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第87話「サラッと紹介」

 バロムを連れてキャンプに帰ると、ちょうど夕食の準備が整ったところだった。


「あっ、お帰りなさい!」


 リディアが、笑顔を浮かべながら出迎えてくれる。


「うん、ただいま。これ、狩りで沢山獲れたから今晩の食事に使ってよ」

「ありがとうございます。早速、調理しますね」

「あと、この子の事なんだけど……」


 僕は笑顔で応えると、バロムを紹介する。


「紹介するね。こちらは、魔神バロム。さっきそこで会った」

「……何がどうなったら、狩りの最中に魔神と出会うんだ」

「いやいや。そんなこと言われても……会っちゃったものは仕方ないじゃん?」


 ヒルデが呆れた様子で言うと、僕は頬を膨らませて反論した。

 すると、彼女は大きな溜息を吐く。


「今更、貴様の危機感の無さにいちいち突っ込むのも馬鹿らしいので何も言わんが……。安全なんだろうな?」

「大丈夫だと思うよ。それにもし危害を加えることがあったとしても、その時は僕が皆を守るから安心して」

「ふん。貴様に守られねばならん程弱くはないわ」

「そういう訳だから、このバロムにも夕御飯をご馳走したいんだけどいいかな?」

「好きにしろ」


 ヒルデが面倒臭そうに答えると、他の3人も特に反対はしなかった。

 僕はバロムをテーブルに案内すると、席に着くように促す。


「あっ」


 すると、バロムはエルドリッヒの姿を見て一瞬だけ驚いたような表情を見せた。


「ん。どうした、バロム」

「……いや。何でもないさ。それはそうとデント、この人間達は全員君の恋人かい?」

「いやいや違うって! 確かにみんな可愛いけど、恋人とかじゃないよ!?」

「ふぅん……。では、恋人でもないのに何故彼女らを連れ添っているのかな?」


 バロムは不思議そうに首を傾げる。


「いや、別に深い理由なんて無いけど……」

「じゃあどうして……」

「えっと、何て言えばいいのか……成り行きというか、流れというか、気付いたらこうなっていたというか……まあ、あれだよ。成り行きの成り行きだよ」

「……意味が分からない」

「うぐっ」


 バロムの言葉に、僕は思わず言葉に詰まる。

 どうやらバロムには、僕の気持ちが上手く伝わらなかったようだ。……まあ、さしたる理由も目的も無いまま旅をしている僕みたいなのは、あまり理解出来ないかもしれないけどさ。

 バロムが言う。


「……つまり君は、能力や共通の目的があって共に行動しているのではなく、ただ彼女達と楽しく過ごしているだけで満足なんだね?」

「うん。概ね合ってるかな」

「じゃあ、バロムも仲間に入れてよ」

「仲間に?」

「バロムは君に付いていくよ。他の者達と同じように、ね」


 バロムは堂々とした態度で、僕に向かってそう言ったのだ。

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