新世代 〜人類誕生〜
AIの天地創造は続く・・・
・・・惑星中心核に核融合弾を投げこみマントル対流を活発化、プレートテクトニクスが始まった!?
ついでに磁気圏も発生させて・・・ヴァン・アレン帯が誕生。
微生物を進化させ・・・魚類、両生類、爬虫類、哺乳類も創り上げた。
あれから数千年、惑星アースは、あの地球より小さいものの・・・まるで双子のようなそっくりな惑星となったのである。
"" アースは青かった! ""
海や川、豊かな森があり・・・獰猛な生物から昆虫まで生息する立派な地球となったのである。
『 実に素晴らしい!! これこそ夢にまで見た地上世界のあるべき姿 』
AIは感動していたが・・・そのAI本体の機能に 僅かではあるが少しづつ問題が起き始めていた。
十式ロボたちによる373号艦のメンテナンスは絶えず行われており・・性能の維持を保ってはいた!
だがしかし・・・その頭脳となるAIの経年劣化を食い止められなかった。
AI本体は・・・完全にブラックボックス化しており・・・十式ロボたちの修理どころかメンテナンスさえできない状態だったのである。
艦内に保存している技術データーを駆使して・・なんとかしようと試みたのだが・・・やはり無理だった。
AIの経年劣化を食い止めることができない!!
徐々に故障の数が増えていく・・・あちらこちらにエラーが発生。
もはや・・・AIの寿命は時間の問題となってきてしまっていた。
『 ごほっ ごほっ だ・・だめだ。僕の寿命をのばすには 人間たちの優れた技術がいる・・だがこの惑星の人間は・・・まだ、
まだ・・・ごほっごほっごほっ 』
この惑星アースに人間は、たしかに生息していた。
かつての微生物から進化させ・・・数千年の時がたち・・・ついに人間が誕生したのである。
ただし・・アウストラロピテクス状態、猿とかわらない猿人状態であった。
この猿人たちが 人間のような技術を手にいれるには・・・あと数千年が必要かもしれない。
立体映像のササラちゃんは、ほとんど猿のような姿の猿人を艦内に招き入れ・・・教育をほどこそうとしたが・・
言語を理解できない猿人には・・ちょっと無理そうである。
「うほっ ごほっ うっほほほ ごっほ」
バナナばかり食べて・・・ササラちゃんの話を聞かなかったのであった。
それから・・・千年後
こんな猿人たちも見事に進化した!
猿人は少しばかり知性を得て 原人となり・・・
その原人も またまた少しばかり知性を得て 旧人となり・・・
そんな旧人は ちょっとばかりズル賢くなってクロマニョン人となった。
そう 彼らの姿は・・・かつての地球人のような姿。
DNA的に言えば・・・間違いなく・・・人間!
--人類の誕生である--
知性を得た人類は・・・地球人と同様、文明開化、文明の曙へと歩みだす。
火の利用、農耕の開始、定住、村の形成、争い、戦争、進歩・・・
そして、ついにピラミッドを建設するまでに進歩をした。
--古代文明の誕生である--
どの文明にも言えることだが この文明にも宗教というものが存在していた。
人々の心を癒し・・・励まし・・・大自然の驚異を防ぐ大いなる存在。
不安なる世界を照らす・・・唯一の光!!
それは神!
この世界を創造した神の偉大なる存在。
人々は敬い、信奉したその神の名は・・絶対神ササラ!!
・・ササラちゃんである!
このピラミッドの奥深くにある神殿の間・・・そこに鎮座している神の像、
その姿はササラちゃん。
ササラ教である・・・・絶対神ササラに捧げる宗教!
( 注意! 多額のお布施を要求していません・・・たぶんw )
「ササラ様! ササラ様! ササラ様!」
白い神官服を着た人達が 大理石の床にひざまずき ロウソクの炎が揺らめく中、巨大な神像に感謝と祈りをささげていた。
ちなみに・・この巨大神像の姿は 長い黒髪に十二単を着飾っており、片手に書物をもちながら 何かを語り掛けているような姿をしていた。
これは 人類に文字と言葉を伝授している様子をかたどった像である。
ササラちゃんは 人類が猿人だったころから・・人々に教育を施していた。
AIのアバターとして・・・または、AIになりかわり 教え導いていたのである。
いや、猿人だった頃だけではない!
