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第69話「勇者ランド・エルティネスの過去⑪」

「いや〜探したよ〜。でも、良かった。無事……ではないみたいだけど、生きてて何よりだよ〜」


 俺を見つけたデントが、呑気に話しかけてきた。

 その手には、見慣れない剣が握られていた。デントが使っていたのは、何処にでも売られている普通の鉄の剣だったはずだが、今使っているそれは、明らかにただならぬオーラを放っている。魔王の持つ剣にも引けを取らぬ程の強力な力を秘めているような……。


「あ、これ? なんか落ちてたから拾ったんだぁ。凄く頑丈で使いやすいんだよね、コレ」

「……それは、魔剣イザナミ。未だ、誰も扱うことが出来ぬ呪われた剣だぞ……。城の武器庫に保管してあったはずだが……何故、貴様が持っている?」


 魔王は眉間にシワを寄せた。


「そうなの? じゃあ、今日から僕の愛剣にしよう。どうせ魔王の私物だし、獲っても問題ないよね? うん、そうしよう」


 そう言って、にこりと笑う。

 魔王は、そんな彼を見て、目を細めた。


「……ところで、勇者。そこにいる毛むくじゃらの魔族は、誰かな? まさかとは思うけど……ペットとか言わないよね?」

「ふっ……。ペットだと……!?」


 魔王が鼻で笑った。


「ふふふ……。いい度胸だな……。我が配下である四天王の一人を倒した勇者の仲間というだけあって、なかなか面白い奴ではないか……」

「我が配下? へぇ……。ということは、君が魔王なんだ……。あ、因みにだけど、さっき四天王と二人会ったよ。一人は殺して、もう一人はなんか逃げてった」

「ほう……。あの二人が倒されたか。まあ、所詮は雑魚どもだ。大したことはあるまい」


 魔王は余裕の表情を浮かべていた。

 デントは、そんな魔王をジッと見つめる。


「ねぇ、魔王。一つ聞きたいんだけど、なんで君ら魔族って人間界を攻め入ろうとしてるわけ?」

「人間共の世界を支配し、この魔界を繁栄させるためだ。魔族が更なる進化を遂げるには、広大な土地と物資が必要不可欠だからな」

「でも、何も奪い取らなくても……。お互いに協力し合う道はないの?」

「愚かな人間め……。強き者が弱き者を喰らうのが、世界の理。貴様らは、我ら魔族の礎となる糧でしかない……」

「ふぅん……。それなら、僕が倒せば、君は大人しくなるのかな……?」


 そう言って、デントは剣を構える。


「ククク……面白いことを言うな。たかだか人間の分際で、この我を倒すとほざくのか。良いだろう……では、やってみるがいい。人間よ」


 刹那、魔王の身体が強い衝撃を受けて吹き飛んだ。

 声を上げる暇もなく、魔王は壁に激突する。

 魔王は、一瞬何が起きたかわからず、混乱していた。

 だが、すぐに理解した。自分が攻撃されたのだと。


「お、結構頑丈だね〜。流石に他の魔族とはレベルが違うか……」


 魔王は、ゆっくりと起き上がった。

 そして、デントを一睨みすると、魔王は吐き捨てるように言った。


「……許さんぞ、下等生物が!!」


 魔王の顔に怒りの感情が浮かぶ。


「お前如きが、この俺に傷をつけるなど……! 万死に値する!! 塵も残さず消し去ってやるわ!!」


 魔王は剣を構え、魔法を発動させた。

 魔王を中心に風が巻き起こり、それが刃となってデントを襲う。

 しかし、デントは軽々とそれを回避した。


「おっと……。危ない、危ない」

「ちょこまかと……! ならば……」

「吹っ飛べ」


 魔王が剣を振り上げる前に、デントは魔法の力を使って、魔王を壁に向かって吹き飛ばした。

 壁を貫通し、轟音と共に、瓦礫が崩れ落ちる。魔王は、遥か下の地面に落下していった。

 するとデントは、こちらの方を見た。俺は、呆然とその様子を眺めていたのだが、彼は微笑んで手を振ってきた。


「ちょっと待ってね。戦えないランドの代わりに、僕が魔王を倒してあげるからさ〜」


 そして、再び魔王の方へと向かっていく。

 俺は、その後ろ姿をただ黙って見送ることしか出来ない。


(ま、待て、行くな……。魔王を、魔王を倒すのは、勇者である俺の役目……)


 必死になって腕を伸ばす。なのに、体が動かない……。

 足に力が入らない……。

 何故だ……。俺は、俺自身の手で世界に平和を、皆の期待に答えようとしてきたはず……。

 なのに、どうしてこうなった? 俺は、一体何処で間違ったんだ? ああ……。このままじゃ……。

 デントの姿が、遠くへ消えていく。

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