第91話「疑念」
僕とヒルデは、二人並んで歩いていた。……なんとも言えない沈黙が場を支配する。
しばらく経って、キャンプ地から離れた所で、ようやくヒルデが口を開いた。
「……それで、話というのは他でもない。貴様とバロムのことだ」
「バロムのこと?」
「バロムは魔神だ。そして前にも話したが私は、魔神の手によって封印され、魔界の谷底で長い年月を過ごした」
「それを、ヒルデは恨んでいるって言いたいのか?」
「ああ、そうだ。だが、今すぐ何かをするつもりは無い。……ただ、バロムと貴様が仲良くしている姿を見て、少し気になったことがある。……彼奴は、本当に魔神なのか?」
「え?」
……どういう意味だ? バロムは、魔神じゃないのか?
ヒルデが続ける。
「バロムは、確かに魔神の力を持っている。それは間違い。しかし、魔神特有の禍々しい気配を感じないのだ。……貴様はどう思う?」
「うーん……。でも、バロムは魔神らしいよ」
「本当か?」
ヒルデは念を押して尋ねてくる。
そこまで言われると自信が無い。大体、魔神だと言ったのはバロム本人だし。
しかし言われてみれば、魔神バズズと以前遭遇した際に感じた負のオーラみたいなものは、今のバロムからは微塵も感じなかった。
「……実は、僕もよく分かって無いんだ」
「ふむ。そうか……。何れにせよ、魔神は謎が多い。デントも、彼奴には注意するんだな」
「……分かった」
「話はそれだけだ。では、戻るぞ」
「あ、うん」
僕らは、仲間が待つキャンプ地へ戻ろうとした。
すると、その時。『ドォン! という激しい地鳴りがした。
僕は慌てて音のした方を見る。するとそこには大きな穴が空いていた。
「なんだあれ!?」
「さあな。とにかく行ってみるか」
僕達は急いでその場所へ向かう。
そこは、巨大なクレーターが出来ていた。直径10メートルくらいある。
地面はボコボコしていて、まるで火山の火口のようだ。
そして、その中心に人が立っていた。
赤いローブを着た小柄な人物。背丈は140cm位だろう。顔はよく見えないけど、華奢な体躯から見て多分子供だと思う。
その人物は、手に持った背丈を上回る杖で自分の体を支えている。
「ふぅ……。なんとか、着地出来た……。危うく一生空に浮かんだままになるところだった」
彼はそう呟くと、ふと僕らの存在に気付いたのか、こちらを見た。
「…………」
「えっと」
「あ。……だ、誰ですかアナタ」
「こっちの台詞だよ。いきなり現れて、何者だい?」
僕は目の前の人物に対して、警戒しながら尋ねた。
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