ズゥドドトゥゥ! 〜爆発は人生へのスパイス〜
このササラ373号艦には 望遠分光装置が装備されており・・・・数百光年以内の近場付近をサーチすることができる。
そして、生命体がいそうな惑星をいくつかをリストアップしていった。
その中で一番距離の近い惑星は、後方に位置しており Uターンが必要なため惑星リストから除外した。
現在、ササラ373号艦は慣性の法則に従って直進、なおかつ光速の10%で駆け走っているため・・180度方向展開はめんどくさい!
出来るだけ・・・進路方向の惑星に向かいたいところである。
・・・そんなわけで、道なりに直進、20光年先に存在する恒星系第四惑星、仮名としてテラ001と名付けた惑星をターゲットにすることにした。
ハビタブルゾーン内に位置しており、酸素や水も存在する環境だと予想される。
テラ001は遥かに遠い・・・ワープドライブは老朽化しまくってるため 危なくて使えない!!
通常航行でゆっくりと恒星間空間を進んでいくことにする。
到着予定は200年後ぐらい・・・おとなしく、寝て待つことにした。Zzzzzz
立体映像のササラちゃんも"うんうん"とうなづいている(AIが操作しているのでササラちゃんに意思はない)
この艦艇が いくら老朽化し・・・ボロくなったとはいえ、たかだか200年ぐらいは 持つであろう
・・・・・だが! やっぱしお約束である。
ズドゥゥゥドゥゥーーーーン!!
超重核融合炉の一つが吹っ飛んだ!
数十の隔壁を 見事なぐらい破壊しつくし・・・融合炉区画は文字通り消滅した。
幸いなことに・・・艦内に空気がなく真空のため・・・火災が燃え広がることはなかった。
もちろん・・立体映像のササラちゃんが窒息死することはない。
原因は・・燃料制御棒の劣化による制御不能、そして暴走、爆発!!
超重核融合炉の予備はあと3基ほどあるとはいえ・・・これら核融合炉も おそらく劣化しまくっており、同じ事故が起こる可能性がある!!
もしも・・全ての超重核融合炉が止まると・・・艦艇に供給する電力が止まる。
コンピューターももちろん止まる! そして、AIたる自分自身も止まる・・というか死ぬ。
『 えらいこっちゃゃゃぁぁぁぁぁ 』
空気がなく音声伝達しない艦内で叫びまくるAIであった。
そして・・・AIは思考することをやめた。
・・・・というか、とりあえず目的地である惑星テラ001に到着しないと どうにもならない。
到着しても どうにもならない確率のほうが高いのだが・・・とりあえず今は進むしかない!!
慣性の法則に従い・・・一路、ササラ373号艦は進む。
そして・・・
ズドゥゥゥドゥゥーーーーン!!
艦艇全体を揺るがす振動!!
またまた事故の発生なのか?!
かなりの衝撃である。
慣性の法則に従い艦艇は直進していたはずなのだが・・・その衝撃によってわずかに軌道がずれてしまう。
思考することをやめていたAIは慌てて・・目覚め、艦内の様子をサーチした。
全ての機器をチェックしていく。
立体映像のササラちゃんも艦内を走りまわってもらいチェックしてもらう。
ササラちゃんは実体がないので修理とかはできないが・・・故障個所をみつけることぐらいは出来るのであった。
エンジンルーム、配管、隔壁装甲、各種タンク・・・全て異常なし!
どうやら故障個所がないようなので安堵した。
記録している艦外のカメラ映像から・・とんでもないことが判明!
小惑星との衝突である!!
突っ込んできた小惑星の直径はおよそ1Km、大きめの小惑星である。
もしかしたら彗星かもしれない。
この辺りは・・・
・・・目的地としていた惑星テラ001の恒星系の外延部。
俗にいう・・オールトの雲である。
宇宙的にいえば・・すかすか空間のはずなのだが・・・運の悪いことに小惑星らしきものとガッチンコしてしまったようであった。
『 1km程度の小惑星に激突されても・・・なんともなかった!? ふっふふ ちょっと誇らしいぞ! 』
ササラ373号艦(全長5Km、戦艦大和の20倍)は分類としては小型艦に属するとはいえ・・・軍用の戦闘航宙艦である。
その装甲は・・多重反応型複合装甲と電磁防御に守られており・・・1Km程度の小惑星など 蚊にさされた程度なのだ!
『 とりあえずあえて言ってみる・・・蚊であると♡ 』
AIが自らの艦艇の強さに誇らしくなっていると・・・再び
ズドゥゥゥドゥゥーーーーン!!
すさまじ揺れを再び感じた。
また小惑星の激突なのかと・・・勘ぐる。
いや! 今回は違ったのだ・・! というか、大気圏に突入している!!
AIが自画自賛、うぬぼれているうちに、目的地に到着・・・・ではなかった!!!
この惑星は・・・目的地ではない別の惑星だ!!