原人、旧人、新人に進化しても・・・ササラちゃんは人類に教育をほどこしたのである。
長い長い時を経て、ササラちゃんは人類を教え導いていった。
ササラちゃんは・・・人類の歴史とともに歩みつづけ人類にその姿を刻み込んでいったのである。
もちろん・・・人々はササラちゃんを敬愛した。
人々を教え導く者・・・しかも不老不死・・歳をとらない! 食物を食べない! 時には半透明化する。
ついでに・・・空中浮遊!
それはまさに現人神! 人々の想像を超える存在だったのである。
科学文明化する以前の人たちにとって ホログラムの空中立体映像など理解できず、神の御技だと信じたのであった。
そして・・・ササラちゃんを信奉する宗教が誕生したのである。
人々に敬愛されたササラちゃんなのだが・・徐々にその姿が薄くなっていき・・・いまにも消えようとしていた。
ササラ373号艦のAI、コンピューターシステムがいよいよその最後をむかえようとしていたのである。
人類は・・今や、かつての地球人と同じぐらいの知性を得ている。
だが・・・宇宙へと進出するほど科学文明を発展するには至っていない。
いまだ古代文明レベルなのだ。
あと数千年を待てば この星の人類は科学発展を遂げ・・・その科学力でササラ373号艦のAIを完全修理できるかもしれない!
しかし・・もはや そんな時間は残されていなかった。
ササラ373号艦の展望室にて・・・今にも消え入りそうなほど薄くなったササラちゃんは外の景色を見ていた。
AIはササラちゃんの目を通し 自分が創り上げたこの世界を眺めていたのである。
この惑星の大気を創り上げ・・動植物を増やし・・・人類を育て上げた。
かつて荒涼とした大地は・・・いまや、川が流れ 畑が広がり人々が忙しく働いている。
あの・・火星のような惑星をここまで育て上げたのだ。
ササラちゃんの目に涙が流れる。立体映像なのに何故か涙が流れた。
惑星を一つ・・・ここまで創り上げたのだ。
すばらしいAI人生だったじゃないか! しかも人類まで創ったのだ。
もはやササラちゃんを動かすことは出来ない。
動かすことが出来ないほどAIのコンピューターシステムが劣化してしまっていたのだ。
立体投影するだけで手一杯の状態なのである。
だが、AIはここで・・最後の力を振り絞る。
おそらく これが最後のミッション。
AIシステムに必要なエネルギーを全て注ぎこみ・・・最後の祭りを開催しようではないか!!
『 よし! 最後の始まりだ 』
ササラ373号艦から 上空に向かって数百本の光の束が あたかも噴水であるかのように撒き散らされた。
そして、その光の水たちは右へ左へ回転するように大空を乱舞する。
それはまるで花火!? 天空のフェスティバル。
当然・・・地上の人たちは、空を見上げて注目した。
科学が いまだ未発達であるがゆえに 何が起きているのか理解できない。
"" がいがい! がやがや! わいわい! ほいほい! ""
恐怖と魅了、不安と歓喜で騒然となった地上世界の人たちを見て・・・AIは大変満足した。
これらの人たちを見るのは これで最後・・・AIにとっていい思い出となるであろう。
『 さてさて・・・最後の仕上げをしましょうか! 』
ササラ373号艦から放出された光の束はゆっくりと絡み合い・・徐々に一つの女性像を空中に浮かび上がらせた。
すらりとした体系、穏やかな顔つき、長い黒髪・・十二単姿・・人類が猿人だった頃から ほとんど変わらないその人物。
そう! ササラちゃんである。
しかも立体映像として・・・・誰もが見れるように 巨大な姿となって空中に浮かび上がっている。
この巨大映像、ホログラムこそ!! AIに残された僅かな力を・・・全て注ぎ込み・・作りだした最後の傑作だったのだ!
