第50話「ボクと喧嘩してくれないかな?」
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魔神。
それは、魔界の神であり、同時に世界を破滅に導く存在だと聞く。
その強さたるや、かつて魔王すらも凌駕すると言われていた。
だが、ある時を境に、その魔神は鳴りを潜めたそうな。
以来、数百年間、魔神は表舞台に姿を出すことは無くなり、人々の記憶から忘れ去られたとか。……そういう伝承が、人間界には残っている。
まあ、僕も昔話みたいな感覚で聞いたことがあるくらいだ。正直、実在していたのかすら疑わしく思っていた。
……しかし、その魔神が今、僕らの目の前に姿を現していた。
「……あれが、本当に魔神なのか」
僕は、思わずそう呟く。
赤いローブに、猫耳、猫尻尾の黒髪少女。……僕が想像していた魔神とは程遠い姿だったからだ。
「ふんっ。……油断するなよ。こいつは、かつてこの私に一矢報いてみせた。実力は、かなりの者だぞ」
苦々しい表情でヒルデが言った。
僕たちは警戒態勢を取る。
すると、少女……魔神バズズは笑いながら言った。
「にゃはは。安心していいよん。ボクはあんたらと戦う気はないからさー。……むしろ、仲良くしようぜぇ〜」
そう言って、両手を広げて近づいてくる魔神。
そんな彼女を、ヒルデが睨む。
「……信用できるか」
「まあまあ、ヒルデ。数百年前に何があったか知らないけど、良い神様かもしれないじゃない。まずは、友好的に接しようよ」
「にゃは。デントちゃんは良い子だね。……じゃあじゃあ、ハグしようよハグ」
「ああ、もちろん」
僕が笑顔で答えると、魔神が抱きついてきた。そして、ギューっとしてくる。
……うおっ!? 予想以上に力強いな……。
それに、僕の胸に顔を擦り付ける魔神。まあ、魔神バズズの胸は平らで、押し付けられても柔らかくもなかったけど。で、ギュッとくっつく度に彼女のフサフサとした尻尾も揺れている。……ちょっとくすぐったい。
だが、その直後。バズズは、驚いたような声を上げた。
「……これは凄いね。驚いたよ」
「えっ、何が?」
「この魔神バズズが、本気で抱き締めているのに平然としているなんて。普通の人間なんて、ボクが撫でただけでも肉塊になるのに……」
魔神は感心したように言った。
僕は、その言葉を聞いて、改めて自分の身体を見下ろしてみる。
……うん。特に違和感は無いな。普通に動けるし。
「ふっ、貴様ごときに負けるほど、私の家来は軟弱ではないわ!」
「なんでヒルデが偉そうなんだよ。……えっと、つまり君は、僕を攻撃したってこと? じゃあ敵なの?」
「まあ待ってよ。これはただのスキンシップさ。……でも、もうちょっとだけ試してみたいかな?」
バズズはそう言って、僕から離れた。
すると、後ろで控えていた沢山の魔物たちが、一斉に襲いかかってきた。
……ふむ。
「はあっ!!」「やあっ!!」「おらっ!!」
僕は、武器を手に取り、迫り来る魔物たちに立ち向かった。
そして、ものの数十秒で片付けていく。
「……へぇ〜。やるじゃん」
その様子を見ていた魔神が言った。
「そりゃどうも」
「ねぇねぇ、キミってさぁ、強いんだよね?」
「ん?」
「ねえ、お願いがあるんだけどぉ」
魔神が僕の肩に手を置いて言う。
「ボクと喧嘩してくれないかな?」
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