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第57話「夢の中の師匠」

 その日、僕は夢を見た。


『……デント。聞こえているか、デント』

「師匠?」


 そう。それは、僕に剣を教えてくれた師匠だった。

 懐かしいな。もう1年以上会っていないけど、元気にしているだろうか。


「どうしたんです?」


 俺は、ベッドの上で身体を起こす。

 周りを見ると、見覚えのない部屋にいた。


『今、ワシはお前の頭の中に直接話しかけている。すまないが、時間がない。手短に伝えるぞ』

「えー。折角久しぶりに会えたのに、もうちょっとゆっくりしましょうよー」

『いいから聞け!』


 師匠は、怒ったような口調で言う。


「はい、すいません」


 僕は、素直に謝った。

 師匠は、昔から短気なところがある。もう少しゆとりを持って生きればいいのにと、以前から思っているけど、言っても無駄なのは知っているので、あえて口に出さないでおく。

 師匠が話を続ける。


『……よし。まず、ご苦労だったな。あの魔神と戦い、そして見事撃退することに成功するとは』

「いえ……。でも、結局倒せませんでしたし、結果的にしてやられましたよ」


 そう言うと、師匠は首を横に振る。


『そんなことはない。お前は気付いてないようだが、魔神と戦って命があっただけでも、本来なら信じられないことだ』

「まあ、強かったですからねー」


 魔神バズズ。手強い相手だった。

 強力な魔法の応酬、多数の魔物を同時召喚、姿を消して一方的に攻撃してきたりととにかく厄介だった。

 あの時、向こうも100%の実力を出してなかっただろうが、おそらく魔王クラス。あるいは、それ以上の能力を秘めていると感じた。次、また戦うことがあれば、その時はこちらも本気を出さなければならない。

 僕は、魔神との戦いを思い出しながら言う。


「で、その魔神がどうかしたんですか?」

『うむ。実は、今すぐにでも伝えなければならないことがあるのだ』

「何ですか?」

『……あの魔神バズズは、再びお前の前に現れるだろう。しかも、奴だけではない。魔界からやってきた他の魔神たちと一緒にこの町に、いや、この世界に攻めてくるはずだ』

「ええっ!?」


 僕は思わず声を上げてしまう。


「あんなに強い魔神が、複数人で襲ってくるというんですか?」

『そうだ。だから、今の内に準備をしておけ。……それと、これから話すことは、この世界でも一部のモノしか知らないこと。デント、お前にだから話すのだ』

「……なんか、凄い秘密を知らされそうな予感がしますね」

『ああ。だが、その前に確認しておく必要がある。……覚悟はあるのか?』

「ありますよ。教えてください」


 僕は即答する。

 すると、師匠は少し間を開けてから言った。


『分かった。では、話そう。……それは、遥か昔に起こった出来事だ』

「はい」


 僕は息を呑んで続きを待つ。

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