小惑星の激突で軌道がかわり・・・その軌道を修正し忘れていたのである。
AI・・・・痛恨のミス!
この惑星は目的地である第四惑星テラ001ではなく、その外側にあたる第五惑星だったのだ!!
艦艇はすでに大気圏内に入り込んでいる・・・もはや引き返せない。
『 まぁいいか! このままこの星に着陸をしよう! 』
幸い・・・ササラ373号艦は丈夫にできている。
小惑星でさえ弾き飛ばした複合装甲、大気圏の空気摩擦程度・・・なんともない!!
・・・・のだが、現在、火の玉状態となって降下(墜落)していっている。
いわゆる大気圏突入!
予定とは違うが仕方がない。 一応、ハビタブルゾーンきりきりなので水ぐらいはあるだろう。
ただし・・・惑星は小さかった。火星ほどの大きさ・・・しかも大気の主成分は二酸化炭素。
生物は・・・居たらいいね!と言う感じの惑星である。
ズゥドドトゥゥゥゥ
鈍い振動が艦艇全体を揺るがす。
『 またか!? いったい何が起きた?! 』
AIは動揺し・・・艦内の状況を確認する。
そして・・・気が付いた!
エンジンからのデーターが届いていないことを・・・!
大気圏突入など、たいしたことないなどと高をくくっていたのだが・・・現実は違っていた。
エンジンルームが丸焦げ・・・ススだらけ!
酸素がないおかげで・・火の手はあがらなかったのだが・・・見事なぐらい派手に吹き飛んでいたのである。
様子を見に行っていた立体映像のササラちゃんでさえ顔を青くしていたのであった。
『 これはダメだ! 完全に破壊されている! 』
エンジンの排気口から 加熱された外部の空気が内部に入り込み・・・エンジンを吹き飛ばしたのである。
ササラ373号はもはや飛ぶことができない・・・宇宙に戻れないことを意味していた。
だが、幸いなことなのか!? エンジン以外の故障はない!!
艦艇は・・・徐々に速度を落とし グライダーのように滑空しながら天空を滑っていく。
そして・・・その眼下には全長5kmに及ぶ黒い影が地面を覆った。
もしも・・この星に生物がいたのなら、えらい騒ぎになるのだろうが・・・どうやらこの星に生物らしきものは見当たらない。
この星は岩と砂、そしてクレーターが広がる世界だったのである。
もちろん森林地帯などない!!火星と酷似しているような風景。
ただし・・・大きな違いがあった。
水があるのである!
海とまで言わないが湖もどきの水たまりがあちらこちらに点在していた。
373号艦は この惑星をサーチしながら気持ちよく滑空する。
虚空の宇宙では見ることができない風景がひろがっていたのである。
真っ暗な世界ではない・・・この星には大地がある。空が青い・・・キラキラ光る水面がある。
エンジンが破壊されていることを とりあえず忘れて・・・今の状況を100%楽しむAIであった。
『 僕は風になった。明日は明日の風が吹く 』
AIはコンピューターなので 風や匂いを感じることは出来ないが・・なんとなく気分がよかった。
大気の主成分は二酸化炭素だが・・・わずかにメタンを確認。有機物だ!
もしかしたら生物がいるかもしれない。
艦艇は降下しながら適度に逆噴射・・・砂地のような平原に何の問題もなく着陸した。
ちなみに逆噴射は姿勢制御用のスラスターであるため 破壊されたエンジンとは別である。
映画にありそうな派手な着陸ではなく・・・砂埃が舞う程度の静かな着陸であった。
『 劇的な着陸なんてしないよ! エンジンも壊れてしまっているし老朽化しているのだから慎重に扱わないとね 』
AIは・・ 自分がなによりも大事なのであった。
・・・というか壊れたらAIもオダブツになるからね!
これ以上・・・壊れたくない!
艦艇外部のカメラから周囲の様子を伺う。
この付近は・・・地平線まで続く平原、荒涼とした砂漠しか見えない。
だが・・・そのカメラを望遠モードにすると、なにやら赤みがかったものを発見した。
カビである! いや、コケである!? いやいや、何かである!
どっちでもいい・・・とにかく生物だ! 生物を発見したのだ。
AIにとって はじめてのファーストコンタクト!
始めて見る生物なのだ。
『 あ・・あれが生物!? 』
・・・・・ちょっと落胆した。
自らの力で動いてない・・・風でゆらゆらしているだけ。
あれを生物なんて・・・なんか認めたくない!!
せめて・・・会話コミュニケーションぐらいできる生物だったらよかったのに・・・・
コケ相手に無茶な要求である。
立体映像のササラちゃんをつかって・・コケのような生物をより詳しく調べたかったのだが・・・
このササラちゃんは外に出ることが出来なかったのである。
文字通りの箱入り娘!
艦艇内でないと・・3Dホログラムが機能しない仕組みだったのであった。 残念!!
---------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)