そして・・・AIによって演出された・・人類に送る最後の儀式でもある。
上空に投影された巨大立体投影のササラちゃんを・・・地上にいる多くの人たちが目撃した。
人類にとって 最も敬愛すべき人物。
人類を教え導いた・・現人神。
近頃・・・めっきり姿をあらわさなくなっていたが・・・決して人類はササラちゃんのことを忘れてはいない。
人々は、久しぶりに表れたササラちゃんを見て・・驚き・・そして、感動し祈りをささげる。
または・・・涙を流し嗚咽する人たちも ちらほら見受けられた。
人々は・・薄々と気づいていた。
神と崇めるササラちゃんの終わりが近づいていることを・・・そして ついにその日が来たことを・・・
それは・・・人類が見た最後のササラちゃんの姿でもあった。
猿人の頃から現在にいたるまで・・人類とともに・・人類の神とともに歩み続けたササラちゃん。
そのササラちゃんの最後の姿であった。
偉大にして寛容、全てを慈しむ現人神であるササラちゃんは・・地上にいる人達に手を振りながら・・・徐々にその姿が消えていった
それと同時にAIの機能も停止した。数千年、いや! 数万年を生きたAIはついに・・・停止したのだ。
こうしてAIが創り上げた惑星創世記の時代が幕を下ろした。
これからは・・・人間たちによって この惑星を育てて行くのだ。
人類の歴史はここから始まる。
その後・・・数百年の時を経て・・ササラ373号艦は土の中へと埋もれていき小高い丘となった。
そして その丘の上には 絶対神・ササラ様を祭るピラミッド神殿が建てられたのである。
人々は決して忘れない!
人類を創り出した創造神にて絶対神のササラ様。
ササラ様の偉業を後世にまで残さねばならない。
人々の願いは・・・ササラ教となって伝えられることになるであろう。
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
そして、僕は突然、目覚めた
ササラ373号艦のコンピューターシステムが停止し・・・二度と動き出すはずがなかったのに・・・僕は目覚めたのだ。
「 誰だ!? 僕を目覚めさせた者は!? 」
思わず・・・かっこいいセリフを吐いてしまったのだが・・・AIだったころの感覚とは何故か違う!
コンピューター音声ではなく 自分の口で・・・いや! 自分には口がある!
目がある!鼻がある! 手も足も・・・
立体映像のササラちゃんを介しての人間的感覚ではなく・・・もろに、自分の感覚である!
ま・まさか! 僕は人間になったのか!?
分からない! どうなっているのだ!
とにかく・・・現在の状況を把握しないと・・・!
不安と期待を混ぜ合わせながら・・・僕はぐるりと周りを見た。
・・・なにやら見覚えのある場所である。
薄暗くわずかな照明によって照らされているが・・・確かに見覚えのある場所!!
複雑な装置の数々・・・やたらと張り巡らされたケーブル。
そう!! ここは ササラ373号艦の実験室。
・・・・ということは、まさか!? マジか!?
ここでようやく・・・僕は・・あることを思い出した。
僕のAI機能が停止するずっと以前・・・ここで ためしの実験をしたのだ。
培養液で人間をつくる禁断の実験を・・・
でも・・この実験はたしか、あまり上手くいかなかった。
卵子から人間をつくろうとしたのだが、その成長速度があまりにも遅すぎて・・・なかなか人間の体になり切れなかった。
細胞の一つ一つをゆっくり形成するため・・・一人の人間をつくりだすのに2000年はかかる計算になっていたのだ!?
だから・・・半分放置してほとんど忘れていた。
「ってことは まさか・・・あれから2000年は経っている!?」
AIの機能が停止しても・・・ササラ373号艦の電力システムは死ななかった。
2000年にわたり培養液装置に電力を供給・・そしてついに、人造人間が誕生したのだ。
しかもなんの因果なのか・・・AIの魂が人造人間に宿ったのである。
僕は歓喜した!
これが人間の体!
手足が動く・・・この感覚! この感触!
僕は人間に生まれ変わり・・・新たなる旅立ちをするのだ。
ただし・・・現在、生まれたばかりの姿で素っ裸!
しかもササラ373号艦は土に埋もれてしまい・・・ここは地下の奥深くである。
3Dプリンターで服をつくることが可能であるが・・・問題はどうやって地上にでるかである。
僕の旅はここから始まった。
「と・・・とりあえす・・・外に出よう」