第67話「勇者ランド・エルティネスの過去⑨」
「はぁ……はぁ……くそ! みんな、何処にいったんだ!?」
俺は、仲間たちを探して走り回っていた。
勇者パーティーが、魔王城に突入してから数時間が経過しようとしている。
待ち構える魔族たちを撃破し、快進撃を続けてきた。
だが、敵のトラップに引っかかってしまい、俺たちは全員バラバラになってしまったのだ。
仲間と合流するため、俺は必死に走った。
この魔王城の構造を詳しく知っているわけではない。それでも、仲間を探し出すためには進むしかない。
しかし、一向に見つからない。一体、どこに行ってしまったんだ?
俺は焦燥感に襲われながら、必死になって仲間たちを探し続けた。
「ゲゲゲ! 居たぞ、勇者だ!!」
突如、背後から声が聞こえてきた。振り返ると、そこには魔王の配下である魔族たちがいた。奴らは、俺を見つけると一斉に襲ってきた。
俺は剣を抜いて応戦する。
この程度の敵ならば、問題なく倒すことが出来る。俺は、次々と敵を切り裂いた。
(ふう、何とかなったな)
俺は一息ついて、周囲を見渡した。
どうやら、他に敵はいないようだな。……少し休もう。
ここに来るまでに遭遇した多くの魔族との戦闘で、疲労も溜まっていた。仲間のことは心配だが、今は消耗した体力を回復させなければ……。
(魔王城に入ってから、かなりの時間が経ったな……)
敵の方が、圧倒的に数が多い。時間が経過するほど、相手側が有利になる。
早く合流しないと、まずいな……。
そんなことを考えていると、前方から足音が近づいてきた。
誰か来たようだ。俺は、警戒しながら身構えた。
すると、現れたのは、大きな杖を握りしめている魔族の男だった。
見覚えがある。魔王軍四天王の一人、超魔導士ダスパラだ。
「おーこれはこれは、勇者殿ではないですか? クックックッ、よもや私が先に見つけてしまうとは……」
「お前は、四天王の……。どうして、こんなところに?」
「クク……それは、もちろん貴方を倒すためですよ」
そう言って、ダスパラはニヤリと笑うと、俺に向かって魔法を放ってきた。
俺は、慌てて防御の姿勢を取る。
魔法の直撃を受けて、俺は後方に吹き飛ばされてしまった。
なんて威力だ。油断して受ければ、致命傷になりかねないほどの力だ。
体勢を立て直そうと、地面に手をついた瞬間だった。地面から無数の棘のようなものが飛び出してきて、俺の身体に突き刺さった。
「ぐわあああっ!!!!」
俺は絶叫した。
「ククク……いい声で鳴きますね。流石は勇者です。これでも死なないだなんて、大したものですね」
俺は痛みに耐えながら、ダスパラを睨みつけた。
(くそっ……完全に不意打ちを食らってしまった……)
だが、負ける訳にはいかない。
俺は、勇者。皆の希望を背負っているのだ。こんなところで、倒れる訳には……。
俺は、立ち上がると、剣を構えた。
「行くぞっ!!」
俺は、勢いよく駆け出した。
『本作を楽しんでくださっている方へのお願い』
下にスクロールすると、本作に評価をつける項目が出てきます。
お手数おかけしますが、更新の励みになりますので、ご存知なかった方は是非評価の方よろしくお願いします!




