


「屋根の上から弓矢が!?グサッ!!」


「数で勝っているんだ!!押して行け!!ぐがあ!!」



人類側は数にモノを言わせて犠牲覚悟で街中への侵入を続けた

練度は低いが侵入してきた人数が多い

次第に互角の戦いに持ち込まれていくと、

ついにバリケードの一部が破られた


破られたバリケードから人間の冒険者が街中に溢れ出す



「まずいゲ!!」


「デレレンゲ様、人間共の数が想定を越え攻め入ってきます!!」


「仕方ないゲ!!予定より早いが爆破するゲ!!」


「はっ!!」



バリケードが破られた報告を聞いたデレレンゲは全軍の崩壊を心配し、

予定より早く城門の破壊命令を出した

街を取囲む城壁の上から防衛隊の魔法士が攻撃魔法を城門に放つ


火魔法、風魔法、氷魔法、水魔法が城門に激突した


大きな爆発が起こり爆炎があがる

爆破に巻き込まれる人類軍


爆発の煙が晴れると城門があった場所は崩れた瓦礫で塞がっていた

予定より早い爆破だったがある程度の人類軍を街中に閉じ込めれた

壁門を爆破して塞いだ事で今以上の侵入を食い止めれる事にも成功した


城門を塞ぎ人類軍の侵入を防ぐ処置をしたデレレンゲは、

一隊を引き連れバリケードの空いた穴を塞ぎに向かった


大通りに設置されていたバリケードを壊し、

街中に侵入して行く人間の冒険者達


デレレンゲ率いる一隊は街中に侵入していく冒険者の討伐へ向かった


すると大通りの真ん中で、二人の魔族の少女が、

人間の冒険者を薄い紙切れの様に、

次々と倒して行く現場を目の当たりにした



「はわわ!シャル様!容赦ないですね?」



黄色髪のドリルツインテールの魔族の少女が、

腕や指を動かすだけで、

人間達の四肢が切り刻まれていく



「エレキにそのまま返す。」



黒髪の魔剣持ちの少女が目にも止まらぬ速さで人間達を倒していた



「な、何者だ!?…」


「デレレンゲ様、あの者達は!?……」



突然現れた魔族の少女二人の動きにデレレンゲの部下は視線を釘づけされた

司令官のデレレンゲに何者か聞いている者も居る

当然、現場指揮官であるデレレンゲもシャルルとエレキの正体を知らない


しかしデレレンゲは機転を効かし本来の作戦を実行する事にした

 


「今が好機!!本隊は予定通り作戦を実行するデゲ!!」


「りょ、了解であります!!」



デレレンゲは急に現れた魔族の少女の鮮やかな戦いぶりを見た後に、

作戦続行の指示を部下に出した

首都防衛隊の本隊が足の速い魔獣に跨り、

崩れた壁から撃って出る


そして寄せ集めの人類軍の先鋒の側面に一撃を加えた


奇襲は見事に成功し人類軍の陣形が崩れた

その隙に壁外の民兵を回収していく

ここまではデレレンゲの作戦通りに上手くいっていた


だがここから予想外の展開が次々に訪れる


街の南側を守っていた筈のライオネスが、

約千人近い兵士を連れて現れたのだ

ライオネス達が現れた道は少女達が現れた道と同じ通りだった


ライオネスが自分の部下に指示を出す



「全軍突撃!!街の中に侵入した敵を駆逐しろ!!」


「突撃だ!!」


「東の部隊と合流するぞ!!」 


「おおおおーーー!!」



ライオネスが現れた事にデレレンゲ達は戸惑った

しかし直ぐに連携を取り、

街中に入り込んだ人類軍を駆逐していった


街中の敵を掃討したデレレンゲとライオネスは硬い握手を交わす

階級的にはデレレンゲの方がライオネスより上だが、

旧知の仲の様にため口で会話をし固い握手を交わしていた


ライオネスの救援は防衛隊にとって願ってもない助け船だった



「間に合って良かったぞ!!デレレンゲ防衛隊長!!」


「デゲ、ライオネスがなぜ東側ここに?……」


「救援は嬉しいが南側の戦いはどうなったゲ?」


「南の戦いなら我らの勝利だ!!」


「デゲ!?」



ライオネスの報告を聞いた灰色ネズミが目を丸くして驚いた

首都防衛隊の面々も驚いている



「本当か!?ライオネス殿!?」


「南側にも相当数の人類軍が居たと報告が……」



ライオネスの勝利宣言を直ぐには受け入れられないデレレンゲの部下達

自分達の本隊が苦戦を強いられている中で、

守りが一番手薄だった筈の南地区が勝利した

デレレンゲの部下達の衝撃は大きかった


ライオネスが報告を続ける



「あそこの黒髪の嬢ちゃんが一発の魔法で聖教軍二万を消し去ったんだ…」


「せ、聖教軍だと!?」


「南側から攻めて来ていたのは聖教軍だったのか!?」


「しかも二万を一撃で!?」 


「ば、バカな!?」


「あ、あり…ありえない……」



ライオネスの報告を聞いた防衛軍本隊の幹部達は聞く耳を疑った

司令官のデレレンゲも更に驚いている

全員が黒髪の魔剣を持った少女を注目して見ていた


幹部の一人が少し前の出来事を思い出す



「確か、空に青白い魔法陣が浮かんだ直後に地揺れが起こりました…」 


「地揺れの魔法を人間側が使用したのかと思ったが…」


「あの魔法は黒髪の嬢ちゃんが行使してたぜ!!」


「デゲ!あの魔法は聖……」



デレレンゲ達も空に浮かび上がったシャルルの魔法陣を見ていた

魔法陣が消えた直後に地揺れが発生

防衛軍の幹部達は人間側が使用した魔法だと思い込んでいた


その中でデレレンゲだけはシャルルの使用した魔法の属性に気づき、

魔法の強さとシャルルの存在に、

とある仮説を頭の中で作り上げ、発言を途中で止めた


デレレンゲは混乱を避けたかったのだ


そんな灰色ネズミの魔族の首都防衛司隊長の思惑などつゆ知らず、

シャルルはエレキを連れて城壁を軽く飛び越え、

壁外に陣取る寄せ集めの人類軍を倒しに向かった

今話も読みに来てくれた読者の皆様、ありがとうございます!

魔族側のデレレンゲ隊長、灰色大ネズミ設定で、

外見と口調は雑魚っぽいのに頭は良かったみたいです

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