第58話「封印が解かれて」
『かつて、とある魔族がいた。名をサタン。後の初代魔王となるものだ』
「魔王……」
『彼奴は、とても強く恐ろしい存在だった。人間はもちろん、魔族からも恐れられるほどの力を持っていた。しかし、ある日を境に、そんな彼を倒すために立ち上がった者たちがいた。それが当時の勇者パーティー。彼らは、長い旅の末に遂にサタンを倒した』
「へえ。流石ですね」
『ああ。……それで終わりならば良かったのだが、まだ話は続く』
「えっ? どういうことです?」
『勇者たちは確かに魔王サタンを倒した。しかし、魔王が倒された後も、サタンの力は残っていたのだ。そして、その力を使って、とある魔術師が7つの魂を生み出した。……それこそが、魔神たちだ』
「なるほど……」
僕は納得する。
魔王が死んでも、その力が消えず、代わりに新たな脅威が生まれた、と。
『魔王サタンを彷彿とさせるような強大な力を持つ魔神たちは、魔界に暗黒の時代を作り出した。そして、魔王亡き後、今度は自らが王として君臨すべく動き出した。……だが、そうはならなかった』
「何故ですか?」
『魔神たちの力は強大だったが、弱点があった。魔神を作り出した魔術師が開発した『封印魔法』だ。それがあれば、魔神を封印することができる。……魔術師の死後、その魔法は失われたと思われていたが、魔界の賢者たちがその技法を蘇らせた』
「おおっ!」
『……魔神たちは封印され、魔界は数百年に及ぶ平和な時が訪れた。だが、それも遂に解かれてしまった』
「どうして?」
『詳しいことは、ワシにも分からん。確かなのは、魔神の封印が解かれ、彼奴らが人間界に訪れているということ』
「人間界に?」
『ああ。何を企んでいるのかは謎だが、間違いなくこの世界の平穏を脅かす何かをしてくるだろう』
師匠は、厳しい表情で言う。
『……そこで、お前に頼みがある。デント、お前にしか出来ないことだ』
「はい」
『魔神たちと戦い、人々の安寧を守るのだ。辛く厳しい戦いになるだろうが、今、魔神に対抗できる戦力は、この世界にお前しかいない』
「いや、でも、そういうのは勇者に……」
『……現代の勇者では、駄目だ。とても魔神には勝てん』
師匠が目を伏せていった。
……何だろう。このやり取り、前にも何処かでしたような気がする……。
「まあ、他ならぬ師匠の頼みですし、やるだけやってみますよ」
『ああ、頼んだぞデントよ。魔神の封印には時間がかかる。倒すのが難しくとも、それまでの時間稼ぎをしてくれれば良い』
「分かりました」
『うむ。……では、そろそろ時間だ。また会おう、我が弟子よ。……さらばだ』
そう言って、僕の意識は薄れていくのであった。
『本作を楽しんでくださっている方へのお願い』
下にスクロールすると、本作に評価をつける項目が出てきます。
お手数おかけしますが、更新の励みになりますので、ご存知なかった方は是非評価の方よろしくお願いします!




