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第68話「勇者ランド・エルティネスの過去⑩」

 その後、俺はダスパラを倒すことが出来た。

 ……しかし、代償として俺の体はボロボロになっていた。

 酷い戦いだった。まだ魔王との戦いが控えているが、既に限界を迎えている。


(は、早くミスティと合流して、治して貰わないと……)


 彼女の回復魔法なら、この傷を癒すことができる。

 俺は、フラつきながらも、先に進むことにした。ところが、そこで予想外の出来事が起こった。

 何と、目の前に魔王が現れたのだ。

 筋骨隆々で威圧感のある身体。頭には、羊のようなねじれた角が生えており、全身が真っ黒な体毛で覆われていた。

 そして、手には禍々しいオーラを放つ巨大な剣を持っている。

 魔王は、俺の姿を目にすると、不敵に笑った。

 その邪悪な表情を見て、背筋が凍りつくような感覚に襲われる。


(こいつ……強い!!)


 俺は、直感的に感じ取った。

 魔界の全てを統べる存在。魔王は、今まで戦ったどの魔族とも、比べようもない程の強大な力を持っている。


「くっくっく……。勇者か……。随分とボロボロだな」


 魔王は、そう言うと、手に持っている剣を天に掲げて見せた。

 その途端、魔王の周囲に紫色の炎が出現し、それが渦を巻いて剣へと集まっていく。

 次の瞬間、凄まじいエネルギーが収束していき、魔王が剣を振り下ろすと同時に、強烈な衝撃波が放たれた。

 俺は、咄嵯に防御姿勢を取ったが、あまりの衝撃に吹き飛ばされてしまい、壁に叩きつけられてしまった。


「ぐふぅ……!」


 口から血を流しながら、俺は苦痛に顔を歪めた。

 たった一撃で、このダメージだと!? これが魔王の力なのか!?

 何とか立ち上がろうとするものの、体が動かない……。

 魔王は、ゆっくりと俺の方へ歩いてくる。

 まずい……。このままでは、殺されてしまう……。


(頼む……動いてくれ……!)


 俺は必死になって体を起こそうとした。だが、全く力が入らない。


(くそ……! なんで、俺は勇者なのに。ちくしょう……。俺は……こんなところで終わるのか?)


 俺は自分の無力さを呪った。悔しさに涙が出てくる。

 魔王は、そんな俺の様子を嘲笑いながら、俺の身体を足で踏みつける。


「グハァッ……!!」


 俺は悲鳴を上げた。

 魔王は、何度も足蹴にして、俺を痛めつけてくる。


「クハハハッ……!! 良いザマだな、勇者よぉ!! どうだ? 痛いか? 苦しいだろう? ククク……」


 魔王は愉快そうな声を上げて、俺を蹴り飛ばした。

 俺は吹き飛ばされて、地面に倒れ込む。

 くそ……。体が動かねえ……。

 俺は何とか起き上がろうともがくが、まるで力が入らない。先程の戦闘で、ダメージを受け過ぎた。

 魔王は、倒れた俺を見下ろしながら言った。


「クク……勇者よ……。お前は所詮ただの人間なのだ……。この俺には敵わない」

「くっ……」


 俺は唇を噛んだ。

 くそ……。弱っているところを狙っておいて、よくもまあそんなことが言えるな。

 魔王の言葉を聞いた俺は、怒りで震えた。

 しかし、どんなに頑張っても身体は言うことを聞かない。俺は歯噛みした。


「さあ……死ね!!」


 魔王はそう叫ぶと、剣を振り上げた。

 俺にとどめをさすつもりだ。逃れる術はない。


(嫌だ……死にたくない……! 俺は、俺は、みんなの期待に……!)


 魔王は、剣を大きく振り上げる。

 そして、そのまま俺に向かって、勢いよく剣を叩きつけた。

 ……その時だった。


「ほいっ」


 突然、間の抜けた掛け声とともに、何かが飛んできて、魔王の剣に命中した。

 魔王の剣が弾かれ、空高く舞い上がる。

 俺は、呆気に取られながら、それを目で追った。

 すると、そこには一人の男が立っていた。

 小柄な体に、ぼさっとした髪と、やる気のなさそうな瞳。

 どこか気怠げな雰囲気を醸し出している、少年と言える容姿の持ち主。

 だが、その身に纏うオーラは、只者ではない。

 男は、俺をチラリと見ると、手を振って笑ってみせた。


「おーい、勇者ランドー! やーっと見つけたよ〜!」


 そう。それは、デント・アルフォート。……最強の男だった。

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