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第49話「一方その頃、勇者ランド・エルティネス⑥」

 しばらく歩くと、前方に大きな建物が見えてきた。

 あれが神殿だろう。俺は、その建物の中に入った。

 中は広くて天井も高い。壁には、様々な絵画や彫刻が飾られていた。

 奥に進むと、一人の男がこちらに歩いてきた。


「勇者殿。よくぞおいでくださいました」

「初めまして。勇者ランドです」


 僕はそう言って、目の前の男に挨拶をした。


「私は、このラクルスの神殿を預かる神官長を務めさせていただいております」

「それで、わざわざ俺を呼びつけた理由は?」

「はい。実は、勇者殿に折り入ってお願いがありまして」

「お願い?」

「ええ、もちろん勇者殿がお忙しいことは承知しております。その上で、勇者殿に依頼を引き受けていただきたいのです」

「……どんな内容ですか?」

「勇者様は、我々が祀っている女神様についてご存知ですか?」

「女神? ……ああ。ラクルスの守護神、海の女神ワダツミのことですね」

「はい。……実は先日、そのワダツミ様から神託があったのです」

「神託?」

「はい。勇者殿にお伝えしろとの仰せでした」

「それは、どういう?」


 すると神官長は、神妙な面持ちで話し続ける。


「勇者殿が魔王を倒してくださったおかげで、この世界は救われました。……しかし、女神様の神託によれば、まだ脅威は完全に去ったわけではないとのこと。魔界から新たな勢力が攻めてくるかもしれないと、そういうお告げでした」

「なるほど。それで、その新しい勢力というのは?」

「はい。それが……」


 神官長が何か言いかけたところで、突然部屋の扉が開いた。

 見てみると、祭服を着た、まだ年端も行かない少女が立っていた。


「あ! あなたが勇者様ですね!! 私、ルミナと言います! よろしくおねがいします!!」


 そう言うと、彼女は深々と頭を下げた。


「あー、うん。どうも」


 いきなりのことに、俺は戸惑いながらも返事をする。


「コラ! 何ですか、ノックもしないで。失礼でしょう!」

「ああっ、すいません! でも、勇者様がいらしていると聞いて私、居ても立っても居られなくて……!」


 少女は、やや興奮気味に目を輝かせて言った。


「あの、私、勇者様のファンなんです! 握手してください!」

「だから失礼ですよ! ……た、大変失礼しました。この子は、まだ神官になったばかりの見習いですもので……」

「いえ、構いませんよ」


 好意を向けられるのは嫌いではない。特に、俺のファンと言われるのは良い気分だ。

 俺は、ルミナというらしい少女の手を握った。

 すると少女は、頬を赤く染めて嬉しそうな表情を浮かべる。


「ああっ! やっぱり噂は本当だったんだ……」

「噂?」

「はい! この町で、勇者様のお仲間が男性を助けたって。だからきっと、勇者様も町に来ていると、そう思ったんです!」

「……なか、ま?」


 この子は、誰の話をしているんだ?

 仲間と言われれば、俺の場合、勇者パーティーのメンバーのことを指すだろう。

 しかし、ホワイトは王都で待機しているし、ミスティは聖女の仕事で忙しい。

 ……なら、あと残った仲間といったら……。

 俺は、不意に嫌な予感がして、生唾を飲んだ。

 そして、恐る恐る尋ねる。


「……その仲間って、何ていう名前かな?」

「デント・アルフォートさんです! 彼がこのラクルスの町に来ていると、町の方々が話されていました!」


 ……デント・アルフォート。

 その名前を聞いた瞬間、俺の目の前は真っ暗になった。

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